ゼロの視点
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2003年12月12日(金) 現実

 だいぶよくなってきている母だったが、それでも時おり、まだ自分が日本にいるような錯覚に陥ることがある。

 私は、日本にいる母と、ほぼ毎日、じゃなくても、週に数回は電話している。ゆえに、母にとっては、電話口での存在が私であり、電話の向こうから、私達の生活を想像するというのが、彼女にとっての日常になる。

 ゆえに、突然、自分の生活圏を脱出して、本物の娘のところにきても、どうもいつもと違うという感じが抜けないのか、夕方になると、『ああ、ゼロに電話しなくちゃ』と言い出すのだ。時には、私に『ゼロの電話番号しっている?。』と尋ねてくることもある。

 最初の頃こそ、こういった母の言動にピリピリしていた私だが、今ではもう笑ってしまうレベルになったので、母が上記のように尋ねてくると、以下のように答えるようにしてみた。

母「ゼロに電話しなくちゃ」

私「電話してもいいけれど、多分目の前の人が答えると思うから、糸電話でも作ってあげようか?。

母はここで、ハッと気付き、しまいには大爆笑をしだす。

じゃなかったら、

私「これから糸電話を渡すから、電話かけてみなよ。私は向こうの部屋からそれに答えるからね。でも、大きな声ださないとならないから、私の咽がかれちゃったら、のど飴でも買ってくれないことには、困るな・・・」等というと、
笑いながら(決して非難するわけではなく)母が覚醒する、ということが多くなってきた。


 昨日ぐらいから、夜ぐっすり寝たにもかからわず、昼もちょっと時間があるとソファーで昼寝するようになった母は、すっかり時差呆けもとれてきた様子で、上記のような会話はあるものの、パリ出発直前から到着した直後のような人相や性格まで変化するような、妄想などはなくなった。

 夜は、11区であった友人の日本人画家Y氏の展覧会のオープニングにフラッと夫と母を連れて出かけてみた。母には、フランス人だけじゃなく、パリでこうして活躍している日本人達の姿を見ることが、それはそれでいい刺激になった様子。特に、Y氏は在仏37年という人。それでも、日本人らしさを持ち合わせ、いい作品を日々生み出しているという現実を、目の当たりにすること、これこそ、旅行の醍醐味として、母が実感してくれることを祈るのみ。


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