長渕剛 桜島ライブに行こう!
『錦江湾の風に吹かれましたか?』−桜島ライブ(64) text 桜島”オール”内藤桜島の森の中。国定公園、桜島の自然。疲れ果てた体を引きずりながらではなく、いつの日か、普通に観光したい、と思いました。★長渕剛 桜島ライブに行こう!バックナンバー ←クリック=====================================================さようならの唄 桜島編僕らはゆっくりと溶岩ロードを歩いて行きました。溶岩グラウンドの足止めにあせり、闇夜を早足で進んだ、会場に向かうときとは対象的に、くらむような熱さはあるものの、明るい足下、国定公園の快適な道路を、あせることなく、のんびりと歩く僕らでした。急いで乗り場に行ったところで、そこには確実に長い行列ができているはず。だったら、のんびりと桜島を楽しもうと思いました。リストバンドをもらったときに、一緒に渡されたチラシとクッションの入った袋。その中に入っていたグッズカタログに、サンキューTシャツのことが書かれていました。終演後に溶岩グラウンドのグッズ売場で発売されるという、特別の限定Tシャツのことです。シャツのデザインは秘密でした。欲しいなあとは思ったものの、Aブロックの僕らがグッズ売場にたどり着くまでの間、残っているなどとは思っていません。僕は最初から購入をあきらめていました。そういう点でも、急ぐことはなにもないのです。たぬき岩という、たぬきの形をした岩がありました。もっといろんなところを、桜島中を見て周りたい。自転車を借りて、あるいは自動車を借りて・・・しかし、そう思っても、今はとてもムリ。体力的に限界であるだけでなく、やはり一睡もしていないということで、脳が軽く腫れているような感じでした。桜島を去り難い気持ち。その一方で、はやくホテルで横になりたいと、体が悲鳴をあげています。そんな状態でも、僕は、痛む足にむち打って、途中にあった展望台に登りました。友人は、展望台までの坂を見て、下で待っているから行ってきてくれ、と言いました。そのひとことから、あまり苦痛を言葉で訴えない友人も、相当に消耗していることがわかりました。僕も同様に消耗していましたが、それでも、桜島にいる時間が惜しいと思っていたのです。ときおり膝に手を置き、休みながら、僕は展望台に登り、桜島の美しい景色を眺めました。遥か彼方のフェリー乗り場まで、人が続いていました。(遠いなあ・・・)フェリー乗り場は、思ったよりも遠く見えました。剛は遠い会場を選んだんだなあ・・・と、あらためて思いました。その展望台には、たくさんの観客がいました。ベンチは人で埋め尽くされていました。笑顔なく、談笑することもなく、ただ静かに、たたずんでいました。みんな同じ、去り難い思いを抱えているのでしょう。展望台から視線を下に移すと、友人が道端に腰を降ろし、呆然と座っていました。給料ぜんぶ、どこかに落とした人のようでした。ちょっと笑ってしまいました。僕は展望台を降り、友人と一緒に再び歩き出しました。黙々と、黙々と歩きましたが、僕の足はかなり窮地に追い込まれていました。足首をかばって歩いていたので、今度は膝の痛みがつらくなっていました。溶岩グラウンドのグッズ売場の前を通りました。やっぱり、サンキューTシャツは売り切れていました。グッズ売場のあたりから、目に見えて人の数が増えていました。展望台から、ゆっくりと、30分くらいかけて、僕らはフェリー乗り場の近くにやってきました。辺りにはたくさんの人たちが、海を見たり、顔にタオルをかけて寝転んだりしていました。フェリー乗り場からは、予想どおり、長い、長い行列ができていました。その行列は、フェリー乗り場から、道路に沿って200メートルほど続いていました。この一日というあいだに、いったい何度、行列に並んだことか・・・。「またかあ〜」友人が、ため息をついていました。「これで最後だぞ。そう思うとなごり惜しいだろ?」いたずらっぽく、僕がそう言うと友人は言いました。「もう、3ヶ月は行列に並ぶのはいやだよ」まったくもって僕も同感でした。行列は二ヶ所に分かれていました。ひとつは、通常の客席に乗る列、もうひとつは、車両収容スペースに乗る列でした。車も、短い列を作っていました。来るときと同じく、2便に1回、車も乗せていたのです。桜島での最後の行列に30分ほど並んで、ようやく、僕らは階段を登り、フェリーへと乗り込んで行きました。ぎっしりと観客を詰め込み、フェリーは桜島を離れて行きました。桜島がだんだんと遠くなっていきました。僕らは桜島が見える、フェリーの後部にいました。周りの観客も僕らも、ここでも無言で、だんだんと小さくなっていく桜島を見つめていました。ほんの2日前に桜島に初めてやってきた僕でしたが、たまらなく愛おしい場所に感じられました。僕らはデッキの端の手すりに組んだ両手を置く、同じポーズを取りながら、桜島を見ていました。「あそこにいたんだよね・・・」「うん・・・いたね」「歌ったよね、たくさん・・・」「うん・・・歌った」「楽しかったよなあ・・・」「うん・・・」「またあるかな、オールナイトライブ・・・」「さあ・・・・」潮風に混じって、あの夜の、あの朝の、剛の絶叫が、僕らの歓声が、聞こえたような気がしました。続く<次回予告>剛の幻影を求めて、海乃屋ラーメンへ。甘いスープに舌鼓。そして、さらば鹿児島。鹿児島空港から一路東京へ・・・。★次の日記 ←クリック