長渕剛 桜島ライブに行こう!



錦江湾の風に吹かれましたか? (桜島ライブ64)

2004年11月16日(火)

『錦江湾の風に吹かれましたか?』−桜島ライブ(64)

                 text  桜島”オール”内藤





桜島の森の中。国定公園、桜島の自然。
疲れ果てた体を引きずりながらではなく、
いつの日か、普通に観光したい、と思いました。


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さようならの唄 桜島編



僕らはゆっくりと溶岩ロードを歩いて行きました。
溶岩グラウンドの足止めにあせり、
闇夜を早足で進んだ、会場に向かうときとは対象的に、
くらむような熱さはあるものの、
明るい足下、国定公園の快適な道路を、
あせることなく、のんびりと歩く僕らでした。



急いで乗り場に行ったところで、
そこには確実に長い行列ができているはず。
だったら、のんびりと桜島を楽しもうと思いました。

リストバンドをもらったときに、
一緒に渡されたチラシとクッションの入った袋。
その中に入っていたグッズカタログに、
サンキューTシャツのことが書かれていました。
終演後に溶岩グラウンドのグッズ売場で発売されるという、
特別の限定Tシャツのことです。

シャツのデザインは秘密でした。
欲しいなあとは思ったものの、
Aブロックの僕らがグッズ売場にたどり着くまでの間、
残っているなどとは思っていません。
僕は最初から購入をあきらめていました。
そういう点でも、急ぐことはなにもないのです。



たぬき岩という、たぬきの形をした岩がありました。
もっといろんなところを、
桜島中を見て周りたい。
自転車を借りて、あるいは自動車を借りて・・・
しかし、そう思っても、今はとてもムリ。
体力的に限界であるだけでなく、
やはり一睡もしていないということで、
脳が軽く腫れているような感じでした。
桜島を去り難い気持ち。その一方で、
はやくホテルで横になりたいと、体が悲鳴をあげています。

そんな状態でも、僕は、
痛む足にむち打って、途中にあった展望台に登りました。
友人は、展望台までの坂を見て、
下で待っているから行ってきてくれ、と言いました。
そのひとことから、あまり苦痛を言葉で訴えない友人も、
相当に消耗していることがわかりました。

僕も同様に消耗していましたが、
それでも、桜島にいる時間が惜しいと思っていたのです。
ときおり膝に手を置き、休みながら、
僕は展望台に登り、桜島の美しい景色を眺めました。



遥か彼方のフェリー乗り場まで、人が続いていました。

(遠いなあ・・・)

フェリー乗り場は、思ったよりも遠く見えました。
剛は遠い会場を選んだんだなあ・・・
と、あらためて思いました。

その展望台には、たくさんの観客がいました。
ベンチは人で埋め尽くされていました。
笑顔なく、談笑することもなく、
ただ静かに、たたずんでいました。
みんな同じ、去り難い思いを抱えているのでしょう。

展望台から視線を下に移すと、
友人が道端に腰を降ろし、呆然と座っていました。
給料ぜんぶ、どこかに落とした人のようでした。
ちょっと笑ってしまいました。

僕は展望台を降り、友人と一緒に再び歩き出しました。
黙々と、黙々と歩きましたが、
僕の足はかなり窮地に追い込まれていました。
足首をかばって歩いていたので、
今度は膝の痛みがつらくなっていました。

溶岩グラウンドのグッズ売場の前を通りました。
やっぱり、サンキューTシャツは売り切れていました。
グッズ売場のあたりから、
目に見えて人の数が増えていました。

展望台から、ゆっくりと、30分くらいかけて、
僕らはフェリー乗り場の近くにやってきました。
辺りにはたくさんの人たちが、海を見たり、
顔にタオルをかけて寝転んだりしていました。
フェリー乗り場からは、予想どおり、
長い、長い行列ができていました。
その行列は、フェリー乗り場から、
道路に沿って200メートルほど続いていました。



この一日というあいだに、
いったい何度、行列に並んだことか・・・。

「またかあ〜」

友人が、ため息をついていました。

「これで最後だぞ。そう思うとなごり惜しいだろ?」

いたずらっぽく、僕がそう言うと友人は言いました。

「もう、3ヶ月は行列に並ぶのはいやだよ」

まったくもって僕も同感でした。

行列は二ヶ所に分かれていました。
ひとつは、通常の客席に乗る列、
もうひとつは、車両収容スペースに乗る列でした。



車も、短い列を作っていました。
来るときと同じく、2便に1回、車も乗せていたのです。

桜島での最後の行列に30分ほど並んで、ようやく、
僕らは階段を登り、フェリーへと乗り込んで行きました。

ぎっしりと観客を詰め込み、
フェリーは桜島を離れて行きました。

桜島がだんだんと遠くなっていきました。
僕らは桜島が見える、フェリーの後部にいました。
周りの観客も僕らも、ここでも無言で、
だんだんと小さくなっていく桜島を見つめていました。

ほんの2日前に桜島に初めてやってきた僕でしたが、
たまらなく愛おしい場所に感じられました。

僕らはデッキの端の手すりに組んだ両手を置く、
同じポーズを取りながら、桜島を見ていました。


「あそこにいたんだよね・・・」

「うん・・・いたね」

「歌ったよね、たくさん・・・」

「うん・・・歌った」

「楽しかったよなあ・・・」

「うん・・・」

「またあるかな、オールナイトライブ・・・」

「さあ・・・・」


潮風に混じって、
あの夜の、あの朝の、
剛の絶叫が、
僕らの歓声が、
聞こえたような気がしました。



続く



<次回予告>
剛の幻影を求めて、海乃屋ラーメンへ。甘いスープに舌鼓。
そして、さらば鹿児島。鹿児島空港から一路東京へ・・・。

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