2004年11月05日(金)
『自分の殻を破りましたか?』−桜島ライブ(55) text 桜島”オール”内藤
神々しささえ感じる、あの朝の桜島。 はたして自分を歌った『桜島』を聴いた感想は? きっと、喜んでもらえたと思います。
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M-40 桜島 −アルバム『Keep on Fighting』(2003)−
一瞬、生命の危機すらも頭をよぎるほどの、 物凄い炎の圧力でした。
火炎に巻き込まれる瞬間というのは、 きっとあんな感覚なのでしょう。 ブワーーッと膨れ上がる、 その暴力的で、柔らかい圧力は、 容赦なく僕のからだを押しながらすり抜け、 広い広い桜島の会場を駆け抜けました。
顔に、首のまわりに、 そして、Tシャツをまくり上げた二の腕に、 炎の熱がほのかに残っていました。
桜島のマグマが噴き出したかのような、 この、絶妙な特効の演出。 やってくれやがる・・・・ 体には炎は燃え移ってはいないけど、 僕の気持ちには完全に火が付いた。 そして、きっと、75,000の心にも・・・
オーオオオオッ! オーオオオオッ! オーオオオオッオー!
まるで、あの炎が、 会場のあちこちに飛び火したかのような、 凄まじい盛り上がり。
わかってる。 僕らはわかってる。 この歌の意味を。 この歌こそが、ライブの象徴であることを。
この歌にたどり着くことこそが、 あの夜を越えることだということを。 この朝を迎えることだということを。
炎熱!灼熱!『桜島』!
待ったナシ!文字通りの正念場だ! 血管がぶち切れんばかりに、 雄叫びを上げる剛の勇姿。
躍動する筋肉、鬼気迫る表情、射るような眼光。 リミッター、完全に外れてる。
セイッ! ワー!ワー!ワーッ!
ここで燃えずに、どうすんだ!
自分を試すような気分でした。 自分を試すように、テンションを上げました。
金港湾に 陽が沈み 海が赤く血の色に 燃え始める 照り返す雲は 紫に染まり とんがったまんまで 黙々と 息をしてる
桜島で、剛が『桜島』を歌っている! 桜島で、剛と『桜島』を合唱している! この、シンプルで、これ以上ない、 最高のシチュエーション!
このしあわせがわかる? 桜島で歌うための作られた歌なんだから、 このライブで歌うのは当たり前、だって?
その、当たり前が、興奮するんだよ! その、当たり前が、二度とないんだよ!
俺は桟橋から 桜島フェリーに乗り 山よ 岩肌よ ゴツゴツのおまえ! きさまの 前に 立つ!
ウォッオオオ!
燃えて上がるは オハラハー SA・KU・RA・JI・MA! 丸に十字の 帆を立て 薩摩の 風が吹く!
それにしても・・・ どうだろう、このド迫力。 剛のラジオ番組で、初めてこの『桜島』を聴いたとき、 勇壮な歌だ、いい歌だとは思ったものの、 まさかここまで巨大になるとは予想しなかった。
アルバム『Keep on Fighting』が売り上げを伸ばす中、 『桜島』の存在感は日を追うごとに増して行き、 夏の野外ツアーのときには、 見事にライブのど真ん中に突っ立っていました。
桜島ライブのために生まれ、 桜島ライブが近づくにつれ、さらに大きくなっていった。 桜島ライブに向けての、ファンの期待を吸い込んで、 パンパンに膨れ上がって、このときを迎えた。 今や、誰もが認める、剛の代表曲だ。 あの『勇次』ですら、第一部に追いやったのだ。
シャーーーーッ! シャーーーーッ! シャーーーーッ! シャーーーーッ!
もう、これで声が出なくなってもいい。 そう言わんばかりの、剛の絶叫が、 『桜島』の長い長いエンディングをこれでもかと盛り上げる。
僕は、声が出なくなった剛の姿が見たいと思いました。 そして、声が出なくなった自分を見てみたいと思いました。
疑いの余地もなく、人生で一番声を出していたのに、 不思議と、僕の喉からは声が出続けていました。 あんなに喉が弱いと思っていた、僕なのに。
しかし、足はパンパン、軽くしびれて、鉄の棒のよう。 腕の疲労は臨界点をとっくに超えていました。 けして、おざなりに拳を上げることはありませんでした。 『勇気の花』以来、力を込めて、 天空を突き刺すように上げていたのです。 その代償に、首も肩もカッチカチ。 筋トレでも、ここまで筋肉が張り詰めることはありませんでした。
でも、大丈夫。まだまだ、大丈夫。 声も、足も、腕も、心も! アドレナリンがドクドクと流れているから。
「自分の殻」というものがあるのなら、 それはものの見事に、木っ端微塵、砕け散っていました。
シャーーーーッ! シャーーーーッ! シャーーーーッ! シャーーーーッ!
昨晩、21時半。 あの開戦のときから、実に8時間半。 剛、そして、75,000人の観客たちは、 とうとう、乗り切りました・・・ 桜島ライブ、最大の難所を。 胸突き八丁、鋭角の上り坂、難曲『桜島』を。
曲のあいだじゅう、歌いながら、叫びながら感じた、 ゴツゴツとした手応え・・・ 文句のつけようがない。 咆哮と熱気が渦を巻くような、 超ド級の凄まじい盛り上がりでした。
僕はマラソンのゴールを駆け抜けたあとのように、 動きを止めた体を泳がしながら、 視線を宙に泳がせていました。 動きは止まっても、心臓は強く脈打っていました。 思考はまだ、はっきりと戻ってきていませんでした。
(もう、6時だ・・・終わるのか・・・)
帰りのツアーバスの時間を気にしているのでしょうか。 斜め前の観客が携帯電話で時間を確かめていました。 休憩時間に彼は、6時には行かないと・・・ と連れに向かって話していたのです。
「まだまだあーーーっ!」
「ツヨシーーーっ!もっとだーっ!」
「まだまだやーーっ!もう一丁や!」
島を揺るがす轟音が止んだ会場からは、 くすぶる残り火の行き場を求めて、 悲痛な叫びが上がっていました。
続く
<次回予告> それは剛史上、最高のエンディングか・・・ 胸を震わせる剛のMCに導かれ、至高のラブソングが、 焼け焦げる僕らの熱情に降り注ぎました。
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