長渕剛 桜島ライブに行こう!



楽しさを忘れていませんか? (桜島ライブ54)

2004年11月03日(水)

『楽しさを忘れていませんか?』−桜島ライブ(54)

                 text  桜島”オール”内藤






通販で申し込んだTシャツ。
もったいなくて着れるかどうかが問題。
このデザインこそ、ほんとに長々と買うかどうか迷いました。
結局、桜島から帰ってきて、欲しいという気持ちを抑えられず・・・


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M-39 LANIKAI −アルバム『Keep on Fighting』(2003)−



桜島に朝がやってきました。
朝は必ずやってくるのに、
朝の実感が持てない僕でした。

朝の実感がない?

実感もなにも、朝は朝。
朝が来れば朝なのに。
すべてはオールナイトライブのせいでした。

夜更けから始まり、大騒ぎ。
そして、朝を迎える異常な祭り。
一晩中、大好きな剛の歌を聴き、
聴くだけではなく、歌い、叫び、
興奮し、発奮し、心配し、うろたえ、
驚き、胸を熱くした。
そして迎えた朝だから、
一睡もせず、迎えた朝だからこそ、
僕はその実感が持てませんでした。

何かが始まる予感がするのが朝なのに、
何かの真っ只中のまま、朝が来た。
こんな朝なんて、
人生で初めてのことでした。
ほんとうに、初めてのことだったのです。

『東京青春朝焼物語』から、
『明日へ向かって』の流れで、
僕の心はシリアスに大きく振れていました。

『桜島』の演奏がひたひたと迫っているのを感じ、
桜島ライブの終焉をその向こうに感じ、
追い討ちをかけるような、ボロボロになりたいとの破滅志向。
終わりよければすべてよし。
ライブの最後に目にものを見せて欲しい。
剛は目にものを見せてくれるだろうか。
ぐうの音も出ないような納得を、
最後の最後に感じることができるだろうか。

不安でした。
キンキンと、僕の心は金属音を奏でていました。
シリアスは剛のライブの大きな特徴ですが、
それだけではないことを、図らずも思い出させてくれたのが、
次に演奏された曲でした。

ハッとするような軽快なギターの音でした。
その弾むような音に体を預けながら、
こわばった表情が緩み、
眉間のしわが消えて行くのを僕は感じていました。

ウ〜 ワ・ワ・ワ!『LANIKAI』!

そうだ。そうだった。
このライブにはこんな楽しさもあったんだ。


キラキラ 照りつける 太陽と
からっからに 乾いた 風
鹿児島の空は青く 高く
俺は 鳥になる

錦江湾が 金色に
たそがれ 染まるころ
波間の体 横たえて
星を枕に 眠る



やんやの歓声がとんでいました。
ハワイのリゾート地の地名である『LANIKAI』は、
「鹿児島」「錦江湾」というフレーズを散りばめて、
ここ、桜島のための歌に生まれ変わっていました。

ZEPPのライブでも聴いた、この桜島バージョン。
あのとき、この『LANIKAI』のあとに、
轟音『桜島』が演奏されました。

間違いない。次にくる。『桜島』が。
そこで、ライブは絶頂を極めるだろう。
だからこそ、なおさら、『LANIKAI』が醸し出す幸福感が、
より一層、際立って感じられました。


鹿児島の海に 明日でっかい
波がくる
明日 でっかい 波が来れば ワタル
おまえと 沖へ出よう



この朝を迎えるまでの、様々な出来事を思い出していました。
鹿児島に発つ前日の夜のワクワク感。
羽田でのほのかな緊張感。
飛行機の中での待ち遠しい感じ。
リムジンバスから見た鹿児島の景観。
初めて相対した桜島の大きさ。
グッズ売場でのおおはしゃぎ。
リハーサルに出くわした驚きと幸運。
深夜まで曲目を予想しあったホテルの夜。

どれも、これも、楽しい思い出となっていました。

それどころか、
絶望のどん底に叩き落された豪雨すらも、
フェリー乗り場の長蛇の列すらも、
そして、溶岩グラウンドの足止めすらも、
なんだかドラマを盛り上げる演出のようで、
その記憶の中に、ほのかな楽しさを確かめることができました。

そうだ、桜島ライブには、
苦しさやシリアスばかりじゃなく、
喜びと楽しさもあふれていたんだ。
笑顔と、笑い声もあふれていたんだ。

『LANIKAI』は、そのことを僕に思い出させてくれました。


Have a passion for my life
Have a passion for your life
鹿児島に 照りつける 太陽よ
俺たちを 焦がしてゆけ



両腕を高く上げて、メロディに合わせて、
左右に大きく振りました。

なんていう、楽しさ。
なんていう、爽快さ。

僕はまわりに広々と空間があることをいいことに、
腕だけではなく、からだ全体を左右に揺らしました。
友人と一緒に、大きなアクションで、
右に左に、からだ全体を傾けて、
『LANIKAI』を歌いました。

こんなはしゃいだ姿、会社の仲間にはとても見せられない。
家族にも。桜島に来なかった友達たちにも。

でも、一緒に夜を乗り越えた友人と、
名前も知らない75,000人の仲間たちの前でならば、
まったく恥ずかしさは感じない。
みんな、同じように夜を越え、同じ朝を迎え、歌っているのだから。

どうしようもなく、笑顔があふれました。
僕は手を振りながら体を回し、すっかり明るくなって、
後ろのほうまで見渡すことができる観客の波をながめました。

深刻ぶった、説教臭いライブだと、
世間は剛のライブに間違ったイメージを持っている。

違う!

笑顔も、楽しさも、爽快さもあるのだ。
その中で、怒り、哀しみ、シリアスが背骨になっている。
だから、深いんだ。
だから、ヒット曲オンパレードの、
テレビの音楽番組みたいなライブとは違うんだ。


SA・KU・RA・JI・MA!
Ride on the sunshine away

SA・KU・RA・JI・MA!
Ride on the sunshine away



ステージの剛の笑顔のまぶしいこと!
僕も笑う。友人も笑う。他のみんなも。
ようやく、僕にも、朝の手応えが感じられてきた。
長く、暗い夜を乗り越えて、笑顔で迎える朝だ。
鹿児島、桜島の、二度とない朝だ。

そして、桜島ライブに、文字通りのクライマックスが訪れる。

『LANIKAI』が幕を降ろすやいなや、
せり上がるような、ドラミング!

ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド・ドーン!

来た、来た!
その予感に、いてもたってもいられず、
叫び声を上げる観客たち!

うぉおおおーっ!

その瞬間、
不意にステージから吹きあがった何本もの巨大な火柱の、
かつて感じたことのない炎圧で、
僕の体は大きく後方にのけぞりました。



続く



<次回予告>
桜島オールナイトライブ、問答無用のハイライト!
この日のために生まれた曲。この日を象徴する歌。
今こそ、桜島の前に立ち、命の雫よ、燃えろ、金色に!

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