本田 透著 三才ブックス (2005/03/12)
この本はいろんな見方、楽しみ方ができる。
オタクとして共感して読んでもいいし 知識とか思想とかを知るキッカケにしてもいい 単なるフィクションとして、 モテない、女性を持つ男性の恨みつらみとしてのエッセイとして
読む人の立場、環境によっていろいろ楽しめると思います。 もちろん、「なぁ〜にいっちゃってんの?」と終わらせることもできる。
私は、先に「喪男の哲学史」を読んだから、「電波男」は思いのたけをぶつけられた本という感じで この本の主人公は本当にひどい目にあって、三次元の女性、負け犬を許せないんだな〜と気の毒に思いました。 でも、これだけあらゆる思想家、小説家、漫画の登場人物を引用して、おもしろおかしく 「非モテ」の現象や「喪男」としての生き方を紹介できるのなら、 これだけの本を書き上げられるのだから、この作家さん自体は「モテない」わけないのではないかと思う。 そうすると、完全なフィクションなので、改めてすごい想像力なんだわ。ということになる。 いやいや、哲学史で語られたように、ブッダや手塚治虫先生のように、モテから逃げたのかもしれませんけど。
独身男性のモテない叫びに、仕方なく負け犬になった私が、「あ〜面白かったと」読んで終わらせてもいい。 そういう本です。
ですが、この本をこのまま読んで疑問を全く感じない人がいたら、もう少し考えて欲しい。
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DQNになびくような女性やリッチな負け犬という狭い範囲の女性ばかりを敵視して、その他大勢の女性は蚊帳の外なのね。 確かに、女性は外見、財力になびきやすいかもしれない。 でも、それには仕方ない理由があると思う。
女性の賞味期限を決めているのは、他ならない男性社会ということを忘れてはならないと思う。 そして女性が一人で子どもを産み、育てることの困難さも男性が作ってきた社会ならでは。 女の一生は選んだ男で決まる、そしてそれは博打と一緒。 結婚して姓が変わり、仕事しづらくなってしまう、人生が大きく変わるのは女性の側だけなのです。 能力も容姿も秀でてないと、生き辛い社会を作って来たのも結局は男性なんですよね。 それはまだ今も変わらないで続いているわけです。
動物社会ならメスが、美しく能力のあるオスを選んでいましたし、ハーレムを築く動物もいるわけです。 人間は、それぞれの男性に女性を行き渡らせるような社会にしてみたものの それは、女性から徹底的に力を奪っていたから出来ていたことでした。
弱肉強食な、お金がないと生きていけない、弱いものが楽しめない世の中で 自分の子どもには幸せになってもらいたいと、ごく当たり前の願いを叶えるためには どんな男性と結婚したほうがより安全か、と打算というより、当たり前のことを計算したらどうなるか。 計算するな!といってもそれは無理です。愛だけではおなかがすくのですから。
そして恐ろしいことに、愛はいつか冷めるものなのです。 容姿や財力にこだわらず、心が通じ合うからと結ばれても、心はいつか変わるんです。ついでに容貌も衰えますしね。(稀に変わらない人もいます) ないない尽くしで、心をよりどころにして、放りだされたらすっごく惨めだと思うんです。 その時にはものすごく年取ってるわけでしょうし。
それに、容貌にこだわることをはじめたのは、男性のほうが先だと思います。 不美人への差別を知らないとはいわせません。 だから女性はより美しくなるように化粧したり、整形とかしたのだと思います。 ようするに、選別される苦しみは、オタクとかキモメンたちだけではないのです。
女性ははるか昔から常に選別され、差別されてきたのです。 適齢期を過ぎて、結婚してない女性に、その友人の男性が 「美人の年増とブサイクの若い子なら、若い子を男を選ぶ」と断言された女性を知っています。 「男は年をとっても、お金さえあれば結婚できるけど、女は年取ったら無理だから」と私自身も言われました。 その男性たちは特別DQNではありません。いいにくい真実を親切に教えてくれた心ある男性です。
晩婚、少子化、未婚者多数・・ 女性が選ぶ世の中になって、絶対に結婚できる社会でなくなってきたから こんな問題が出てきたのだと思います。 女性だって、選びすぎて、結婚できなくなるわけです。
まだ完全な平等とはいえないけど、平等社会になってきたから故の悩みなのでしょう。
喪男よ、キモメンよ、モテないのは、生き辛いのはあなたたちだけではないのです。
この本を読んで共感して、アンチテーゼの浮かばない人は 「恋愛なんてやめておけ」 松田道雄著 朝日文庫 読むといいと思います。 それから、喪男が敵視する女性もいるけど、いろんな女性の悩みが登場する 「光をあなたに : 美輪明宏の心麗相談」美輪明宏 メディアファクトリーも読むといいと思います。 「不美人論 」藤野美奈子 西 研 著 径書房は容貌で苦しむ女性たちが登場します。 結局、モテない人の悩みは共通です。
でも、ありのままの私を受け止めてくれ!私に合わせろ!と言い張っている人よりも なんとか可愛くしよう、見せよう、相手の好きなことはなんだろうと努力する人のほうがつまり相手に合わせる能力、協調性があると思えますので、 私はそういう人になりたいし、そういう人と一緒にいたいです。
でも、本当にそんな人って滅多にいないわけで、だから恐ろしくて結婚なんかに踏み切れないでいるのが実情です。 滅多にどころか、ほぼいない。自分の周囲をよく見回してみてください。家族・友人ですらいない。 私自身もできているかどうか・・・
つまり、恋愛、結婚は決して楽なことではないのです。 そこを勘違いしてはいけない。
「喪男の哲学史」の感想 http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/day?id=84814&pg=20070729
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