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まよいました。 | 2007年01月31日(水) |
セシル・ケージは、霧に濡れそぼつ自慢の金髪を指先で払いながら大仰な溜息をついた。 「なあバーレイ、俺たちこのまま遭難するんじゃないかなあ」 「既に遭難してるだろ」 彼より二回り近く小柄なアラン・バーレイは、帽子を被り直して嘆息した。 「大体お前がだな、あの御者の言うことに従ってりゃこんなことにはならなかったんだ」 彼らをこの近くまで運んできた御者は、霧が広がり始めたのを見るなり町に戻るとふたりに告げた。何が何でも今日中に目的地に着きたかったセシルと意見が合わず、結局彼らを此処に下ろして御者は帰っていったのだが、友人など見捨てて一緒に町に戻れば良かったかとアランはこっそり考えた。 セシルはそれを見透かすように目を細め、けれどそんなことなど微塵も感じさせない呑気な調子で曇った空を見上げた。 「あの御者はこんな霧ひとつをそんなに怖がってたんだろうねえ」 「僕が知るか。不測の事態が起きたときは地元民の言うことに従う。セオリーだろ。それを無視しやがって」 「だってねえ、海や山じゃないんだし。近くだっていうから歩いても行けるかなあと思うのは変じゃないだろう。何せ俺たちが暮らしてるのは霧の都と謳われるカプトゥ・ムンディだ、こんな田舎の霧に怯えて引き返したとあったら友人に笑われる」 手に馴染んだ杖を軽やかに振り回しながらセシルは笑う。 濡れた外套の重みと冷たさに疲労が溜まりつつあるアランは、諦めたように首を振った。 「それで迷ってたら世話ないっつの」 「まあそうなんだけどねえ」 ** 必要から誕生したABCCコンビ。 道に迷って辿り着いた屋敷に宿を求め、その夜に起こる惨劇――とかテンプレっぽい感じですね。ホラーファンタジーとか好きです。 ていうかぶっちゃけベティさんの話なんですが。何度か冒頭を書き直して第三者の視線が要ることにようやっとこ気付いてキャラ固め中。 |