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書物の一節。 | 2006年08月06日(日) |
すべては歴史の淵の向こうに。 祝福と呪いを受けた血脈は密やかに継がれ、末裔はただ世界の果てでまどろむ。 因果はとうに喪われ、辿る術は既にない。 みどりごの眠りを妨げることなかれ。 * 世界の天秤を傾けるほどの運命は、黄金の黄昏と共に沈む。 夜の栄華は曙光に駆逐されるが定め。 滅びの手から逃れた雪華は地に根付く。 その花を摘むことなかれ、囲うなかれ、知ることなかれ。 * 妙なる歌を紡ぐ者を見よ。 裸足で野に踊り、光を浴び、喜びに満ちて世界を讃える声を聞け。 花冠をかむる全き祝福の娘を守護する風は淀んでいる。 恵みを拒むことなかれ。 * 世界はたえず歪んでいる。 世界はたえず歌っている。 世界はたえず祝福し、世界はたえず呪詛の言葉をささやく。 世界にとめどなく流れ溢れ絶えぬものを見つめよ、こたえはすべてそこにある。 |