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午睡。 | 2005年05月19日(木) |
「リリアナ、余はどうすれば良い」 彼女の膝にもたれかかって、男は震える声で呟いた。 櫛のよく通る黒髪を梳きながら彼女は微笑する。 それは母のようであり姉妹のようであり妻のようであり。 惑う男を冷静に見下ろして、彼女は愛しさに目を伏せた。 なんて弱いひと。 「思うままに、陛下」 貴方が誰を想おうと何をしようと。 「最後までお供致します。……私は貴方の味方ですから」 その言葉に、彼は緩慢に顔を上げる。 道に迷った子供のように不安に揺れる目に口付けをひとつ。 肩の力を抜いて、彼は降ってくる唇に身を任せる。 「リリィ」 不意に彼女の愛称が口を突いて出た。 「何でしょう、陛下?」 慈愛に満ちた笑みは何よりも彼を安堵させるが、その瞳は底知れぬ闇の中へと突き落とされるような不気味な光も湛えている。 ゆるりと寝台の上に流れる金髪に指を絡めては離し、彼は溜息を付いた。 「……何でもない」 くすくすと空気のような笑い声が落ちてくる。 疲れたようだとごまかすように零すと、お眠りなさいませ、と心地良く耳に響く声が彼を包んだ。 「お傍におりますわ」 だから何処にも行かないで下さいませね。 それは精神に絡み付き食い込む茨のように。 きりきりと締め付けられるような気がするのは罪悪感を感じている証拠だろうか。 「それは余の台詞だよ、リリィ」 「……いいえ、私の台詞です。私は何処にも参りませんわ」 気怠い時間は眠気を誘う。 柔らかな膝と掌の感触が一層それを助長して、彼は目を閉じた。 ****** ……えぇと、らぶなのかこれは(激しく疑問)。 |