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No-Mark Stall *




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雑談に終始。 | 2005年05月14日(土)
ひとしきりアルバンに攻撃を仕掛けことごとくかわされた暮羽は、しばらく物凄く不機嫌そうだったが、くるりとセヴランに向き直った。
「流行りのスカートも可愛かったんだけどねー、色々動くこと考えるとあんまり向いてないっぽかったからさ。あんまり綺麗でひらひらした服もどうかと思ったら結局こんな風になっちゃったわ。もういっそ制服のままでいいかとも思ったんだけどさぁ。とりあえずそれは魔王からお姉ちゃんを取り戻すときの一張羅にしとくわ」
だだだだだ、と口を挟ませない勢いでまくし立てる。どうやら不満をおしゃべりで解消することにしたらしい。
厚手の藍色のワンピースをベルトで止め、すとんとそのまま流れ落ちるスカートの下にズボンを穿いた彼女はまぁこの世界の住人に見えなくもなかった。多分父親が狩人か何かの田舎の娘ならこんな格好だろう。
「茶色の目はともかく、黒い髪はこの国では割と珍しいんですが……南の方には多いと聞きますし、突飛な行動しなければ合格でしょう」
お墨付きを頂いた彼女はにっこり笑う。
ぱちぱち瞬いたふたりの騎士は、口元に手を当てて何か考え込むセヴランと、「嬢さんはかーいいねぇ」と微笑ましげな笑みを浮かべて頭を撫でるアルバンというそれぞれの反応を返した。暮羽は即座にべしりとごつい手を叩き落とす。
「それで、いつ出発するの?」
「神官たちが必死の形相で出立に善き日を占っているのでしばらくお待ち下さい。そうだな……早くて明後日くらいでしょうか」
「……ちょっと遅くなぁい?」
「きちんと準備をしないと途中で更に時間を食いますよ」
そっか、と彼女は素直に頷く。
「じゃ、明日はこの世界の地理と風習を頭に叩き込むことにするわ。幸い言葉は通じてるっぽいからイイわよね。字は多分読めないだろうけど。ありがとう神さま、便利機能付けてくれて……!」
これが普通に外国を訪れたときと同じようにさっぱり違う言語だった日には姉を助けに行くのに数年はかかっていただろうと思う。

「……なんか嬢さん、独りでばたばた計画組み立ててねェか?」
あれしなくちゃ、これしよう、とぶつぶつ独り言を呟く救世主の姿を呆れたように眺めやりながらアルバンが友人に問う。彼も困惑げに頷いた。
「どうも物凄い現実的な方のようで。伝説では数日はごねまくった過去の救世主もいるらしいから、それを考えると話が早く進んで良かったのかそれとも振り回されてどっこいどっこいなのか、判断に苦しむな」
「そりゃいきなり別の世界じゃなあ。俺だったら元の世界に即刻帰せとそこの人間脅すぜ」
「私もだ。冗談じゃない」
ふたりして暮羽を見遣る。

「どうせあの親父たちじゃきっと一週間くらいかかるわよね。うん、だったらその間に誰かに重要な単語の幾つかは教えてもらお。英語に近い言語だとラクなんだけどなぁ。あと荷造りよね……あ、ねぇ優男」
何故だか呼び方が戻っている。
がっくりと項垂れた金髪の青年の向こうで熊がまたげらげらと笑い転げた。
「……セヴランですよ。なんですかもう……」
「私ひとりで行くわけじゃないんでしょ?」
「そうですよ。あなたひとりを放っておくわけにもいかないじゃないですか」
色んな意味でな、と笑い声に混じってアルバンの囁きがセヴランの耳に届く。
なのでとりあえず足を踏んでおいた。鉄が仕込んであるから多分普通のものよりも痛いだろう。
「誰が一緒なの?」
「とりあえず私は確定です。あとはアル――」
「俺新婚だから」
「理由にならん」
暮羽に続きを話そうと顔を向けたセヴランだが、視線の先に彼女はいなかった。
あれ、と思うと同時に隣できゃあ、と歓声が上がる。
「うっそアンタ奥さんいるのっ!?」
「おーよ美人だぜー?」
「うわー、アルバンみたいな男でも結婚できるんだ、意外」
む、と眉にしわが寄せられる。
「何気に失礼だなお前さん」
「うんごめん失言ね。でもさぁ、女の子に引かれない?」
「んにゃ、そりゃもうよりどりみどごふぁッ」
後頭部にセヴランの手刀が見事に命中し、アルバンが頭を抱えてうずくまる。
「話がそれすぎだ」
「……。アンタも意外と乱暴だったのね」
「人間いくつもの顔を持っているものですよ。まぁアルバンには国の守備を任せないといけませんので元から連れて行く余裕はないのですが。これでも近衛隊の副隊長ですよ、この男」
「ふーん。凄いのかどうか分かんないからいいわ。じゃ、あたしとアンタってこと?」
「おそらくは。あまり大人数で行っても向こうに気付かれますからね」
「……何か暗殺しに行くみたいね」
「あんなものと正面から一騎打ちしたら私たちは敵いませんから。卑怯と呼ばれようが何だろうが目的を遂げられればいいんですよ」
爽やかな笑顔と共に言い切られ、暮羽は未だに丸くなったままのアルバンの耳元に囁く。
「セヴランってさ、何気に腹黒い?」
「おお、嬢さんもようやっと気付いたな、えらいえらい」
「……何をお話なさってるんです?」
麗しい微笑は相変わらずだが、額に青筋が見える。
暮羽も負けずに可愛らしく小首を傾げて笑って言い返した。
「ひとは見かけと第一印象によらないのね、という話をしただけよ。で、あたし今日何処で寝れば良いの?」
既にとっぷりと夜は更けている。
懐中時計を確認し、彼は溜息を吐いた。いつもなら自分の部屋で日記を書いている時間だ。いつの間に。

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プロットを切ってすらいない某異世界召喚モノ更に続き。
後半になるにつれ気が抜けているのがばればれですいません(基本的に何も考えていない)(屋台は本当もう読んで下さってる方置いてけぼりにしてしまってすいませんというか……半ば以上イヤほぼ管理人のメモ帳です……)。

どんどんセヴランが黒く、暮羽が素直というか率直というかになってます。おかしい逆の設定のはずだったのに(ちなみに笑い上戸アルバン氏は影も形もいませんでした当初)(しかも何で奥さんがいる設定に)(最近夫婦が個人的ブームです)(何故)。
written by MitukiHome
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