プチ浮気。

「なんでみんな、旦那とか彼氏のバックの中身とか携帯とか見たがるんやろうね。あの中身見ても、自分の幸せなもんは入ってないのに。不愉快になるもんしか入ってないんですよ。見なかったら幸せやのにねぇ。」
・・・と言うような事を以前島田しんすけが言っていた。
まさにその通りでした。
今朝、私は貫徹で、朝一でダーをお口でぬいた後(生理だしね)、ダーはシャワーへ、私はお風呂場付近でお風呂中のダーとおしゃべり。
と、ダーの携帯がなった。目覚まし設定してたから。
うるさいので止めに行った時、ふと出来心でメールボックスを覗いてしまった。受信メール:0、送信メール:0。ダーは来たメール来たメール消すくせがあるので、なーんだつまんねえの、と、携帯を閉じかけて、「未送信メール」に目が止まった。普通、あんまりないでしょ、未送信って。でも、ここまで見ちゃったんだしーと、見ると・・・あったよ。三件。二件は仕事関係らしきメール。だけど、4月26日付け(つまり私が大阪にいっていた時)になっているメールの内容はこうだった。
「今、店を出て、気づいたらカードなくしちゃったみたい。メールアドレス教えてー。いつ大阪に帰るの?それまでにデートしよーやー(はぁと)」
私、急速冷凍。
携帯を持つ手が震えてくる。指先が、しびれる。
いや、でも内容からして、水商売のおねぇさんにちょっかい出してる内容だ。でも、でも!でも!!私のいないときってのが気に食わん。
シャワーを浴びているダーに、かわいく聞いて見る。
「ねー。リカが免許とりにいってる時、寂しかった?」
「うーん。でも、毎日電話してたし☆えへ☆」
「ふーん。浮気せえへんかった?」
「うん。なんで?」
「べっつにー!」
イライラした私は、もう一度メールをチェック。間違いねぇ。未送信とは言え、デートってどう言う事よ。
今度は携帯を持って話しかける。
「本当に浮気しなかったの?」
「うん。(ドアを開けて)どうしたん?」
「じゃぁ、これなによ!!」
と、携帯を差し出す。もちろん、そのメールを表示させて。
ダーは濡れた手で携帯を受け取って、メールを見て、考え込んでる。
「未送信やけどな。」
「未送信やろ?水商売のねぇちゃんのやつやで。」
「そうやけどー。ふーんだ!!デートしてくれば!?」
と、すっかり拗ねてしまった私。ゆるせん。
でも、こんな事で取り乱すのもかっちょ悪いので、黙ってTVをつけ、黙って一服し、黙って昨日塗ったネイルのはみ出した部分を削る作業を続ける。
しばらくして、ダーがお風呂から上がってきて、ばたばたと何かしてる音が聞こえるけれど、私はそちらを振り向かない。否、振り向けない。顔が作れないから。
ダーは、私の事をちらちらと気にしながら(気配でわかる)、忙しい朝の用意をする。ダーも、私に声をかけられずにいる。きっと私があんまりにもポーカーフェイスなので、私が怒ってるのか、悲しんでるのか、水商売のねぇさんだからと納得したのか、わからないでいるのだろう。
悩め悩め。
ダーが出かけなくてはいけない時間になった。
ダーが遠慮がちに「行ってくるね」と、座りこむ私の顔を後ろから持ち上げて、額にキスをする。私は無言で、そのまま送り出そうとしたけど、ちょっと意地悪をしたくて、だまって玄関までついていく。
ダーが、少し嬉しそうな顔で、「行ってきます」と、今度は口にキスをする。私は無表情を崩さずにそれを受け止める。ダーはまた困惑顔。
玄関を出る時に、ダーは朝刊をポストから抜いて、私に手渡す。私は、思い切り作り笑顔で「いってらっしゃい。」といってドアをしめ、速攻で鍵とチェーンをかけ、新聞を床に投げつけた。
バシーン!!
うそつき!!うそつきうそつきうそつき!!
誠実ぶりやがって!!
やっと少し泣きそうな気持ちで、でも、泣きはしない。
黙々と朝ご飯を作って食べる。
10時過ぎ、ダーから電話。いつもより早い。
いつもはすぐに出るけど、今日は少し出るのをためらう。このままでないでいようか。でも、出た。
「もしもし?」いつもとは違ってローテンションで切り出す。ダーは、戸惑っているのか、一呼吸置いて「起きてたんか。」と言う。
「うん。」
「そうかそうか。大丈夫?寝てないんでしょ?」
「寝る。」
「そうか。・・・・・ご飯は?」
「食べた。」
「そうか。昨日かったパン?」
「うん。トマトソース作って。」
「そうか。・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
「じゃあ、寝て、起きたら電話して。」
「・・・うん。」
「じゃあね。」
「はい。」ぶち。
いつもはハイテンションで「じゃーお仕事がんばってねー☆車気をつけてー☆ばいちゅっちゅー☆むちゅ☆むっちゅ〜☆むちゅむちゅ☆」なんて続けるんだけど、今日は速攻切る。

そうやっていつもと違う事を繰り返して、ちくちくダーに意地悪をする。
嫌な女だ。でも、いらいらして、せずにはいられない。
以前も、勝手にメールチェックをして、怪しいメールを発見して、その時は勝手にメールチェックした自分が恥ずかしくて、何も言えずに一人で泣いて、ダーにどうしたの?と問い詰められて、白状して、勘違いだって解って、「ごめんなさい、もうこんな事しません」って言ったのに。
同じ事繰り返してる。
でも、ダーだっていけないんだ。プチ浮気しようとしてた。
まぁ、そんなに腹立ってないけど。というより、何も考えないように心がけてると言った方が正しい。考え出したらどつぼにはまるし。
ダーはずるい。上手くごまかそうとする。真剣に。それを見ていると、騙されてやらなきゃいけないと、本当に思ってしまう。彼の壁だ。その壁を崩すと彼はだめになってしまいそうだ。というより、自分の恥部をあばいた私を許さないだろう。だから、私は騙されてやる。
目の前の俺だけを見ろと、彼は、無言で私に言ってしまっている時がある。それは彼自身も気づいていないだろうが。
私はいつも目の前の彼だけを見る。視界の端にちらつく嘘を黙認しながらも。彼はいつも、私の前では完璧に私にぞっこんなのだし。

・・・島田しんすけは正しかったです。
2002年06月28日(金)

宝物 / リカ

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