親友M<第二話>

さて、第二話の始まり始まり〜。
水商売でがっぽり稼ぐ事にした私達は、まず、カッコから入る事にした。
化粧なんて、まともにした事ないというMに化粧をして、女らしい服がないというので服も貸して。私達はまるで今からパーティに出かけるようにわくわくしていた。
店は、二件ピックアップした。一軒目は時給がいいところ。二件目は、時給安いけど、こじんまりとしてそうで、楽そうなところ。
とりあえず、時給がいい店に電話すると、すぐ面接という事になった。
で、面接に行ったら大はずれ。セクキャバだったのだ(爆)時給いいはずだ。新地のホステス並にキメキメだった私達は、安っぽい張りぼての店の中で明らかに浮いていた。それでも、世間知らずで好奇心旺盛な私達はワクワクして、初めての異世界を楽しんでいた。それを店の人に悟られないように二人ともつんとしながら。
で、入り口すぐの事務室で、面接官を待っていた。事務室は、チラとみた、妖しい雰囲気満載のフロアとはうってかわって殺伐としていて、ちょっと安心できた。ふとみると、事務室には高さ10センチほどの小窓がついていて、フロアを見渡せるようになっていた。私達はそこからちらちらと妖しいフロアを覗き見ていた。すると、いきなり大音響で、パラパラ(その当時でも廃れていたのに)が流れ、事務室にいたかーなりダッサイ系のおやじ店員(に見えたが、たぶん30くらいだろう)が、小窓からフロアを見ながら、マイクで「ハァァ〜ッスルタァ〜イム!!!」と、DJ風にがなった。
唖然とする私達をよそに、おやじ店員はなれた口調で「皆さん、ハッスル、ハァッスル、ハァァ〜ッスルしてますか!?待ぁちに待ったハッスル・タイム!!はい女の子達ぃ!ハッスルしてくださぁい!!」といった。小窓をちらりと覗くと、よく見えないが、どうやら女の子がお客さんの膝に乗ってハッスルしているようだった。「みなさぁ〜ん!!今日もじゃんじゃんバリバリたぁのしんでくだっさぁ〜っい!!はぁい!ハッスルハッスルゥ〜!!」おやじ店員DJ風味はそこまで言うと満足したのか、パラパラにあわせて微妙に腰をクネクネして踊りだした。はっきり言って、「おやじ・店員・DJ風味・パラパラ・微妙なノリの踊り=ハッスル」はキモイ事この上なかった
私は、ふき出しそうになるのをこらえながら、下を向いて、プルプル震えた。Mを見ると、Mも同じだった。私は、Mのわき腹を小突いた。するとMはこらえ切れなくなって、ゲラゲラ笑い、ハッスル係りの店員に睨まれ、慌てて「もう!リカちゃん!私脇腹弱いからさわらんといてよー」とごまかしていた。私もそれに便乗して笑った。気持ちも落ち着いて、笑いが止まったMに、「胸騒ぎの腰つき♪」といって、また二人でゲラゲラ笑った。

軽く面接をして、一日体験入店というのをやる事になった。その日の給料もくれると言うので。まぁ、客に付くわけじゃないけど。
準備室に通され、いかにもってかんじの変なセーラー服を渡された。漫画好き(ヲタではない)のMは楽しげだった。で、着替えてる間、私達はお互いのカッコウを見て爆笑しあった。鏡をみると、なるほど滑稽だ。特に、新地のホステス風に塗った真っ赤な口紅がセーラー服にまったく合っていなかった。ブレザータイプの制服を渡されたMは、「もっとかわいいやつがいいな。リカちゃんのやつ、まだ『イカニモ』ってかんじがいいけど、私の、中途半端に本物臭くて、でもこんな制服ありえへん感じがいや。」なんてぶつくさ言っていた。「でもさーめっちゃ大人メイクやのに、ロリなセーラー服って組み合わせ、顔と姿があってなくて、まるで漫画の『AKIRA』にでてきた子供やわ。あ、あと楳図かずおの『赤ん坊少女』に出てきた、タマミちゃんとか」「不気味って言いたいわけ?」「そう。でも言っとくけど、あんたに言われたくないで。Mと私がゲラゲラ笑ってると、マネージャーが、ノックして「着替えました?」と言った。Mは「怖いわー」と言いながら、笑っていた。私達はどきどきしながらフロアに出た。

・・・どきどきの体験入店はまた明日。

2002年03月27日(水)

宝物 / リカ

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