英国留学生活

2002年06月22日(土) Ntional Gallery

今日は不意に引きこもり生活に飽きて、(引き篭もり≠勉強してる)
午後に外出してきた。まず、ソーホーで日本食を食べる。
別名ゲイストリートのOld Compton Stと、
日系のお店が並ぶBrewer Rdのぶつかった辺りの
Satumaというお店。日本食というより、創作日本食だが、
結構おいしくお勧めのお店。

来週末にビザが切れるのでパリへ行くチケットを取る。
JapanCentreというロンドン在住日本人留学生が
一度はお世話になるお店(?)。日本食、書籍、旅行代理店、
日本語がインストールされたインターネットカフェ等がある。
しかしそこでおまけに渡されたTimeOut、よく見てみたら
Spring号だった。・・・意味ないんですけど。
途中レスタースクエアのオデオンシネマの前での
指輪の囁きを振り切って更に南下。
ネルソン提督と高島屋のライオンで有名なトラファルガー広場へ。
トルコ人サポーターが巨大な旗を掲げて騒いでいる。

その正面がナショナルギャラリー。
入って左手がウェスト・ウィング、その手前の小さな展示室で、
いつも小さな特別展(無料)を行っている。
今日は、ゴールデン・ジュビリーに伴って、エリザベスの肖像展。
以前、ここでファン・エイク展を観られた。

西翼はコレッジョらの後期ルネッサンス、マニエリスムに始まる。
ここでのお気に入りは、2点。
アーニョロ・ブロンズィーノの「聖母子と洗礼者ヨハネ」
この画家は隣の「愛のアレゴリー」の方が有名だが、私は前者の方が好き。
瑕瑾なく冷たいほどに整った聖母マリアの顔が美しい。
「愛の寓意」はアフロディーテとエロスが口付けを交わしている絵で、
仮面・体が鳥の少女・時の翁などの寓意が散りばめられている。
あのエロスの体勢は絶対に背骨が折れているはずだ、と思う。

もう一つはパオロ・ヴェロネーゼの「アレクサンドロスの前のダレイオス一家」
これは主に主題が好き。ペルシャ王ダレイオスの老母が、
勝者アレクサンドロスの前に引き出された時に彼と彼の腹心の
ヘファイステイオンを取り違えてしまう。慌てる老母にアレクサンドロスが
「気にすることはない。この者はもう一人のアレクサンドロスだから」
と声をかけているシーン。
構図としてはその隣の窓辺の聖女の絵のほうが好きかも。

西翼を更に西に行くと、セインズベリー翼という増築された棟に着く。
ここの作品が最も古いものだが、個人的に一番好き。
Room51にあるダ・ヴィンチの「岩窟の聖母」。
ルーブルにあるヴァリアント(同題異作)の方が評価が高いようだが、
こちらの天使の方が切れ長の目の妖艶さという点では上ではないかと思う。
そして、その裏の小さな暗室。
「聖母子と聖アンナと洗礼者ヨハネ」の素描。私の一番好きな絵だ。
初めてこの絵を見たときに、一緒にいた友人がポツリと
「やっぱりこの人天才だわ」と言ったけど、正に。
最近は印刷技術も発達して、小学館の世界美術全集などは
かなり綺麗なものになったけど、このカルトンの色味は
まだまだ出せてない、と思う。青みが強く出てしまっている気がする。
その奥には日本人に人気のボッティチェルリやラファエロの聖母子像も。
そして、クリベリ。
偏執狂的な緻密な装飾と、聖人とは思えない妖しい美貌を描き出す。
「甘美なる遠近法」と言ったのはブルネレスッキだったか、
この人も陶酔しているような構図を描く。
マリアや聖ミカエルの冷艶な目付きといったら。
そして、この翼の突き当りには「アルノルフィニ夫妻」
ファン・エイクの傑作で夫婦の背後の凸面鏡に映る姿まで、描かれている。
しかしこの夫婦、特に旦那の方、夜道で出会ったら一目散に逃げる容貌だ。

一旦西翼まで戻り、ノース・ウィングへ。
かなり北側の部屋にフェルメールとデルフト派の絵がある。
昨年、地階の展示室で「フェルメールとデルフト派」展があった。
企画者の意図はわからないが、同じような主題の作品を一室に集めていた。
−富裕なオランダ市民の家庭、遠近法を際立たせる市松模様の床
窓から差し込む日の光−同じモチーフを扱っていても、
フェルメールの絵は際立っていた。
仄かな熱さえ感じさせるような、澄明な光のせいだろうか。
近くにはレンブラントの部屋がある。
他、中央ホールの北側を横切るような形の回廊には
ルーヴェンス、カラヴァッジョ、エル・グレコ、ベラスケスなど。
バロックやヴェネツィア派の絵画だ。
ヴェネツィア派の絵画は鮮やかなピジョンブラッドやコバルトブルー
の対比が特徴。だがここのグレコの枢機卿の絵は保存状態の問題か、
常のどろりとしたような質感のある紅ではなくて、残念。
カラヴァッジョの絵は肉厚で、結構優等生な絵だと思うので、
友人を賭博の場で刺殺して、流浪の生涯を終えた本人とのギャップがある。
ここのベラスケスのイエスは好きではない。
プラド美術館の彼の「磔刑のイエス」は素晴らしいと思う。
闇の中に浮かぶ、俯いた死せるイエス。酷く静謐だった。
なんでこんなに、イエスの描き方が違うのだろう。

最後、イースト・ウィング。印象派を中心とした近代絵画。
北側から入るとアングルやドラクロアのロマン派と新古典主義。
Room42の小さな(15X20?)アングルのスフィンクスが好き。
そこを抜けると、モネの「ポプラ並木」や「サン・ラザール駅」などの
馴染みある優しい絵が並ぶ。スーラの「アニエールの水浴」もだ。
先日、比較文化の勉強会していたときに友人が、スーラの点描は
Representationがどうとか、言っていたな・・・。
印象派ではピサロの思いっきり牧歌的な絵が好きだ。

そして、中央ホールへと戻る。
この隣に売店があるけど、スライドは地階に行かないとない。
いよーに長い日記になってしまった。


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