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2004年03月26日(金) ■ |
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永遠の森 : 博物館惑星(菅浩江)読了 |
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●読了:永遠の森 : 博物館惑星(菅浩江) 内容(「BOOK」データベースより) 地球の衛星軌道上に浮かぶ巨大博物館―"アフロディーテ"。そこには、全世界のありとあらゆる美術品、動植物が収められている。音楽・舞台・文芸担当の"ミューズ"、絵画・工芸担当の"アテナ"、そして、動・植物担当の"デメテル"―女神の名を冠した各専門部署では、データベース・コンピュータに頭脳を直接接続させた学芸員たちが、収蔵品の分析鑑定・分類保存をとおして、"美"の追究に勤しんでいた。そんな部門間の調停をつかさどるのが、総合管轄部署の"アポロン"。日々搬入されてくる物品にからむ、さまざまな問題に対処するなかで、学芸員の田代孝弘は、芸術にかかわる人びとの想いに触れていく…。至高の美とはなにか。美しさを感じる人間の感情とは。―星雲賞受賞の俊英が叙情性ゆたかに描く、美をめぐる九つの物語。
おもしろかった。【果しなき旅路 : ピープル・シリーズ(ゼナ・ヘンダースン】に続いて、これもソフトSF。「美」がテーマということで、話の舞台になる未来の博物館の展示物(人、物)をめぐる九つのエピソードが、連作短編集の形でつづられる。読みながら頭に浮かぶビジュアルイメージがものすごく美しかった。ファンタジックで叙情的な美しい部分と、頭脳に端末を生め込んだ「人間コンピュータ」な学芸員たちという電脳的な描写が、違和感なく1つの文章に同居しているのが面白い。 学芸員たちの日常生活は不思議で面白くて、ちょっと怖かった。コンピュータから離れたくてももう切り離せない存在って・・・。主人公の学芸員、田代孝弘のキャラクターが私的には微妙なところ。嫌いじゃないけど、あの鈍さには近親憎悪が掻き立てらしてイライラしてしまった(特に後半)。読みながら感じる人間の息遣い、その湿気みたいなものはさすが日本人作家のSFだなと思った。どの話もそれぞれ良かったけど、「享ける形の手」と、後半は孝弘と美和子のラブストーリーのところが特に印象に残った。 この本とは何年も前からすれ違ってたのに、もっと早く読めば良かった! SFと言っても「サイエンス・ファンタジー」って感じなので、SFは読まない人、ファンタジーな人も普通に話に入れると思う。
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