戯言、もしくは、悪あがき。
散る散るミチル
ミチルは果てた
充電切れたら
今夜も寝逃げ

2009年04月23日(木) ファンファーレ

きみが
まぶしくて
死んでしまうと思った
町中の雑音が
いっせいに降ってきて
ぬめぬめとしたからだの
目も口もないいきものが
まぶたのうえにとまって
視界を青にしようとした
けど
きみが何の気もなしに
高らかに放った声がしとめた
夕暮れの残骸が
つよすぎて

きみを知った顔をする世の中の
おとこやおんなやあらゆるものたちが
ある朝とつぜんカーテンを開けるより早く
一瞬の閃光の攻撃をうけて
膝から崩れ落ちたらいい
もうこれ以上ないというほど
うちのめされて
貼り付いたような黄色の朝焼けに
塗りこめられてしまったらいい
遠く離れた場所で
わたしが勝手につむぐ
きみが主役の物語は
ひどく醜悪で不恰好だけれど
知った顔をする
わたしを
打ちのめしたいよ
たぶん
絶望が足りないんだ

仕事にどうしたって飽きてしまう午後
あらゆる現実を
ロマンスとしてつくりかえたら
すれ違うばかりの見知らぬ人たちの
かなえられない欲望が全部降ってきて
ノートパソコンのディスプレイいっぱいに
文字化けした
なにも魅力的じゃないのに
目がはなせなくて
解析した結果が
ぜんぶ自分だった
ばかげてる
結局のところ
わたししかいなかったんだって
ふとんをかぶって
眠るでもなく
途切れてしまった物語を
反芻していたら
シーツからたちのぼるなつかしいにおいに
吐き気がしたよ
なにもないんだって
思い知らされるばかりで

窓枠だけの世界に
飛び込んできた翼が見える?
かすみがかった屋上のサンシャイン
間抜けな赤いライトが告げる
本日も平和でしたのサイン
飛行機は無事成田に降りました
ただ遠くへいきたかった

きみを知った顔をする世の中の
わたしというわたしを
全部打ちのめしたい
縦横無尽に走る閃光が
あらゆる信号を破壊して
青に変わる瞬間を待つ車たちが
どこまでも列をつくった
それが地球の裏側まで
ぐるっとつながっていって
退屈なら隣の人に
触れたらいい
体温だけで生き延びる
そのぐらいのたくましさは
みんな生まれつき持っているんだから

まぶしくて
死んでしまうかと思って
きみを閉じ込めた
閉じ込められたのは
わたしだった
なんて
ばかげている
ばかげているから
息ができるんだって
呼吸が聞こえて
ようやく目を覚ます
いまにも歩みをとめそうな
この世界にあって
わたしたちはこんなに
歩いてきたんだ

遠く
サンシャイン
閃光がまっすぐに
わたしを貫くように
窓をいっぱいに開け放って
きみの温度を
思い出そうとする

ぜんぶたしかにあった
ことだ
きみの温度
気道に通して
味わいつくしたあとに
手放す
町中が目に見えない速度で
ふるえてそして
かろやかにジャンプした
抱きしめたいよ
そして
空気に溶け出したきみが
いっせいに鳴り響く
ファンファーレ
歩いていくんだ
わたしがわたしであるとき
すべてきみへの祝福だから
わたしたちはまだ
歩いていくんだ


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