地平線の丸く沈んでいく夜 姿の見えない虫が途切れずに鳴いている 葉の小さいぶんだけ 精一杯腕を伸ばした木々が 貝殻でできた楽器のような音を立てる やけに大きな月だけが すべてをひとつにつつんでいる
うずくまっているすぐ近くで 誰かと誰かの話す声がする 知らない言葉だけれど とても楽しそうだ 静寂は 内側にある
わたしたちはみんな 幸せになるために出会う それだけで充分だ 生み落とされたものが 結局なんだったのか これぽっちもわからなくても
きみのてのひらに いまあるものを 祝福したいとおもった
ここはとても穏やかで まるで嘘みたいで 意味もなく吐き出したひとりごとが なかなかとけていかないので かき消すみたいにパーカーを抱きしめると その音がちゃんと耳を通り 体中のくだをすり抜けて やがて赤い土の底に沈んでいく
信じたいことが ひとつじゃなかった それを恥じないと決めた
全ての息を押し出して 新しい風を深く吸い込む 祈っている いつも まるい夜空に 砂のようなひかり 違う空を重ねて 足りない瞬きを拾い集めて 抱きしめると 爪にぶつかってかすかに響くので 整ってはいない指さきで なだめると ちいさなあかりが 小指のさきにともった
貝殻の楽器の さざなみみたいな お祭りの終わりの音がする ル ディ ル ディ そうだね いつかは
もうしばらくはこの空の下で 眠りにつく
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