2004年12月29日(水) |
降りそぼる雪の坂みちを |
父が亡くなった。 最初の入院からたったの1年半だった。 今日の午前2時に死亡の確認をして、遺体を引き取って、 葬儀場の一室に寝かせてあげて、お線香を上げてうとうとして、 朝、買い物に外に出たら、雪が降っていた。 昨日までは雨さえほとんど降らなかったのに。 前が見えないほど降りしきっている雪と、そのしたの街を見ながら、父が降らせたんだなあと思った。 そうじゃなかったら、空もかなしんでくれているのかもしれないと思った。 誰も、それは、事故だったとは言わないけれど、たしかにもう治ることのない病気ではあったけれど、でも、自分を責めようと思えば、いくらでもできた。 でも、冷え切ってぴんとはりつめた空気と、雪に閉じ込められた静寂の中で、とても落ち着いて、父を見送ることができたような気がする。
あのひとは、最後まで、大黒柱だった。 家族の誰よりも痩せてしまっても、動くこともままならなくなっても、私たちの中心にいて、ずっと、励まし続けてくれていた。 誰よりも最初に病気を受け入れて、私たちの心配もひっくるめて、自分の身に背負ってしまった。
発病してから、前よりもずっと強く、父と、母と、このひとたちの娘でよかったと思った。 もうどこにもいない、触れることも、話すことも、見つめることもできないけれど、でも、やっぱり、いる。
もう一度山に行かせてあげたかった。 自分の足で坂道を登って、登って、その先に広がる青空と雲のなかで、思い切り深呼吸させてあげたかった。 それから、お土産話をいっぱい、聞かせてほしかった。
ひとの命って本当に、とても不思議だ。 とても儚くて、とても強くて、つづいていく。
どうか安らかに眠ってください。 いつかもう一度出会えたときに、胸を張って笑えるように、わたしはわたしにできることを、せいいっぱい、やるだけだ。 おやすみなさい。ありがとう。
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