星降る鍵を探して
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2003年09月03日(水) 星降る鍵を探して4-2-3

「――梨花!」
 つられて振り返ると、確かにあの飯田梨花が、廊下の向こうから駆け寄ってくるところだった。
 飯田梨花は流歌と剛を見て一瞬顔をほころばせたが、すぐに表情を険しくした。あっと言う間に駆けつけてくると、流歌の顔を覗き込む。梨花は流歌よりも背が高い。十センチ近くも高いところから険しい顔で覗き込まれ、
「どうしたの」
 と厳しい口調で言われた流歌は、驚いたように目を丸くした。
「え――何が?」
 きょとん、とした顔で梨花を見上げる。梨花は、しかし何も言わなかった。まじまじと流歌を覗き込んで、ややあって、ホッとした、というように笑みを見せる。
「――ん、何でもない。元気そうで良かった。何もされてない?」
「うん。梨花も無事で良かった」
 流歌はそう言って微笑んだ。その笑顔があまりにも無防備なのを見て、剛は梨花に嫉妬した。


「それにしても、よく会えたよね」
 三人で歩き始めてからすぐ、流歌が梨花を見上げてそう言った。梨花が頷く。
「あたしね、十階を目指して降りてる最中だったの、上から降りてきたら流歌の声が聞こえたから。須藤さんと十階で待ち合わせしてるんだよね、今何階だっけ」
「ここは十二階だよ。お兄ちゃんと連絡とれたんだね」
「そうなのよケータイに電話があってね、そういえば電話がかかってきたの流歌からだと思ってたんだけど出たら須藤さんだったんだよね、流歌ケータイどうしたの?」
「取られちゃった。てことはお兄ちゃんが取り返してくれたのかな」
「そうなんだろうね。早く合流しないと」
 聞いていると、目が回りそうだ。
 三人で歩き始めたと言っても、剛の前を女性二人が並んでおしゃべりしながら歩き、剛は黙って後からついていくという格好だった。女性の、しかも親友同士の会話というものは、こういう状況にも関わらずとても盛り上がってしまっていて、もはや口を挟む気も起こらなかった。どころか二人の会話を追うのすら剛には難しかった。何しろ二人の話題は次から次へと移り変わりすり替わりしながら止めどもなく続いていくのである。一体女性と言うものはこの変幻自在な会話をきちんと理解しているのだろうか、と剛が呆然と思いを馳せている前で、二人は次々と会話を続けている。それはまるで二色の音が奏でるよどみない音楽のようだ。もはや意味のない音のさえずりにしか聞こえない。そのさえずりが耳の中を撫でていくのをぼんやりと感じていた時だった。
「そう言えば、ねえ流歌、清水さんとずっと一緒だったの? 誰かに見つかってない?」
 飯田梨花の声が急に頭に飛び込んできた。自分の名前を呼ばれたことで脳が覚醒する。うん、と流歌が頷くのを何となくこそばゆく感じていると、梨花が言った。
「そう? ならいいんだけど……あのね、須藤さんがこんなことを言ってたの。須藤さんのところに、敵のひとりから電話があって――『警告だ、ひとり見つけたぞ』って、言われたんだって」

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す、すみませんすみませんすみません。
話が先に進みません。
あーもう!


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