星降る鍵を探して
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2003年08月26日(火) |
星降る鍵を探して4-1-10 |
卓はマイキの、艶やかな髪に触れた。 もし怖がられたらどうしようかという、心配は確かにあった。でも今はそんなこと、構っていられない気分だった。もし怖がられても、厭がられても、マイキを。 と。 卓の腕の中で驚いたように息を止めていたマイキが、一瞬体をこわばらせた。そしてぱっと卓の腕を振りほどいて立ち上がった。そのあまりにきっぱりとした拒絶の動きに、卓は一瞬ぽかんとした――そして、愕然とした。愕然としながら、やっぱり、という気分がわき起こって、彼は自分の心臓が音を立ててぎゅっと縮んだのを感じた。 しかし。 立ち上がったマイキは卓を見ていなかった。卓の背後、先ほど梨花と一緒に上がってきた階段の方を見ていた。そして次の瞬間には、きっ、と卓に視線を戻した。いつになくきっぱりとした動きで卓の腕を掴むと、存外強い力で引っ張った。 早く来て、と言っているのだと悟るのに一瞬かかる。 その一瞬の間に、こつん、と廊下の向こうで音が鳴った。 (人が……!) 卓は即座に立ち上がった。ずきりと肋骨が痛んだが、今はそれどころではない。何やってんだ俺は、と、マイキと一緒に走りだしながら思った。ここは敵陣のまっただ中なのだと先ほど思ったばかりだと言うのに。 走りだすや廊下の向こうで数人の足音が沸き上がる。こっそり忍び寄ろうとしていた奴らが、気づかれたと知って大っぴらに追いかけてくるのだ。先ほどの経験から言えば、たぶん銃を持っているだろう。暗がりの中で助かったと思いながら、卓は頭上を睨んだ。この廊下には明かりがついていない。ボイラー室ほどではないが、ものの輪郭を見極めるのも困難な程度には充分暗い。どうしてあいつらは俺たちがここにいるのに気づいたのだろう、と思いながら、卓はマイキを見下ろした。マイキは転ばないように一生懸命走っている。小さな頭が揺れている。先ほどの拒絶の身振りは、あいつらの接近に気づいたからだよな、と、前方に視線を戻してそう思った。俺が抱きしめたのが厭だったとか、そういう理由じゃないよな? 追われながらもそんなことが気になってしまうなんて、俺も結構呑気だよなあ、と卓は思った。
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ま、こうなるだろうとは思っていましたが。 ……いやあの、昨日ここまで書いていたら、絶対すごいことになっていたと思うんですよ。そういうテンションのときって、ありますよね?(ない?) 一夜明けてみたら昨日のを読み返すのも恥ずかしい。はう。 これで1節は終わりです。何か節がめちゃくちゃになっているので(まだ1節だったということを忘れてました……)、サイトアップ時に直します。
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