星降る鍵を探して
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2003年08月20日(水) |
星降る鍵を探して4-1-5 |
疑問がいくつかある。 まず一つ目、これは流歌の携帯電話なのに、なぜ俺が持っていると知っているのか。 次に二つ目、そもそもなぜ流歌の携帯電話に電話をかけてきたのか。 そして三つ目。これが一番重要だ。なぜ、流歌の携帯電話の番号を知っているのか? 『圭太。いるんだろ』 考えている内に再び呼び捨てにされて、圭太はため息をついた。 「……いるけど」 『けど?』 「いないと言いたい」 桜井はため息を吐くみたいにして笑った。 『だろうな』 昔の通りの、ちっともおかしくなさそうな笑い方。 ああもう、声を聞くだけで腹が立つ。 何のためにかけてきたのだろう。早いところ終わらせて電話を切りたかったが、こちらから話の接ぎ穂を与えてやるのも業腹で、圭太はただ黙って桜井の次の言葉を待った。切ってしまうことは出来なかった。再びかけてくるのは目に見えている。 ややして桜井は、からかうように言った。 『聞かないのか』 「何を」 『なんで流歌の携帯にお前が出るとわかったのか、とか』 圭太は一瞬考えた。それは確かに先ほど浮かんだ疑問だったが、素直に聞いてやるのは絶対厭だ。 「……取り返されたって部下から連絡があったんだろ」 よく考えれば答えはこれしかなかった。しかし、 『ご名答』 桜井が楽しそうに言ってくる、その揶揄するような響きが癪に障る。 『それじゃあ次だ。なぜ――』 「もういいよ」 圭太は軽口を続けようとした桜井の言葉を遮った。これ以上こいつにつきあっていたら気が狂いそうだ。 「何の用だ」 怪盗マスクの裏で呼吸を整えて、訊ねた。呼吸を整えたのは、万が一にでも声に感情をまじえてはならないと思ったからだ。苛立っていることを悟られてはならない、というのは、七年前から良く知っていることだった。こちらが厭がることは何でもしたがる男なのだ。最悪だ。 少しは粘るかと思ったが、しかし桜井はあっさりと用件を言った。 『警告を』 「――?」 『してやろうと思ってさ』 声が、わずかに深みを帯びる。 ――警告? 圭太は耳を澄ませた。桜井の様子を少しでも聞き取ろうと、息を詰めて、目の前の薄闇を睨み付けた。電話の向こうで、桜井はきっと笑みを浮かべているのだろう。酷薄な笑みを。……あの時と、同じ。 『ずいぶん大勢の友人を巻き込んだみたいだな』 桜井の声が次第に深みを増していく。 『お前の身のこなしはそりゃあ大したもんだよ。お前と流歌なら大阪城の金の鯱だって盗めるだろう。万年人手不足の俺たちじゃ、お前たちはそりゃ手強い相手だ。……けどな、お前の友達にまで、手を焼くと思われちゃ困る』 電話の向こうで、桜井が、はっきりと笑った。圭太は思わず、それが誘いだと知っていながら、声を出した。 「何が言いたい」 『警告だ。ひとり、見つけたぞ』
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告白しますが、実は桜井さんがよくわかりません(おい)。
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