星降る鍵を探して
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2003年06月27日(金) 星降る鍵を探して3-3-1

  3節

 その頃の新名卓。卓と、克と、圭太は、ようやく研究所にたどり着いたところだった。
 こちらは正面から突破するという手段は当然のことながら取らなかった。卓としては剛が連れていったというマイキがとても心配で、まどろっこしい手段など取っている気分ではなかったのだが、急がば回れという格言もある。素直に塀を乗り越えて裏庭を突っ切り、裏口にたどり着くと、やはり鍵がかかっていた。兄は手袋をはめた手でしばらく鍵の具合を探っていたが、圭太を振り返って闇の中でニヤリと笑った。
「こう言うときにはやっぱり怪盗のお手並みを拝見するべきだと思うね」
「そうですね。鍵のかかった戸口を開ける楽しみを他の人に譲るわけには行きません」
 圭太は冗談ともつかぬ口調でそう言って、扉の前に立った。卓はどきどきしながら辺りを見回した。人影はないが、やはり、こんなところを見とがめられたらと思うと。
 と、扉の前に立ったばかりの圭太がくるりとこちらを振り返った。
「開きました」
 きい、と扉が開く。
「……早っ!」
「どこで覚えたんだ、そんな技術」
「なにしろ怪盗ですから」
 圭太は事も無げに言って研究所の中に踏み込んでいく。しかし生まれたときから怪盗だったわけではあるまいに、と卓は思ったが、兄が納得したようだったので何も言わなかった。世の中にはそっとして置いた方がいい事柄というものが確かにある。

 しばらく、三人は無言で進んだ。
 辺りは真っ暗だった。先ほどからずっと暗闇の中にいるのでいい加減目は慣れているのだが、それにしても心細いことこの上ない。それにしても、と卓は思う。それにしても、これだけの規模の研究所だ。裏口とは言えれっきとした入り口の付近くらい、常夜灯をつけておきそうなものだけど。すると、卓の思考を見透かしたかのようなタイミングで、圭太が振り返りもせずに言った。
「この辺は一般には使われていない場所ですから、人は来ないけど。気を付けてくださいね」
「何に?」
「使われてない?」
 兄弟の言葉が見事に同時に放たれた。だが内容は全く違う。ちなみに言えば卓の問いは前者だ。圭太はやはり振り返りもせずに、言葉を継いだ。
「俺が狙ってるのは「人には言えない研究」だと言ったでしょう。この辺はそれが行われている区画でね、一般の職員は立入禁止になってる。……で、何に気を付けろと言うかと言いますと、罠があるかも知れないからね」
「罠?」
 研究所内に? と思った疑問をすくい上げるようにして圭太は肩をすくめた。
「この辺には一般の職員は来ないわけで、罠をかけても善良な人は引っかからないんだよ」
「だからって仕掛けなくても」
「何しろ相手は桜井さんだから」
「あー」
 納得の声を上げたのは兄だ。
「あいつならやりかねない」
「でしょう」
「どんな友達なんだよ……」
 卓は呆れた声を上げた。兄と桜井の関係は車の中で聞いていた。大学の同級生だったということだが、人をさらった上に研究所内に罠を仕掛けかねないなど……さすがは兄の友人だと言うところだろうか。


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現在3時。三時間も遅刻しました。同居人を高田馬場まで迎えに行って来たのです。夜の東京は空いてて好き。


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