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■新聞紙は意外と暖かい。
2000年11月09日(木)
渋谷駅のホーム。読んでいた雑誌をごみ箱に投げ込む寸前に
横からぬううっと手が出て雑誌の向こう端を掴まれた。

「どうもありがと」

速攻でホームレスと分かる婆さんが僕の手から雑誌をひょいっと
すくい取り、にまあ〜っと笑って紙バッグの中に入れた。

路上で一冊100円で売るのだろう。50円ぐらいもらっておけばよかった。

僕は某駅前のホームレスの顔ぶれにはちょっと詳しい。
なんの役にも立たないけど。

ちょっと前まで駅ビルに勤めていたのでそこ近辺に巣食う常連ホームレスを
よく見かけていたし、彼らを追い払う役目のビル警備員さんからも
いろいろな話を聞いていた。

顔が垢で真っ黒で強烈に臭い通称「クロ」

駅通路でクラウチングスタートからの全力疾走をやってる「スポーツおやじ」

本人自身推定50代なのに定期的に推定80代の母親が仕送りに来る
「チェリー(吸ってる煙草がチェリー)」

などなど強烈なキャラも少なくない。
しかし、いつまでも彼らを見ていられる訳ではない。

死ぬから。

これから寒さがキツくなる。ホームレスには年寄りも多いので
冬を越せない人達もいるのだ。

ある日僕がふと、警備員さんに

「そういえば最近『クロ』、見なくなったね」

と聞いたところ

「ああ、あいつはXX病院で死んだそうですよ」

聞くところによるとそういう人達が運ばれる病院というのは
大体決まっているらしい。彼らは路上かその病院で死ぬのだろう。

僕だってちょっと寝るところがあるだけで彼らと大した差がある訳ではない。
生きていくのに必死なのは変わりがないのだから。

今日もアリガトウゴザイマシタ。

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