人生事件
−日々是ストレス:とりとめのない話 【文体が定まっていないのはご愛嬌ということで】 日記一覧|past|will
彼とお揃いの指輪を買った。 彼のはシンプルに、私のは0.05カラットのダイヤ入りで。 私たちは店員に、指輪が2つ並ぶ、開けると『寿』と書かれた赤い指輪ケースを手渡され、「1週間ほど着けていただいて今一度サイズの確認をして、サイズ直しをした後で指輪の内側に日付、またはイニシャルなどをお入れするようにいたします」と説明された。 「はい」と神妙に頷いた私に、店員は「奥様の指輪は少し緩いのようなので、落とさぬよう気をつけてくださいね」と言った。 確かに10号の指輪は、私の左手の薬指でくるくると軽く回る感じだった。 しかし今度は『奥様』と称されてびっくりしてしまい、返事はつい、気の抜けた「はあ」になってしまった。 彼の年齢を重ねた容姿からしたら、もう結婚していておかしくないのだろう。私だって、24歳なのでそれなりの容姿だ。2人でいたら、年は離れていても夫婦に見えるのだろう。 店員の言葉に触発されたのか、ふたりきりの家の中で指輪のはめっこをしていたら、彼に小さな声で「奎佐の両親に挨拶に行きたいんやけど」と言われた。 「いつ?」聞いた私に、彼は「今年中か来年か」と言った。 「私、2〜3年働いてからじゃないと嫌だよ」「分かっとる。でも、挨拶だけは」 彼の緊張が伝わり、私の心臓が早鐘を打ち始める。 「うん・・・じゃあ、ぼちぼち、それとなくお父さんに話しておく・・・会うのは、来年の春くらいをめどに」自他共に認めるファザコン娘で、「お父さんみたいな人と結婚したい」と幼少の頃から言い続け、だけどそんな父と似ても似つかぬ人を好きになったことを父にどう話せばいいのか思いつけぬまま、私は頷いた。 そんな私に、彼が言葉を重ねた。 「会うって考えただけでもめっちゃ緊張するけど、奎佐が欲しいんや」 どうしようもないほど歓喜する心のどこかで、戸惑い未来に不安を覚える自分がいた。
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