人生事件
−日々是ストレス:とりとめのない話 【文体が定まっていないのはご愛嬌ということで】
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2002年03月25日(月) |
佐々木(仮)家の人々 |
佐々木(仮・以下略)家の長女に男などいない。ましてや大阪なんて遠いところに住んでいるような悪い虫などついていない。月によっては16歳年上になってしまうバツイチ男性などとは付き合っていない。今年社会人1年目になる娘の方が、数年後には男の収入を軽く上回りそうな相手など選んでいない。絶対に、ない。 佐々木家の父は、そう思っている。娘の趣味を信じている。
佐々木家は父・母・長女・次女で構成される4人家族だ。東京都下の戸建てに住んでいる。 佐々木家の父は、娘たちを溺愛している。娘に殿方から電話があれば、受話器の口元を抑えずに、「早めに切るんだぞ」と渡してくれ、酔っ払うと「かわいいでちゅねー」と娘の頭をなで、「今日は少し遅くなるから」と連絡しておいても、食事の最中に「帰るときには駅まで迎えに行ってやるから」と電話してくる、そんな父。娘に現金はくれないが、愛情だけは胸ヤケするほど与えてくれる、温かい父。 そんな父を敬愛して止まぬ長女の動向が、1年ちょっと前からおかしいことに、家族はみんな気づいている。そしてそれを、みんな知らないふりをしている。 以前の長女は旅行に行くのであれば、「誰々ちゃんと誰々ちゃんと何処何処温泉に何々しに行って来るー♪」と報告していたのに、「ちょっとそこまで行ってくる」と外泊するようになったのだ。「ちょっとそこまで」が大阪だったりすることは、新幹線や高速バスのチケットを食卓の上で目撃していても、誰もが行き先を知らないことになっている。 長女は20歳を過ぎた成人。しかも、今年で25歳になるいいおとなだ。例え、短大でただけでは飽き足らず、卒業してから1年間ほぼ親の金でブラブラ都内で一人暮しをし、その後大学3年次編入していたモラトリアム症候群に片足突っ込んでいるような長女も、この4月からは公務員になる予定の社会人1年生だ。 父は成人したら子どもに干渉しない、と常々宣言していたので、長女の動向が少しばかりおかしくなっても、何も言えない。自分で決めた方針に逆らえない性格なのだ。 けれど、気になる気持ちは抑えられない。 だから、長女にそれとなく聞いてみた。「旅行、誰と行くんだ、友だちとか?」 長女、満面の笑顔で答えた。「うん、そんなようなもん」 父は、その笑顔に何も言えなくなった。用意していた言葉が、空しく喉の奥にしまいこまれた。「そ、そうか・・・気をつけて行ってこいよ」 それが、父と長女の、3日前の最後の会話。
「父よ、私は今朝方無事に帰宅いたしました」(長女談)
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