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2016年01月27日(水) U23代表、五輪出場決定

<リオデジャネイロ五輪最終予選兼U−23アジア選手権:日本2−1イラク>◇準決勝◇26日◇ドーハ

U23日本代表が準決勝でイラクを下し、五輪リオ大会出場を決めた。筆者があまり期待していなかった世代の快挙である。手倉森監督以下同チームの選手及び関係者に心から敬意を表したい。

今回の五輪予選は一国開催方式(カタール)で、グループリーグ予選を勝ち抜いた8チームがトーナメント方式で勝ち上がらなければならない。一発勝負のトーナメントではなにがおこるかわからない。そんななか、準決勝に勝利して五輪出場を果たしたことは偉業に近い。戦績を見ると、予選リーグで北朝鮮(1−0)、タイ(4−0)、サウジアラビア(2−1)と連勝し、決勝Tでは120分でイランに3−0、そして準決勝でイラクに2−1と5連勝である。東アジア、東南アジア、中東勢を満遍なく撃破しており、向かうところ敵なしのようにもみえる。

なかで最大の難関は準々決勝のイラン戦だった。90分間イランに試合を支配されながら0−0で粘り、スタミナが切れたイランを延長で突き放した。後半の終盤近く、相手決定的シュートがバーに当たる幸運にも恵まれたが、こういう大会では結果がすべて。「もし…」という論法は成り立たない。勝ちは勝ちなのだ。

ここのところ、A代表がアジア杯でベスト8どまり、東アジア選手権で全敗とアジアで苦戦していただけに、若い世代が結果を残したことは喜ばしい。しかし、課題も見えている。その第一は攻撃陣。A代表に影響を与えるような卓抜した素材が見当たらない。どの選手も平均点に達しているが、とびぬけた輝きを放った選手がいたかというと、そうでもない。

U23日本代表チームは対戦相手のアジア諸国に比べて、戦力、体力において平均点で上回っていたと換言できる。このことはもちろん大事なことなのだが、タレントがそろう中南米、欧州、アフリカが参加する世界大会においては苦戦する。このことは全世代の日本代表にいえる。すべての世代で現状レベルから進化を遂げないと、アジアで勝てても世界では…といういつもどおりの結果で終わる。

第二は、同じことの別表現にもなるが、ここまでの対戦相手のレベルが相当低いこと。前出のとおり難敵のイラン、苦手のイラクにしても、サッカー技術の洗練度があまりにも低すぎた。スピード、パワー、高さ、フィジカルでは日本を上回った両国だったが、決定力がなかったし、決定機をつくる戦術的訓練がなされていない。これらの傾向は、アジア各国の経験の浅さからくるのではないか。国家レベルの育成システム、所属クラブチームのそれ、あるいは大学といった育成インフラが未整備なのだろう。当然、実戦経験も少ないのでないか。日本チームには欧州クラブに所属する選手もいたので、彼らの経験が外国でのセントラル開催方式に耐えられる気力・体力を維持できた要因かもしれない。

結論は、下のカテゴリーの代表チームがアジア予選を勝ち抜き、五輪代表出場権を得たからといって、この先、日本(A)代表が安泰だとはとてもいえないということ。たとえばイラン戦の延長で2ゴールしたMF中島翔哉(背番号10)だが、イラク戦では、得意とする左サイドからゴール前に切り込んでシュートという形を読まれ、クリーンシュートを一本も放てなかった。引出しがあまりにも少なすぎる。期待されたMF遠藤航(3)もこれといって印象に残るプレーはなかった。またスーパーサブで期待された浅野拓磨(16)も得点にからめなかったばかりか、見せ場すらつくれなかった。

反対に期待がもてるのはDF陣で、CBの植田直通(5)、岩波拓也(4)らには安定感があった。植田、岩波ははやくA代表で経験を積んでほしい。

もう一つは、なんといっても監督の手倉森誠の手腕である。厳しいスケジュールの中、試合ごとのターンオーバー方式の選手起用や、各試合中における的確な選手交代といった采配はほぼ完璧だった。

また、バングラディッシュ合宿や自らの3.11被災経験を選手に語るといった、技術面よりも精神面の指導に重きを置いたとの報道もあった。恵まれすぎた日本の若いサッカー選手たちがアジアの実態を肌で知ることは、彼らの精神性を大きく変えたに違いない。


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