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2015年05月22日(金) 絶妙、阪神・鶴岡一成の好リード

阪神が5月19−21日の読売との3連戦(甲子園)に2勝1敗と勝ち越した。阪神のカード勝越しの主因は、2戦目からマスクをかぶったベテラン鶴岡一成のの好リードだった。初戦は若手の梅野捕手が先発して0−8の大敗。2戦目は梅野に代わってマスクをかぶった鶴岡が、先発藤波を好リードし1−0の勝利。3戦目も鶴岡が新人投手・横山を好リードし、2−1の逆転勝ち。藤波、横山の両投手の頑張りももちろんだが、鶴岡捕手のリードの良さが目を引いた。

大田を抑えた鶴岡の頭脳

第2戦、第3戦の読売の安打数はそれぞれ2安打、8安打。2戦目、読売の各打者が阪神先発・藤波に手が出なかったのだが、なかで凡打の内容が最も悪かったのが大田。鶴岡捕手は、読売が攻撃の中心へと期待する大田に対し、絶妙の配球をした。

藤波は右投手。150キロ台の速球が武器だ。鶴岡捕手は大田に対し、大田のウイークポイントである外角ボールゾーンに外れるカーブ、スライダーで空振りをさせ、追い込んでから、内角ストレート(1打席)、外角ストレート(2打席)、外角スライダー(3打席)で、3打席3三振に仕留めた(4打席目は代打を出され大田は交代)。

大田は内角を怖がっている

そのときのCATV中継の解説者は掛布雅之。掛布によると、大田が外角のボールになる変化球に反応して手を出してしまう要因は、大田が内角の速い球を怖がるからだと解説した。この指摘は、さすが元プロ野球選手として実績を残した掛布ならではのもの。筆者のような素人には考えもつかない。さすが、そうなのか。

内角球を怖がるから、外側の緩い(変化)球に手が出てしまう――納得である。この指摘を引き延ばして想像すると、大田を潰すには、彼の頭部めがけて速球を投げ込めばいい――ということになる。もちろんそんな行為は許されないし、やってはいけない。故意の死球は傷害罪だ。だが、他球団(投手)の大田対策として、大田の懐(内角)をスピードボールでつく配球は許される。そうすれば、大田は恐怖心から、外側ボール球になる変化球にさらにとびつくような打法を繰り返すに違いないと。逆に言えば、大田は内角球に対する恐怖心を克服しない限り、3割打者にはなれない。

新人投手・横山の大田封じ

筆者は大田のバッティング・アイ(欠陥)については、何度か拙コラムにて指摘した(読売の「新生」は失敗に/2015/03/03、故障者続出―問われる読売の選手健康管理/2015/03/15)。大田は25%の打者であると。そのことを証明するかのような内容が3戦目で見られた。

3戦目の阪神先発投手はルーキーの横山。彼は左腕で150キロ近い速球を武器とする。大田と阪神バッテリーの対決を詳しく振り返ってみよう。

大田は第1打席、初球の内角ストレート(ボール)を見逃した後、2球目のクロスファイヤーにつまって二直。2打席目は外側変化球攻めで三振。3打席目は内角中心に攻められた挙句、外角ストレートを見逃し三振。4打席目は外側変化球攻めで追い込まれながら、大田が粘って7球目の外側変化球をひっかけ、ぼてぼての三遊間安打。図らずも25%の結果だった。もっとも4打席目のヒットは内容的には阪神バッテリー(横山―鶴岡)の勝ち。大田にはラッキーな結果だった。

大田は、左投手に対しても外側のボールになるようなカーブ、スライダー、フォークには積極的に手を出し、空振りかファウルでカウントを稼がれる。このような大田のバッティング傾向は、右投手と対したときと変わらない。もちろん全打席外側中心であれば大田に踏み込まれるので、内角攻めも必要となる。横山の場合は、3打席目の大田に対し、内角中心の攻めに配球構成を変え、内角直球→真ん中カーブ(スイング)→外角カーブ(スイング)→内角直球(スイング)で三振に仕留めた。このあたりの工夫が鶴岡捕手の好リードたる所以となろう。

大田封じは、懐から外の出し入れで

大田の欠点は明らか。大田を崩すには内角速球が必須の要件となる。次に、外角ボールゾーンからストライクゾーンに近いボールになる変化球(カーブ、スライダー、フォーク、チェンジアップ)が必要。もちろん内角・外角のどちらも投手にはコントロールが求められる。内角速球が真ん中あるいはアウトハイにコントロールミスすれば痛打される。外側変化球も真ん中のストライクゾーンに入ってしまえば、大田にとって絶好球になる。

こうして総括すると、左投手の場合の内角攻めは、右投手よりもリスクが高いように見えるが、私見では大田は左投手が投じる懐に近いゾーンに向かう球筋のほうが、右投手のシュート系で内側に食い込む球筋よりも、バットが合わないような気がする。その根拠は、前出の掛布雅之の解説のとおり、大田は内側に恐怖心をもっているからだが、筆者はそう確言するほど、大田の打席を見ているわけではない。

大田は何度も繰り返すが25%の打者。現在のような30%を超える打撃成績は攻め方が悪いから。他球団のバッテリーも、阪神の鶴岡捕手のリードを参考として、読売のトップバッター大田を封じてほしいものだ。


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