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2015年06月16日(火) 読売野球の劣化、原監督を更迭せよ

交流戦で失速したDeNAと読売

日本プロ野球では、読売の調子が悪い。交流戦後半の3カードで1勝8敗。ソフトバンク、ロッテにスリープを食らって完全失速のまま、交流戦を終えた。ところが、セリーグ2位のDeNAが読売以上に調子が悪く、9連敗で交流戦を終えようとしている。そのため、セリーグの首位は依然読売のまま。

交流戦で読売がパリーグ球団に負け越しても、セの他球団もパの球団に負けているので、順位に変動がない。その結果、首位読売の貯金は2、勝率515だ(6月14日現在)。同じく2位DeNAは借金1、すなわち勝率5割以下。首位・読売と最下位・広島(勝率444)とのゲーム差は4.5にまで縮まった。いわゆる団子レースとなり、優勝争いはいよいよ予断が許されなくなった。

筆者の開幕前予想順位は、セリーグが広島、パリーグがオリックスだったので、現在のところ、ともに最下位と大幅に外れている。パリーグのオリックスは首位との差14.5ゲーム差なので優勝の目はなくなっただろうが、セリーグは広島が首位に立つチャンスもなくはない。

阿部慎之助、1B→捕手→1Bと迷走中

読売のチーム状態は最悪に近い。野手陣では、阿部、村田、片岡、寺内、金城が故障。長野、橋本、セペタが絶不調。急きょ補強したフランシスコも調子が上がらず、登録に時間がかかりそう。トレードで放出した矢野が移籍先の日本ハムで大活躍とはなんとも皮肉だ。投手陣は、菅野、内海、西村が登録抹消中だが、開幕前の補強がうまくいって、いまのところ大崩れの心配はない。防御率はリーグNo1だ。菅野は交流戦明けから復帰の見通しが立っている。

その阿部の1B(一塁)への再コンバートが発表された。とはいえ、捕手に戻ることは絶対にない、といいながらの先の捕手カムバックだったから、この先、再々捕手転向もあり得る。原監督の「ない」は「ある」と同義語だ。

読売不調の主因はいうまでもなく、野手陣の打撃低調に尽きる。筆者は読売の高齢化をずっと指摘し続けてきたし、「阿部限界説」「内海限界説」は開幕前の拙コラムに書いたが、残念ながら、この予想は的中しそう。

阿部の場合はその兆候が2013年のポストシーズンには出始めていて、2014年は成績を落とし、今シーズン開幕前に1Bコンバートが決まった。阿部が現役選手としては危険水域にあるという認識は、筆者だけでなく、球団も同じだった。つまり、阿部の1B転向は自然な選択であって奇策ではない。

阿部の下手な1B守備は読売の足を引っ張る

このシナリオの崩壊は阿部の1B守備のまずさが発覚して狂い始めた。読売寄りのスポーツマスコミは、相川故障で「非常事態」と喧伝したが、誤報だ。正捕手候補・小林が思った以上の成長を示せなかったこともあるが、表向き相川の故障を建前として、阿部1Bコンバートを原監督が断念したのは、阿部の守備のまずさから。となると、今後の阿部は、打撃面及び守備面を併せた総合的能力において、アンダーソンらと正一塁手の座を競うことになる。アンダーソンの守備もたいしたことはないが、阿部がアンダーソンの守備を下回り、打撃面でも実績を示せなければ、代打要員となろう。

阿部の1B守備はなぜ、上達しなかったのだろうか。もちろん、練習不足から。それ以外にない。今シーズンキャンプ、阿部は故障で守備練習に十分取り組めなかった。コンディションも万全ではなかった。つまり、阿部は1Bでも(もちろん捕手でも)万全でないままシーズンインしてしまった。

阿部は1Bでも、捕手でも身体ができていなかった。激務の捕手なら、なおさらのこと。コンディションの整っていない阿部を捕手に戻した読売首脳陣の非情采配(選手起用)及び選手の健康管理に係る不手際は、非難されてしかるべき問題だ。

阿部の1B守備でのつまずき、加えて相川の故障、小林の力不足というトリプルパンチに見舞われた4月3日の時点で、読売は何をなすべきだったのか。阿部を1Bにおいておけば、内野守備の崩壊により試合を落とす確率が高くなる。相川不在の捕手陣は、小林、実松、加藤の3人体制で、これまた脆弱極まれる。ならば、相川が復帰するまで阿部を捕手に戻す以外はない――このように書くと、いかにも切羽詰った状況に思えるが、まだまだシーズン序盤のこと、焦る必要はなかった。

挙句、原監督の焦りが阿部を壊し、チーム状態は最悪のまま、交流戦を終えた。交流戦では相川は打撃好調を維持したものの、成績は7勝11敗で順位は下から2番目。セリーグの首位、2位が交流戦のワースト2チームだ。読売はセリーグの順位では首位を辛うじてキープしたものの、勝率は5割すれすれまで落ちた。つまり、阿部の捕手復帰から得るものは何もなかった。

内野手を育てられない原辰徳、今季で監督退任が筋

セリーグは交流戦でパに大幅に負け越した。しかも内容が悪い。短期戦とはいえ、実力差が明白になった。とりわけ読売はその脆弱さをさらけ出した。リーグ戦では相手にプレッシャーをかけて接戦で勝ってきた読売だが、交流戦では逆に相手にプレッシャーをかけられ、負けている。このことは何を意味するのか。

セリーグ弱体化の要因としては、DH制をしくパリーグのパワー・ベースボールの流れにセリーグが屈したこと、人気のセに対するパリーグの選手の意地、フィジカルの強い選手がパリーグに集まっていること…と指摘されているが、結局のところ、「巨人」人気に長年依存してきた結果だ。

FA制度に依存するセリーグは、ドラフト対策、育成方策、選手起用等に注力せず、峠を過ぎた選手を安易にレギュラー起用し続けてきた。広島、中日が育成重視に舵を切ったが、まだ道半ば。読売にいたっては、ドラフト対策に一貫性がなく、FAや自由契約で移籍してきた他球団のベテラン選手が若手のプレー機会を奪い、若手が経験を積むのを阻害してきた。一軍に上がって結果が出なければ、即座に二軍に落とされる。モチベーションもなくなる。とりわけ内野手を育てるのが下手で、ドラフト高順位でレギュラーを獲得した内野手は、坂本ただ一人。打てる内野手を育てられなかったことは、原監督の指導者としての限界を証明している。

たとえレベルの低いセリーグで読売が今シーズン優勝できたとしても、ファンは「原野球」に魅力を感じていない。原監督の早期退陣こそが、プロ野球発展に資することだけは間違いない。


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