Sports Enthusiast_1

2015年04月14日(火) 原監督、今シーズン捕手で阿部を使い捨て

プロ野球開幕後、4月12日で各チームの対戦が一巡した。注目の読売はホーム(H)でDeNAに2勝1敗(2−1)、アウエー(A)で中日に0−3、阪神に2−1(H)、広島に1−2(A)、ヤクルトに2−1(H)の通算7勝8敗の負け越しで、セリーグ4位となっている。いまの読売のチーム状態でこの順位なら「まあ、まあ」だろう。読売は各カード、ホームで勝ち越しているが、相手を圧倒したという印象はない。勝因は相手のミス(走塁、守備、采配とりわけ継投ミス)で白星を拾ったという感じ。

◎阿部は一塁守備が下手すぎて捕手に復帰

読売の掲げたスローガンは「新成」。その象徴が阿部の一塁コンバートだった。ところが、FAでとった相川の故障を機に、原監督は阿部をもとの捕手に逆戻りさせた。原はこの措置を「緊急避難的」とコメントしたようだが、真相はそうではなく、阿部の一塁守備があまりに下手だったことによる、と筆者は考えている。

阿部はキャンプ中に故障をしていて、一塁の守備練習を満足にしていない。そのため、内野としての一塁手に最低限求められるフットワーク及び野手からの送球捕球が満足にできない。阿部の一塁が続けば、読売は守備から破綻することは明白だった。

読売は、昨シーズンから顕著になってきたように、打撃で圧倒するチームではない。豊富な投手陣と守備力でセリーグを接戦で制してきた。とりわけ、内野陣は一塁(ロペス/横浜に移籍)、三塁(村田)、遊撃(坂本)、二塁(片岡・井端)の布陣でいずれも守備の名手たち。鉄壁に近かった。ところが今シーズン、その一角であるロペスが横浜に移籍し、その代わりに入ったのがコンバートされた阿部である。読売の守備力は数段劣化した。

開幕数試合で原監督は阿部のまずい守備に愕然とした。しかし、「捕手復帰は99%ない、小林を育てる・・・」と断言してしまった関係上、原は阿部を一塁から外すわけにはいかなかった。そのジレンマを解消したのが相川のケガによる登録抹消というわけだ。

◎阿部は「田淵」になれない?

原監督が阿部を一塁にコンバートした根拠は、強打者・田淵幸一のイメージがあったからだろう。田淵は捕手から一塁手(及びDH)転向して、自身の選手生命を伸ばした代表的存在だ。原は田淵の成功を阿部にオーバーラップしたはずだ。

その田淵の守備力だが、『がんばれ!!タブチくん!!』で漫画化されたことで明白なように上手ではなかった。しかし、筆者の記憶ではいまの阿部よりはましだったような気がする。

一方、田淵の打撃については、一塁手(及びDH)転向直後の80年にホームラン43本を放っている。以降、引退する84年までの本塁打数は、15本、25本、30本、14本を記録。打率こそ3割を超えなかったが、長距離砲の役割を果たした。ただし、田淵が一塁に転向したのは、パリーグの西武ライオンズ時代。田淵は一塁手のみならずDHも務めた。いま手元に田淵の純粋一塁手として打撃成績を示す記録がないのが残念だ。

いずれにしても、今シーズンは無理としても、この先、阿部が捕手から一塁手に徹したとしても、田淵ほどの成績を上げられる可能性は低い。田淵が転向した年齢は34歳、阿部は36歳(ともに大卒)。この2歳差が微妙なのだ。

◎阿部は近いうちに疲労で潰れる

そればかりではない。阿部を一塁にコンバートさせた張本人である原監督が、いまの守備力の阿部を一塁に戻すはずがない。阿部は、今シーズン中、捕手を続けるだろう。そうなると、阿部は近いうちに身体的疲労で極度なスランプまたは故障に悩まされる。つまり、阿部は一塁でも捕手でも使えなくなる。

もちろん原はそうならないように、例えば、〈火・水・金・土〉出場というローテーション起用で阿部を大事に使っていくだろが、それでも、前出のようにキャンプにおける練習不足及び激務の捕手復帰という二重苦によって、阿部は調子を崩す。つまり阿部は、原監督によって、今シーズン捕手として使い捨てられる

阿部が選手生命を伸ばす唯一の方策は、DH制度のあるパリーグ移籍だが、その実現可能性はまったくないので、今シーズンで引退するか来年はコーチ兼任捕手になるだろう。

◎新人投手がフルシーズン活躍できる保証はない

原監督の「新成」は意図とはずれて、投手陣で成功を見せたかのように思える。先発で高木勇人、田口麗斗、リリーフで戸根千明といった若手が台頭しつつある。うち高木と戸根は新人だ。しかし、この3投手がフルシーズン=長丁場にわたって好調を維持できるかは大いに疑問が残る。

◎厚い選手層で読売は3位確保か

読売の場合、それでも厚い選手層でこの先、盛り返せる可能性はある。現在の布陣を「読売Aチーム」とすると、「Bチーム」として、外野陣ではアンダーソン、橋本、大田、堂上が控えている。投手陣では内海、大竹、小山、西村、青木、香月がいる。内野陣と捕手は手薄だから優勝は無理だろうが、長いペナントレースにおいては、A⇔Bが交互に出てきて、5割を切る確率は低い。

総合的に考えて、読売は筆者予想の3位維持がやっとという条件ばかりが見えているのだが、他球団も読売に輪をかけて調子が出ていない。筆者が最下位と予想した中日がいまセリーグでもっとも安定しているという状況にある。筆者が優勝と予想した広島は、エルドレッドの故障の影響もあって、打撃陣がまるでだめ。阪神も外国人(ゴメス、マートン)が本調子ではない。ヤクルト、DeNAは投手力、とりわけブルペンが弱い。そんなわけで、セリーグは「貧打の応酬」のレベルの低い試合ばかり。

◎低めのストライクと飛ばない“公式球”

加えて、日本の主審が低めをきちんとストライクに取る傾向が強まった。ストライクゾーンは、「打者の肩の上部とユニフォームのズボンの上部との中間点に引いた水平のラインを上限とし、ひざ頭の下部のラインを下限とする本塁上の空間をいう。このストライクゾーンは打者が投球を打つための姿勢で決定されるべきである」と定められている。

ここで重要なのは、“ひざ頭の下部のライン”と規定された「低め」だ。日本の主審が低めをきちんとストライクに取れば、日本のプロ野球の投手のレベルと打者のレベルとを勘案すると、単打するのがやっと。本塁打等の長打は激減する。

さらに今シーズン使用の“公式球”が「飛ばない」という噂が広まっている。低めのストライク、飛ばない“公式球”となれば、今年のプロ野球は「投高打低」となろう。一般的には「投高打低」は「強打の読売」に不利といわれるが、いまの読売――投手王国の――ならば優位となる。今年のセリーグはこれまでになく混戦となる。つまり、筆者がBクラスとしたヤクルト、DeNA、中日にもチャンスがあるということだ。


 < 過去  INDEX  未来 >


tram