2015年04月18日(土) |
早くも、捕手・阿部は戦線離脱 |
(一)捕手・阿部は筆者の予想どおりの結果に
筆者が直近の当コラムにて、「阿部は近いうちに身体的疲労で極度なスランプまたは故障に悩まされる。つまり、阿部は一塁でも捕手でも使えなくなる。」と書いたが、そのとおり、17日の阪神戦で大腿部肉離れ(正式な発表はないが)で戦線離脱した。選手にとっての災厄なので予想が的中したことを喜べない。端的に言って、阿部は原監督に“潰された”。阿部は捕手に復帰して、わずか11日しかもたなかった。
◎読売球団にメディカルスタッフはいるのか?
阿部にとってのこの災難は、読売球団における選手のコンディション管理に係る杜撰さが根底に潜んでいる。この問題も以前当コラムにて指摘しておいた。2015年のプレシーズン、読売は多くの故障者を抱えていた。阿部もその中の一人だった。しかも阿部はメディア報道によると、捕手としての練習を一切していなかったという。そんな阿部を急きょ、「非常事態宣言」して捕手をやらせた監督も監督だが、球団のメディカルスタッフは何をしていたのだろうか。読売にはきちんとしたメディカルスタッフがいないのかもしれない。医療的見地から、選手を守る権限をもったスタッフの存在が・・・
当たり前に考えれば、阿部のキャッチャー起用は原監督の暴挙である。1)ピークを過ぎたベテラン捕手が一塁手にコンバートされた、2)プレシーズン、その選手は故障で一塁守備の練習を満足にしていない、3)もちろん捕手とは縁を切ったのだから、捕手の練習もしていない、4)そのような状態のベテラン選手を突如、捕手に逆コンバートしたら・・・
どうなるかについては、考えるまでもない。プロスポーツ選手ならば、故障するのが当たり前なのである。身体のメカニズムを甘く考えてはいけない。読売球団にスポーツ医療の知識をもっている者がいれば、そして、専門家の忠言を聞く耳を持った指揮官がいれば、阿部のケガは未然に防止できた。というよりも、阿部を捕手に戻すという暴挙は選択肢として出てこない。
◎現代のプロスポーツ界では医療スタッフは極めて重要
ケガや故障は人間なのだから仕方がない、という見方もある。もちろん、プロスポーツにあって、ケガ人、故障者を撲滅することは不可能である。だから、選手のケガ、故障を未然に防ぐために全力を注ぐのがチーム専属のメディカルスタッフの責務となる。彼らに課せられたもう一つの使命は、故障者、ケガ人を最短で現場復帰させることにある。
読売球団にあっては、世界の一流プロスポーツクラブが当然備えていなければいけない医療専門部門を、有していない可能性がある。読売球団は選手に「紳士であれ」と説教しているそうだが、プロスポーツクラブとしての備えのほうは、いかにも時代遅れのようである。
優秀なメディカルスタッフというのは、指揮官の選手起用について、適切なアドバイスをすることができる。指揮官はそれに従わなければならない。故障者を無理に起用して潰せば、球団(もしくは指揮官)に対して選手は訴訟を起こし争う可能性もある。そんなリスクを球団が避けるため、医療スタッフが重要な存在となる。選手は個人事業者であって、球団の奴隷ではない。日本のプロ野球界には、そんな意識は育っていないようだが。
(二)読売の「勝ちパターン」分析
さて、阿部が故障した試合、読売は阪神に3−2の僅差で勝利した。この試合は読売の勝ちパターンの典型だったので書き残しておきたい。
◎相手がミスを連発する
読売の先制機をつくったのは、1回ワンアウト後の2番片岡が、0−2という投手絶対優位から放った単打から。阪神の先発メッセンジャーの調子は悪くはなかった。しかし、本来ならばストライク勝負ではない場面でほぼ真ん中の絶好球を投じてしまった。不注意であろう。あるいは捕手のサインがストライク要求だったのかもしれないが、いずれにしても打たれてはいけない状況であることに変わりない。バッテリーのミスである。
続く三番は当たっている橋本。案の定、打たれて1塁3塁のピンチ。続く4番坂本は一塁ゴロ。阪神の一塁手ゴメスは、ホームに突っ込んでくる片岡を見ながら、バックホームせずベースを踏んでワンアウトを取ったが、片岡は当然ホームイン。先制点が入った。
阪神の守備位置は併殺狙いの中間守備。まだ初回なのだから、前進守備はない。坂本が放った一塁ゴロは平凡な打球で、楽々ホームでアウトが取れる。なぜバックホームしないのか。明らかなゴメスの判断ミスである。メッセにしてみれば、内野ゴロは三振と同じくらい“して、やったり”の投球である。にもかかわらずゴメスのミスでリズムが狂ったのか、メッセは以降投球が乱れ3失点した。
読売の勝ちパターンは多くが相手のミスに乗じたもの。読売の先発ポレダは2失点したものの、ブルペン陣が阪神の反撃を抑え、僅差で読売が試合をものにした。阪神の攻撃もいただけない。拙攻の連続で読売に白星を献上した感がある。こうした試合展開は昨シーズンの後半から続いている。
もう一つの読売の勝ちパターンは、相手にリードを許しながら、後半、相手チームの継投ミスから逆転するというもの。いずれも、先発及びブルペン陣が失点を防ぎつつ、相手のミスから勝利するパターンにかわりない。
◎名前で負けている相手選手
読売が「しぶとい」「勝負強い」という表現も間違ってはいないが、その一方、他球団の選手が「甘い」という表現もできる。筆者はもちろん後者だと感じていて、セリーグの5球団の選手がたいして強くない読売選手のネームバリューにプレッシャーを感じ、勝負所で力を出し切れないことにより、勝ちきれない結果だと思っている。
◎読売は大嫌い
読売の「強さ」は、何度も書くとおり、選手層の厚さにある。故障選手、不調選手を外しても、ファームからほぼ無尽蔵で有力選手が上がってくる。この試合でも、故障の亀井の代わりに上がってきた橋本が活躍した。前節の横浜戦では、ベンチだった金城が先発して決勝3ランを放って勝負を決めた。
筆者は、読売が嫌いである。その理由は、(1)若手を育てない、FA頼みの金満球団運営、(2)阿部の起用法にみられるように、選手を使い捨てにするチーム体質、(3)メディカルスタッフが機能しないような、非近代的球団組織体制――である。とりわけ2015年シーズンは、掲げたスローガンの「新成」をひっこめて、ベテラン頼みの打線を組んだばかりか、阿部のコンバートを貫徹せず、挙句は潰した読売に優勝してほしくない。もちろん、CSに出たとしても、日本シリーズには、行ってほしくはない。
読売にダメ出しができるのは、セの5球団が読売に勝つしか方法がない。だから、阪神もヤクルトも広島も中日も横浜も応援している。とにかく、読売にだけは優勝してほしくない。
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