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2015年04月03日(金) 「脱本田」が今後の日本代表の最重要課題

31日、東京にて行われた国際親善試合、日本対ウズベキスタンは5−1で日本が大勝した。バヒド・ハリルホジッチは監督就任後の2連戦で2連勝と幸先の良いスタートを飾った。

◎チュニジア戦に似た展開

日本は前半に青山敏弘(広島)が鮮やかなミドルシュートで先制点。後半に入ると、岡崎慎司(マインツ)が27日のチュニジア戦に続く2試合連続ゴールを決めた後、交代出場した柴崎岳(鹿島)、宇佐美貴史(G大阪)、川又堅碁(名古屋)が加点し、相手を突き放した。

この試合は前回の親善試合チュニジア戦とよく似た展開だった。前半は接戦で推移し、後半は相手ウズベキスタンの足が止まり、動きが鈍くなったところで日本の交代選手が得点するというパターンである。

◎先発メンバーはチュニジア戦を反転させた形

ウズベキスタンはW杯アジア予選を見据えての東アジア遠征中。27日に韓国代表と国際親善試合を行い、1−1で引き分けに終わっていた。ウズベキスタンから韓国までの移動を含めて、5日間で2試合をこなす日程はきつい。2試合目の日本戦、彼らの足が後半になって動かなくなったのは仕方がない面もある。ウズベキスタンと日本の実力差は得点差ほど開いていない。だから、本番(W杯アジア予選)では油断しないことだ。

ウズベキスタン戦の先発メンバーは、前の試合(チュニジア戦)を反転させたような形だった。岡崎、本田圭佑、香川真司といったブラジル組が先発したが、得点は前出のとおり青山のミドルシュートによる1得点のみ。

◎本田依存ならば日本は世界で勝てない

とりわけ本田は、新生日本代表の早い縦の攻撃になじめず、戦力として機能しなかった。この試合の本田のプレーぶりをみて、彼がミラノでブーイングに晒されている理由がわかるような気がした。自陣でボールを奪った後、バックラインの選手が本田にボールを預けると彼はゆっくりキープし、いい形をつくろうとする。ところがその間に相手チームは守備ブロックを敷いてしまう。ミラノサポーターが望んでいる形は、本田がドリブルで持ち上がるか、彼を追い越す選手に素早くさばく速攻なのだろう。いまのACミランには本田を追い越す労力をいとわない選手がいないことが悲劇であり、本田もそれを志向していない。自ずと攻撃にスピード感がない。本田が速攻を身に着けるには、年をとりすぎている。新生日本における本田の位置は危ういものがある。アジアで本田はまだ脅威かもしれないが、W杯本戦では機能しない。逆に言えば、日本代表が本田に依存しているようならば、W杯では勝てないということになる。

◎チュニジア戦、ウズベキスタン戦で見えてきたもの

結論を言えば、新生日本代表の力は、チュニジア戦と同様、前半に示されたということ。つまり1−0である(チュニジア戦は0−0)。前出のとおり、日本の唯一の得点は守備的ミッドフィルダーが放ったミドルシュートからのもの(この得点を偶然とは言わないが・・・)。

2つの親善試合の結果については、日本が奪った得点(45分・45分)が1、後半の各45分はアトラクション、日本の戦績は1勝1分で、しかも、その1勝は辛勝――とまとめられる。

親善試合については何度も同じことを書くが、結果は参考程度。ブラジルW杯、アジア杯の惨状から回復し、実力が上がったわけではない。

ただ、2本代表のサッカーの方向性が変わったことは認められる。変化した点を挙げると、第一に代表選手に競争意識が芽生えたこと、第二に堅守速攻型のプレースタイルを目指そうとしていること、第三にフィジカル重視になってきたこと――である。その結果、若手のモチベーションが上がり、代表全体にパワーアップが期待できるようになった。

◎勝つためには選手のモチベーションがすべて

スポーツに限らず勝負事に勝つために必要なのはまずモチベーションである。何事かをなした者と、これからなさねばならぬ者とではモチベーションに差ができて当然である。本田、香川、長友、内田、吉田、森重、長谷部、遠藤(すでに代表から外れているが)らのブラジル組がロシアに向けて再び辛い思いをしたいとは思わないだろう。彼らに多くは期待できない。

ただし、ブラジル組の中でただ一人の例外は岡崎である。彼はいい意味で「サッカーバカ」である。彼は常に闘争心とチームに対する献身性を失うことがない。岡崎のようなアスリートは稀であり、彼が今後の日本代表の精神的支柱となることを願っている。

◎アウエーの親善試合なら日本の実力診断が可能に

日本の実力を親善試合で計るにはどうしたらいいのかと言えば、これも繰り返しになるが、日本代表がアウエーで多くの試合をすることに尽きる。相手は、欧州ならばトルコ、アイルランド、ポーランド、ロシア等、南北アフリカならばエジプト、アルジェリア、モロッコ等、サハラ以南のアフリカ諸国はどこでもいい。中東・アジアならば、イラン、サウジアラビア、カタール、中国、韓国といったところ。南北中米はどこでもいい。もちろん、今回来日したチュニジア、ウズベキスタンとの再戦もおもしろい。日本がアウエーで勝てるかどうかを試してみるといい。

一つのメルクマールとして、W杯地域予選で勝ち抜けなかったり勝ち抜けたりを繰り返している国々も参考となる。もちろん、アフリカ、欧州、南北中米のどこかとは、W杯予選グループで対戦国となるし、中東及び東アジアは予選で必ず対戦するのだから、そのいずれの国とアウエーで多くの試合をこなしていけば、フィジカル重視に方向転換した「新生日本代表」の実力がわかりやすいのではないか。


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