2015年02月17日(火) |
2015年、日本サッカー展望 |
J1各クラブはいま、キャンプイン中。にもかかわらず、プロ野球に比べてキャンプ報道量が少ない、というかほぼゼロだ。元来ウインタースポーツのサッカー。この時期の北半球はサッカーシーズン真っ盛りのはずなのだが、なぜか日本ではシーズンオフ、プロ野球と並行してキャンプ中。しかも、報道の量ではプロ野球に負けている。だれもプロサッカーのキャンプに関心を払わない。これがJリーグの実情だ。
◎前後期制はJ1のガラパゴス化を加速する
2015シーズンから前後期の2シーズン制となったため、筆者にとって順位予想そのものが無意味となった。2シーズン制とは言うまでもなく、前後期においてスタートダッシュに成功したチームが優勝し、プレーオフで年間王者が決まるもの。Jリーグのガラパゴス化を後押しするような時代錯誤的制度執行だ。この制度は優勝争いが前後半1回ずつあり、プレーオフでさらにもう一度盛り上がりが来るという算段だろう。ファンが喜ぶ、冠スポンサーも付きやすい、全国ネットでTV放映もあるだろうから、サッカー人気が回復する――もちろんこれらは、Jリーグの取らぬ狸の皮算用だ。
2シーズン制のデメリットをここであげつらっても、手遅れなので書かない。とにかく、Jリーグは断末魔、救いようがない。よって、順位予想を行わない。
Jリーグについては当コラムで繰り返しているとおり、凋落傾向に歯止めがかからない。前出の2シーズン制も、Jリーグが広告代理店と組んで、冠大会を増やし、収入増及び人気回復を目論んだもの。ところが、肝心のコンテンツの向上が見込めない。才能のある若手がこれといって見当たらない。大物外国人選手の加入もない。昨年のように昇格したG大阪が4冠を達成してしまうような土壌のリーグだ。質の伴わないものを二分割したからといって、質が向上するわけではない。
◎JFA(サッカー協会)の無責任体制が代表弱体化の根源
バッドニュースが続く。「疑惑」の代表監督、アギーレの後任探しが難航している。代表監督というものはすっきりと決まることは少ないが、JFAはアギーレ招聘で失敗した役員の責任を問おうとしない。「疑惑の人」と契約した責任は会長、専務理事、技術委員長等にある。今回の場合、その全員が留任し、アギーレの後任探しをやっている。JFAに体質改善は見込めない。
そもそも、JFAはブラジル大会予選敗退の総括をしていない。報告書は作成したらしいが、担当(役員)者のだれがどういう責任をとるかについて、まるで明らかにされていない。後任探しの前に、予選敗退の原因を探るべきだ。JFAの支援体制は万全だったのか、親善試合の組み方、アウエーの試合数は少なくなかったのか・・・等の反省があり、その次に監督ザッケローニについての評価に及ぶべきであった。ザッケローニの功罪だ。それがきちんと済んだのちに、後任監督探しに入るべきだった。
JFAにおいては(報道によるとだが)、ザッケローニの後任探しについて、担当した役員の個人的嗜好に基づき、国籍から絞り込んだという。当時、協会の技術委員長兼専務理事のHがスペイン語圏の人材に執着したという。監督探しの方法論としては誠に奇異ではないか。
外見上、スペイン、メキシコのサッカーは日本と似たところもある。組織重視、選手は小柄、パス中心・・・だから、メキシコ代表監督を務め、スペインリーグでも指揮を執ったアギーレに白羽の矢が立った――という論理構成だろうか。
確かに、外見上、メキシコ代表と日本代表は似ていなくもない。だが、外見上、体格は似たりよったりだが、フィジカルの質において、日本選手はメキシコ選手に劣る。リーグの土壌も違う。そもそも、サッカーに対する基本的考え方が異なる。あたりまえだ。文化、風土が異なるのだ。
◎代表監督の要件
結論を言えば、代表監督探しというのは、日本人という素材を活かせる指揮官探しと換言できる。一般的な要素として、そのことをアンバンドリングすれば、▽代表選手という寄せ集め集団を短期間で束ねることができ、▽代表選手選び、選手起用の見極めができ、▽予選の戦い方、本戦の戦い方を計算できる――者ということになる。外見上の体格やプレースタイルが似ている国の指揮官ならば、日本代表とマッチするなどと考えるのは妄想に近い。 代表監督選びに国籍は関係ない。代表監督の専門的能力は、どんな国のナショナルチームでもよい成績があげられるということだ。オランダ人のヒース・ヒディングは、韓国、オーストラリアの代表監督として成功した。だからといって、もちろん彼は万能ではない。彼はロシアとトルコでは失敗している。
それでも、ヒディングは、代表監督としてじゅうぶんな能力をもった名将の一人だ。そのヒディングは、それぞれの国に自分の国、すなわち「オランダサッカー」を伝授したわけではない。就任したそれぞれの国に備わった素材(選手)を見極め、それを最大限活かすことに腐心した。その結果、韓国、オーストラリアでは成功し、ロシア、トルコではうまく運ばなかった。それがサッカーというものだ。日本では、トルシエ、岡田が成功し、ジーコ、ザッケローニ等が失敗している。
◎代表選手にも暗雲――人材払底
アジア杯では、長友佑都(DF)と本田圭佑(MF)が対照的な取り組みを見せた。全力でプレーした長友はアジア杯で故障し、イタリアに戻った途端、再度壊れ、長期離脱することになった。長友はアギーレに壊されたようなもの。彼は真面目な性格なのかもしれない。ブラジルの反省から、彼は全力でプレーすることで、日本のファンの声援に報いようとした。アギーレは自己保身から、4試合同じメンバーで戦い、運動量の多いSBの長友が被害者となった。
一方の本田は、アジア杯は明らかに手抜きをして、ミスを連発した。長友は全力プレーで壊れ、手抜きの本田はイタリアリーグで活躍するかと思いきや、低調なパフォーマンスを繰り返していて、約4カ月近くゴールから見放されている。15日エンポリ戦(ホーム)も得点なし。リーグでの連続得点なしはミラン加入後最長の12試合まで伸びた。手抜きの天罰か?
この二人に共通すのは、モチベーションが働かない、ということだろう。彼らにしてみれば、この道はいつか来た道に過ぎない。
◎伸び悩みが多い海外組
海外組としては、スイスリーグに柿谷曜一朗(FW)、久保裕也(FW)がいるが、二人ともレギュラーと控えの中間に位置する。レギュラー安泰というわけではない。
ポルトガルリーグの田中順也(FW)は好調が伝えられる数少ない海外組。今後の活躍に期待できる。
オランダリーグの宮市亮(FW)は完全な伸び悩み。
ベルギーリーグの川島永嗣(GK)はレギュラーから外れた。GKが一度、レギュラーから外れると、同一チームで復帰するのは至難の業。小野裕二(FW)もレギュラーになり切れていない。
ドイツ勢はどうか。ブンデスリーガ一部には、香川真司(MF)、内田篤人(DF)、岡崎慎司(FW)、酒井高徳(DF)、原口元気(FW)、細貝萌(MF)、大迫勇也(FW)、長沢和輝(MF)、長谷部誠(MF)、乾貴士(MF)、清武弘嗣(MF)、酒井宏樹(DF)が所属している。
中で、内田、岡崎、乾、清武、長谷部はいまがピーク。これ以上の伸ビシロはない。成長性があるのは酒井高徳だけ。筆者が期待していた細貝も年齢的にロシアは無理だろう。香川には期待がかかるが、はっきりしない。そのほかの日本人選手はほぼ消えているに等しい。
イングランドプレミアの吉田麻也(DF)はレギュラーの座を確保しているが、スピードがない。
こうしてみると、いまの日本代表のレギュラークラスを脅かしそうな新戦力は田中順也くらいか。それでも田中が本田を越えられるかは疑問。ことほどさように、海外組でレギュラーの座を確保できる選手が減っている。若手ではC大阪からオーストリア1部ザルツブルクへ移籍したFW南野拓実(20)の今後の成長に期待するしかなさそうだ。
「ロシアへの道」はお先真っ暗――と思うのは筆者だけか。
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