2014年10月12日(日) |
弱すぎるアギーレ・ジャパン |
サッカー日本代表がホームでジャマイカ代表と親善試合を行い、1−0で勝った。日本の得点は相手のオウンゴールによるもの。決定機は何度かあったしシュートも多数放ったが決めきれず、歯がゆい展開に終始した。アギーレが日本代表監督に就任して初勝利とはいうものの、とても手放しで喜べる試合内容ではなかった。
◎細貝、抜群の守備能力を証明
この試合で最も目立ったのはアンカーを務めたMF細貝。ミッドフィールドの潰し役に徹し、ジャマイカの攻撃の芽をことごとく摘み取った。モダンサッカーに求められる守備的中盤の役割を見事に果たした。ブラジルW杯において細貝が選出されていたら、日本代表の戦い方も変わっていたに違いない。細貝を代表から外したザッケローニが恨めしい。
GK西川、初めてコンビを組んだ塩谷、森重のCBは相手を完封したのだから合格と言いたいところだが、ジャマイカの攻撃陣が時差ボケで眠っているような試合だったので、この試合だけで合否を判断することは難しい。
◎時差ボケ海外組攻撃陣
攻撃陣に目を転じると、海外組のFW岡崎、FW本田、MF香川、SB長友はコンディションが悪いのだろう。本田は決定的得点機会を見事に外した。そんなわけで、これまた長旅で調整もままならないジャマイカの守備陣から得点を奪えないという恥ずかしい内容。前半は右SBの酒井高の攻撃参加を軸にしてそれなりに形をつくるものの、フィニッシュに至らなかった。いま売り出し中のFW武藤はシュートの正確さを欠いた。
唯一の得点は国内組のMF柴崎のゴールのようなもの。後半になると左に本田がまわり、左SBの長友が積極的に攻撃参加を繰り返したものの、得点には至らなかった。4−3−3のインサイドハーフに入った香川はこのポジションに適性はなく、香川をどう使うかは今後の日本代表の課題となりそう。
長旅でコンディションの悪いこの相手に、こんな試合内容ではとても期待できないアギーレ・ジャパン。イタリアで得点を量産しているという本田も日本代表では輝かない。ドルトムントで再起したという香川も居場所がない。ドイツの得点王という岡崎も決められない。海外組というだけで代表に選出されたFW田中、FW柿谷は海外に「いるだけ」の旅行者のようなもの。
ブラジル戦では日本代表に復帰したハーフナーに期待したい。それとも、Jリーグで結果を残している宇佐美を急きょ招集するしかないか。
◎アジア杯優勝は“ノルマ”ではない
アジア杯の日本の戦績を振り返ってみる。
1992日本大会=日本優勝(オフト監督) 1996UAE大会=日本ベスト8(加茂監督) 2000レバノン大会=日本優勝(トルシエ監督) 2004中国大会=日本優勝(ジーコ監督)優勝 2007インドネシア他大会=日本4位(オシム監督) 2011カタール大会=日本優勝(ザッケローニ監督)
日本のW杯の成績を振り返ってみる。
1998年フランス大会(加茂→岡田武史監督)は一次リーグ敗退 2002年日韓大会(フィリップ・トルシエ監督)はベスト16 2006年ドイツ大会(ジーコ監督)は一次リーグ敗退 2010年南アフリカ大会(オシム→岡田武史監督)はベスト16 2014年ブラジル大会(アルベルト・ザッケローニ監督)は一次リーグ敗退 1996年当時は、日本の最大の目標といえばアジア地区予選突破であった。1994年のW杯アメリカ大会予選では「ドーハの悲劇」をもってW杯出場の道を閉ざされた日本。そこから代表再建に向かった第一歩が96年アジア杯であり、その成績はベスト8どまりだった。日本代表再建の困難さを象徴する成績である。しかし、アジア杯ベスト8どまりということは、日本代表がそれまでの主力選手から世代交代もしくは代表選考の見直しがあって、代表チームの完成度が未熟であったことを意味するようにも思う。
1998年W杯フランス大会で予選敗退した日本を引き継いだのがトルシエ監督。トルシエは98年の代表チームを解体し、新メンバーを中心とした代表チームをつくり直した。その結果、2000年アジア杯優勝を果たし、かつ、そのチームが2002年W杯日韓大会ベスト16入りという快挙に直結する。ホーム開催の利もあるが、W杯予選敗退からアジア杯優勝、そしてW杯予選突破という、ほぼ理想的道筋を示した。 〔W杯予選敗退→アジア杯優勝→W杯予選突破〕
2004年のアジア杯は前監督のトルシエの遺産を引き継いだジーコ監督がW杯代表の主力を率いてアジア杯に優勝したものの、代表選手を固定して2006年W杯ドイツ大会に臨んだため、W杯では予選敗退の苦杯をなめている。 〔W杯予選突破→アジア杯優勝→W杯予選敗退〕
2007年のアジア杯は、代表監督に就任したオシムの初仕事がジーコジャパンの解体だったことから、チームづくりが難航した。オシムは応急措置として、アジア杯代表に千葉で監督を務めた往時の教え子を送り込んてアジア杯を乗り切ろうとしたが、アジア杯は甘くなかった。結果、ベスト4に沈んだ。 〔W杯予選敗退→アジア杯ベスト8→W杯予選突破(代表監督は岡田に途中交代〕
2011年のアジア杯に臨んだザッケローニは、2010年W杯南アフリカ大会の主力をそのまま送り込んで優勝をしたが、そのとき以来、主力メンバーの固定化による硬直化が常態化し、2012年W杯ブラジル大会では予選リーグで敗退している。 〔W杯予選突破→アジア杯優勝→W杯予選敗退〕
W杯→アジア杯→W杯の連動を見直してみると、W杯で不成績だった代表チームの解体過程にあるアジア杯では、良い成績が残せないことがわかる。一方、W杯で予選突破を果たしたチームを受け継いでアジア杯の臨むとアジア杯では良い結果を残すものの、肝心の3年後のW杯では予選敗退する確率が高くなっている。
アギーレ・ジャパンの場合はザッケローニ・ジャパンの解体からスタートしているので、オシムのサイクルに該当する。オシムもアギーレも新戦力の摸索が最優先の仕事である。日本代表の資格をもつ全サッカー選手のうち、W杯ロシア大会に向けて予選・本選を勝ち抜ける資質・才能を持った選手を見つけ出すのが最初にして最大の仕事ということになる。
アギーレ監督のここまでのところ、W杯ブラジル大会で代表になれなかった細貝を中盤の守備の要として見出している。このことは筆者が再三拙コラムで指摘していたことだ。細貝はアギーレ・ジャパンのポイントとなる選手の一人だろう。
最重要課題の一つであるCBは、ブラジル大会メンバーの一人である森重、新戦力として塩谷が注目選手である。今回、選考されなかったリオ五輪代表となりそうな岩波らも当然、A代表としてマークしていると思われる。
攻撃陣では、前出のとおり、FW武藤、FW宇佐美、MF柴崎らが新戦力であるが、MF香川、FW本田、FW岡崎、SB長友らを主力としてどこまで引っ張るか。新旧交代が今後の課題となる。
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