2014年10月05日(日) |
読売の優勝と菅野の故障について |
日本プロ野球(NPB)、セリーグは読売が、パリーグはソフトバンクがペナントレースを制した。筆者の予想はセが阪神の優勝、読売2位、以下、DeNA、広島、中日、ヤクルト、パリーグはソフトバンク、ロッテ、西武、オリックス、楽天、日本ハムであったから、1位は当たったものの、それ以外はまったくだめだった。シーズン前、オリックスには注目していたが、首位争いに絡むとは思えなかった。
阪神優勝の予想は筆者の願望であった。読売の優勝は、何度も拙コラムにて書いてきたとおり、豊富な戦力にある。読売は他の11球団と比較するならば、概ね2球団分の戦力を備えている。長いリーグ戦の場合、この戦力の豊富さがものをいう。2014シーズンもまったく同様で、レギュラーが不調、故障すると、代わりの選手がファームから上がってきて結果をだす。このことは原監督の手腕というよりも、ただただ、選手層の厚さゆえである。
読売の補強は有力戦力を自軍に入れてしまえば、他球団の戦力にならないという哲学に基づく。ほぼ2球団分の戦力を保持できるのは、それを支える財力の裏付けがあってのこと。かつてサッカースペインリーグのレアルマドリードが銀河系軍団と呼ばれたことがあった。有力選手を集め世界選抜と呼ばれたクラブはレアルマドリードだけではないが、レアルの場合、度を越して有力選手が集まったため、宇宙規模とまで評された。
読売の場合は、MLBに及ばないから日本に限定された話だが、日本選抜に近い選手構成である。それでも、シーズンは順風満帆ではなかった。9月の勝負所で阪神、広島を突き離し、驚異的な月間勝率でペナントを制した。それを可能にしたのは阪神、広島を上回る選手層の厚さである。
読売は、シーズン優勝、CS、日本シリーズの結果を問わず、FA制度を利用して他球団の有力選手を集めるだろう。とりわけ先発投手陣は駒不足。ファームから有力な新人が上がる予兆はまったくない。若手の伸び悩み、才能不足ははっきりしている。ならばFAで即戦力を集める以外に方法はない。読売の財力を駆使した選手集めを批判しても始まらない。読売の手法が自由主義経済と競争原理に基づくプロフェッショナル・スポーツ業界の常道なのだから。
読売の投手陣はシーズン最初から故障者続出だった。シーズンを通してローテーションを守ったのは杉内のみ。先発陣では前半、小山、沢村、内海、西村が故障、中盤に来て菅野、大竹(は2度)が登録を抹消され、再登々録された大竹が9月後半に、そして10月に入って菅野が「右肘靭帯の部分損傷」で戦列を離れた。菅野の場合は優勝を決めた後のアクシデントであったが、15日からのCSファイナルS、日本シリーズに進出した場合の登板も絶望的となった。
主力投手の故障の穴を埋めたのは、セドン、今村、江柄子、笠原、久保、香月、西村、田原、青木らのスクランブル登板だった。
そうこうしているうちに、沢村、内海、小山が復調。なかで小山は抜群の安定度をみせて読売の窮状を救った。CS及び(日本シリーズに進出できた場合)のローテーションは、杉内、内海、小山、沢村の四本柱が決まっているが、先発五枚は成立しない。 ブルペンは、山口、マシソンが本調子ではなく、マシソンは終盤、しばしば抑えに失敗している。
シーズン前、筆者は、(一)阿部限界説、(二)内海限界説、(三)山口・西村勤続疲労説――を唱えて、読売の優勝はないと予想した。結果は限界とは言い切れないが、その兆候は見え始めているので、筆者の予想が見当違いだったとは思っていない。
菅野については、彼の投球フォームを初めて見たときから、将来の故障の危険性を指摘しておいた。以下、当該コラムの原文を引用しておこう。
2013年02月22日(金)「読売・菅野智之投手のフォームに問題あり」
先般、菅野智之(読売)の紅白戦登板がCATVで中継された。練習試合の結果はともかくとして、印象としては、肘が下がっていて、ボールの回転が悪いように思えた。最近の松坂のようだ。 (略) 菅野の場合、ブランクの問題もあるが、なによりも問題なのは、投球フォームだ。フィジカル面の素質は高いと思われ、1〜2年は10勝前後稼ぐことができるかもしれない。しかし、このフォームでローテーション入りして投げ続ければ、30才前後に故障が起こる確率が高い。おそらく、彼の野球人生は短命で終わる。
読売のコーチ陣がフォーム改造を指示するかどうかだが、おそらく、何もしない。監督の甥を壊したらたいへんなことになる。ならば、彼自身がフォーム改造に取り組むか否かだが、そこそこの実績が邪魔して、それもしないだろう。1〜2年、いまのままのフォームで投げ続け、過剰な自信が慢心を招き、いずれ肘に疲労が蓄積し、パンクする。フィジカル的には逸材なだけに惜しい結果に終わらないことを祈るのみだ。
筆者は30歳前後に故障が起こる可能性を指摘しておいたが、故障の発覚は意外と早かった。医学の進歩により今回の故障が投手生命を終わらせるとは断言できないが、肘の故障は投手にとってやっかいなことだけは間違いない。早期の完治・再起を祈るのみだ。
|