2014年06月20日(金) |
日本、1人少ないギリシャに痛恨ドロー |
●1人少ない相手に負けなくてよかった
W杯ブラジル大会グループリーグC組第2試合、日本−ギリシャは0−0のドロー。相手に退場者を出しながら、日本は得点を奪えなかった。C組はコロンビアがコートジボワールに勝ったため勝ち点6でグループリーグ突破を決めた。負けたコートジボワールが勝ち点3で2位。日本とギリシャがそれぞれ勝ち点1(得失点差で日本が3位)。この結果、日本がグループリーグを突破する条件としては、第3試合の相手コロンビアに勝って、コートジボワールがギリシャに負けるというもの。可能性はゼロではないが、自力によるベスト16入りの可能性はなくなった。
●千載一遇のチャンスを逃した日本――退場者を出したギリシャを崩せず
それにしても残念な結果である。前のコートジボワール戦は先制点を奪いながらの逆転負け、この試合は相手に退場者(前半38分)が出るという絶妙な展開。日本は本大会、2試合続けてツキに恵まれた。相手が自滅に近い形で日本を有利にしてくれたのだから、勝ち点3を絶対に取らなければいけなかった。2試合続けての幸運をモノにできなかった日本――このチーム、よっぽど力がなかったとしか言いようがない。
ギリシャも頑張った。1人少なくなってから集中力が増し、持ち前の堅守の本領を発揮した。サッカーとは不思議なスポーツである。だが、いくらギリシャが持ち味を発揮したとはいえ、攻め切らなければいけない。前出のとおり、ギリシャに退場者が出たのが前半38分。時間はたっぷりあった。
1人少なくなったギリシャは中央を固める守備体形。そんなギリシャであるから、日本の左右のSB(長友、内田)はほぼフリーでスペースを使えた。クロスも上げ放題、ペナルティーエリア内への侵入もほぼフリーパス状態。長友、内田からのクロスはほぼ正確に配されたし、侵入によるチャンスも何度かあったが攻撃陣が決めきれなかった。
●場当たり的ザッケローニ采配――交代枠を残してのドローは納得できない
ザッケローニの采配も一貫性がない。この試合、ワントップでいい動きを見せていた大迫を下げ(後半12分)、いつもは右サイドでプレーする岡崎をワントップに上げて、不調の香川を左サイドに入れ、ここまで精力的に動いていた大久保を右サイドにポジションチェンジした。この形はW杯アジア予選や親善試合ではみたことがない。
終盤にはCBの吉田を上げてのパワープレーだったが、これもW杯の本番のコートジボワール戦で初めて見せたもの。コートジボワール戦の敗北のあと、「自分たちのサッカー」と選手たちは口にしたが、この形が「自分たちのサッカー」なのか。
それだけではない。ボランチの長谷部と遠藤の併用も、筆者には問題を含んでいるように思える。このことは再三、拙コラムで言い続けてきたことだが、敢えて繰り返す。ボランチで交代枠を1つ使う作戦は、終盤における選手起用の足枷になってしまう。加えてこの試合では、交代枠を1つ余らせた。せっかくドリブラーの斎藤を選考したのだから、彼を入れて、疲弊したギリシャの守備陣を混乱させペナルティーエリア内でファウルを誘うような試行があってもよかった。使わないよりは、使ったほうがいい。
●期待はコロンビアの気の緩み――第3戦展望
コロンビア戦、相手の実力は日本より上だが、グループリーグ突破を決めたことによる気の緩みが日本にチャンスをくれる可能性もある。日本は2試合ともツキはある。三度目の正直である。もちろんコロンビアがいつもどおりの力を出せば、日本の勝機は限りなく少ない。南米勢にとって本大会は準ホーム、名将ペケルマン(監督)が気を抜かせることもないだろうから、日本にとって難敵であることに変わりない。
●日本代表の問題点
(一)フィジカル強化を
グループリーグ敗退が決まったわけではないが、本大会2試合で見えた日本の問題点は、結果論でなく、日本選手のフィジカルの弱さに尽きる。代表選手の条件は、90分間、しっかりと走れること。リーグ、クラブを問わず、試合に常時出場していること。
けっきょくのところ、香川、長谷部はいいところがなかったし、本田はコートジボワール戦こそ得点を上げたものの、肝心のギリシャ戦ではボランチのようなプレーぶりで、前線における決定機に絡めていなかった。岡崎の「裏への飛び出し」も、ワールドクラスの守備の前ではことごとく封じられてしまっていた。大迫、柿谷、大久保の「新戦力」のフィジカルについては2試合では判断しかねるが、少なくとも言えるのは、代表チームに融合する時間が十分ではなかったことだ。
ボランチ遠藤の力の衰えも急速だった。本大会に近づけば近づくほど、調子が上がらない。世界のサッカーのボランチの傾向は、むしろ屈強な守備型が主流を占める。その意味で遠藤のようなタイプは、そぐわなかったかもしれない。また、ザッケローニがアジア予選からCBに今野を固定して、守備の中心を託したことも結果的にはマイナスに出た。今野の力の衰えも遠藤同様、急速だった。
(二)守備のタレント不足
2戦目のギリシャが1人少なかったため破綻に至らなかったものの、親善試合から本大会のコートジボワール戦で露呈した守備の弱さは、やはり重大な課題だ。くり返しになるが、コートジボワール戦における淡白で集中力を欠いた守備対応が、敗因のひとつだった。
日本の2014年というサイクルにおいては、守備のタレントが不在だ ったようだ。Jリーグを見渡してみても、CBに代表選手以上の人材は見当たらない。新しく就任した代表監督が、前回大会の守備の要・ベテランの中澤、闘莉王を選択する気にはならなかったのは当然だ。そういうめぐりあわせなのだ。
ただ、前出のとおり、長谷部・遠藤のボランチ併用はいただけない。アジア予選から強化試合において、青山・山口・細貝というフィジカルの強い選手を試ておく必要はあった。あまりにも遠藤・長谷部に重きを置きすぎた。
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