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2014年06月17日(火) 日本、コートジボワールに力負け――W杯ブラジル大会

誠に残念な日本の敗戦であった。日本は先制しながら、後半に逆転され大事なグループリーグ初戦を落とした。この敗戦は、地力の差というほかない。

●本調子でなかったコートジボワール

前評判の高かったコートジボワールであったが、ドログバが先発を外れた影響であろうか、試合の入り方としては日本より悪かった。動きが重いし、集中力を欠いているように見えた。そんな中、日本が先制したのだから、これ以上の展開はなかった。これまでの親善試合(練習試合または強化試合ともいう。)では相手に先制され、後半、ひっくりかえす展開が続いていた。そうした不安定な展開を本番で修正したのだから、この試合はものにすべきだった、いや、ものにしなければならなかった。

●同じアフリカ勢でも、前回大会のカメルーンとは違う相手

相手は南アフリカ大会と同じアフリカ勢。しかし、コートジボワールは前回、南アフリカ大会のときの相手、カメルーンとは違っていた。カメルーンというチームは、大会前、必ずといっていいほどボーナス問題等で現地到着が遅れる。当然、コンディションはよろしくない。また、南アフリカのときは2人の主力選手同士が敵対し、チームはバラバラであったといわれていたが、本大会でもその対立が持ち越された。その2人とは、エトゥーとソング。

●日本の左サイドは脆弱そのもの

本大会の相手コートジボワールは、大統領よりも影響力のある男といわれるドログバのチーム。ドログバが右といえば、全員が右を向く。

後半、日本1点リードで、コートジボワールが動いた。ドログバが投入されると、コートジボワールの動きが変わった。そして、狙いすましたように、日本の左サイドを襲撃して、連続2得点を奪った。日本の左サイドというと、香川、長友がつくるストロングポイント。しかし、 そこをDFの視点からみると、相手の狙いどころとなる。香川は守備が弱いし長友が上がれば相手にスペースを与える。

ボクシングに例えると、日本はサウスポースタイル。左のパンチが決め手だが、左のガードが甘くなればオーソドックススタイルの相手の利き腕である右パンチを受けやすい。日本の失点はまさにそんなイメージだった。しかも、連続で二発を食らったのだ。

●90分間走れない日本選手

ひっくり返されてからの日本は本当に弱弱しかった。全員がガス欠を起こしたように走れない。ザッケローニは、DF吉田を上げてパワープレーを仕掛けた。ザッケローニは、「日本にはハイボールを使う文化はない」と大会前に語っていたはずだったが。この作戦には正直、驚いた。パワープレーも選択肢の一つならば、代表選手選びで、FWに豊田かハーフナーを入れて、ドリブラーの斎藤を外すべきだった。あるいは、DFに闘莉王という選択肢もあったかもしれない。

代表選手選考という視点からみると、ザッケローニのミスはそれだけではない。ボランチの長谷部は故障上がりで90分もたないことを前提として、遠藤との併用となっていた。これでは、交代枠3のうちの1つを必然的に使う理屈だ。その結果、当然戦術的交代枠は2しか残らない。


●混乱する指揮官、ひ弱な選手たち

ところで、交代出場のボランチ遠藤は攻撃的選手。つまり、1−0で日本がリードしている後半9分の時点での遠藤投入は、もう1点取りに行く意思表示だ。そこから日本の攻撃の形が生まれたかというと、そのような変化は認められない。一方のコートジボワールは17分に切り札ドログバを投入。ここで一気にスタジアムを含む空気を変えた。そして、切り札投入からわずか2分後の19分にまず同点、そして、そのわずか2分後に逆転の2点目を日本から奪った。

1−0で後半を迎えたところで、日本は守るのか2点目を取りに行くのか――ザッケローニの見通しは定かでなかった。指揮官が試合展開の見通しを立てられないのだから、選手はどうしたらいいのかわからない。迷いが生じ、集中力も途切れる。しかも、90分間走り切れるフィジカルを具備した選手がだれもいない。日本選手のフィジカルの弱さが際立っている。

選手の守備意識の希薄さ、フィジカルの弱さ、故障明け選手ばかりを集めた選手選考の甘さ、交代枠3の公式戦対応・・・選手のフィジカル及び迷える指揮官とその采配については、筆者が拙コラムで指摘してきことばかり。それらのことが、本番でマイナスに出てしまった。日本はコートジボワールに負けるべくして負けた。

直接の敗因は、香川−長友−遠藤(長谷部)−吉田。長友以外はレギュラーシーズンで90分走っていない。マンチェスターUTDでは出場機会がほとんどなかった香川、故障明けの長谷部に代わって入った遠藤は、ボール捌きは見事だがフィジカルは弱い。吉田もサウサンプトンでは控えで、しかも故障明け。コートジボワールは日本の左サイドの弱さを見抜いていた。

リードされた後の日本は、不調の左サイド香川を大久保に代え、ワントップの大迫を柿谷に代えて、攻撃のカードが消えた。そこで仕方なく、CBの吉田を前線に上げるという非常手段に打って出だ。これも見苦しい。日本がパスサッカーを貫くなら、ドリブラーの斎藤投入のほうが筋は通っている。

●フィジカルで日本を上回るギリシャ、コロンビア

さて、日本の次の相手となるのがギリシャとコロンビア。まず、コロンビアに負けたギリシャだが、負け方は日本より潔い。ギリシャのスタイルは堅守速攻。球際に厳しく、当たりが強く、タックルも深い。高さもある。ガチガチ、ゴリゴリとくる相手。日本が最も苦手とするタイプだ。コロンビア戦ではリードされながらも、パワープレーは行わず、バランスを重視した。ギリシャにしてみれば、コロンビアに負けても日本とコートジボワールに勝てば勝ち点6で2位に入れるという読みだ。つまり、コロンビア戦は勝ち点3が取れないような展開ならば、勝ち点1でも0でも同じだという解釈だろう。自分たちのスタイルを壊さず、次戦に向かおうという作戦だ。

C組、日本の最終試合の相手コロンビアは、堅守ギリシャを粉砕した。南米特有の堅い守備と早い攻撃のバランスがみごと。知将ペケルマン(監督)がつくりあげた、本大会でもっとも美しいチームの一つだろう。しかし、美しいバランスをもったチームが優勝するとは限らないのが、W杯の恐ろしさ。C組突破の可能性は高いが、トーナメントではどうだろうか。さて、コロンビアにとっての日本戦は、リーグ突破を決めてしまった消化試合になる可能性も高い。南米のチームだから準ホーム、消化試合であっても、日本が勝つ確率はコートジボワール戦よりも低い。

●W杯はグループリーグ初戦がいちばんおもしろい

W杯はグループリーグの各チームの初戦が最高におもしろい。2戦目以降は、勝ち点、順位等を考慮して守備的になる場合もあるし消化試合も発生する。そんな中、スペイン−オランダ、イタリア−イングランド、ドイツ−ポルトガルといった、強豪国同士の戦いが第一戦に集まった。予想に反して大差で終わった試合もあったが、これらのカードを含めて、引分けが1試合(17日現在)という結果は想定外であった。初戦に勝ち点3を目指す戦い方が、グループリーグ突破のセオリーとして各国に定着したようだ。

●世界サッカーのトレンドはフィジカル重視へ

スペインがオランダに大敗したことをもって、スペイン(バルセロナ)のパスサッカーの終焉が囁かれる。筆者もパスサッカーの時代が終わったような予感をもつ。オランダのファンペルシーが決めた、あの驚異的フライングヘッド(プロレス技のようだが)が、パスサッカーの終わりの象徴だった。世界の潮流は、明らかにフィジカル重視の傾向へと向かっている。固い守備、カウンター攻撃から守備への素早い切り替え(スイッチ)の繰り返し、サイド攻撃、空中戦…。明らかに強い身体(能力)と肉体的・精神的持続力が選手に求められるようになってきている。日本選手には厳しい時代がやってくる。


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