Sports Enthusiast_1

2010年10月18日(月) FC東京改造計画

○「東京右半分」はサッカー不毛の地

『東京右半分』というブログがある。世界都市首都東京にあって、その右側(東側)は「下町」と呼ばれ、土着的な風土をいまなお色濃く残している。近年の「下町ブーム」と、スカイツリー建設等の影響により観光客の増加をみたものの、また、横文字・カタカナ職業を営む事業所が増加したとはいえ、この地域の持ち味は、「大衆の原像」と呼ばれる、下町生活者がかもし出す生活風景にある。

プロスポーツの世界では、関西の阪神タイガースファンの灰汁の強さが全国的に有名であるが、「東京右半分」の巨人ファンも、それにおとらないくらい、強い個性をもっている。東京下町の巨人ファンの“おっさん”たちは、一億総評論家とよばれるに相応しい。まちがっても下町の“おっさん”に、巨人が優勝できなかった理由を聞いてはならない。“おっさん”は、その分析ばかりか、来季のチームづく、ドラフト指名候補まで、何時間も語り続けることだろう。

“おっさん”は、おさないころから草野球になじみ、大人になったらなったで、頼まれもしないのに、近所の少年野球チームのコーチ・監督を買って出る。練習グラウンドの手配から、マッチメーク、ゴロのとり方からピッチングまで、少年たちになんでも教えてしまう。こうした無名の“おっさん”たちが、日本の野球スポーツの底辺拡大を支えている。東京そして大阪には、日本が誇る、100年の野球文化が輝いている。

○FC東京は東京を「代表」するクラブではない

さて、本題のサッカーである。筆者は、首都東京の事実上唯一のJリーグクラブ・FC東京に対して、辛口の批判を展開し続けてきた。それは、東京のサッカー人気が高まることを祈り、東京のサッカー熱の沸騰こそが、日本のサッカー人気を乗数効果的に盛り上げるからだと信じるがゆえなのだ。

日本にプロフェッショナルサッカーは、開業(1993年)以来17年を経過した。その間、日本サッカーは急速な発展を遂げ、アジアでトップの座をうかがうほどの実力をつけた。しかしそれでも、日本サッカーは、100年以上の歴史を誇る欧州・南米ほどには、国民の生活風土の内側に深く根付くに至っていない。日本のプロフェッショナルベースボール100年の歴史が育んできた下町の“おっさん”のように、それを底辺で支えるパワーが醸成されていないのだ。

日本の野球人気を支えているのは、移り気な都市の若者ではない。大阪や東京の下町に土着する、無数の“おっさん”の力に拠っている。プロフェッショナルスポーツがファッションの域を超え、生活の一部に浸透したとき、それはスポーツ文化として、強固な地位を築く。そのとき、スポーツの実力も世界レベルに向上する。日本野球がWBCで二連覇したことが、そのことのよき傍証となる。

「東京右半分」は、サッカー不毛の地だ。たとえば、東京下町を代表する浅草から最も近い都内のサッカースタジアムは、おそらく、「国立競技場」になってしまうのではないか。「国立」が下町でないことは明らかであり、「アジスタ」がそうでないことにいたっては、いうまでもない。

筆者の熱望するところは、「東京右半分」が熱狂するサッカークラブの誕生であり、その近辺に立地する、サッカースタジアムの確保なのだ。下町の“おっさん”が支持するサッカークラブが創設されることを願ってやまない。それが誕生したとき、首都のサッカーは爆発的盛り上がりをみせるだろうし、それが日本のサッカー人気をもう一段、押し上げることになる。

FC東京(以下「FC」と略記)は、残念ながら、一千万都民の支持を得ていない。川崎フロンターレと「多摩川ダービー」を戦う、東京「左半分」のサッカークラブにすぎない。FCのサポーターの中には、下町の“おっさん”の姿が見えない。

○真剣さを欠くFC東京のクラブ運営

FCが東京を代表しない、というか、代表しえない理由は、弱いからだ。首脳陣がFCを本気で強くしようと思っていないからだ。今シーズンのリーグ順位(第26節現在)は15位で、降格圏内にある16位の神戸との勝ち点差は1しかない。

FCの戦力を見ると、26節(仙台戦)にベンチ入りした選手のうち、DF;今野泰幸、キムヨングン、GK権田修一が直近の日本及び韓国代表に選ばれており、MFでは、徳永悠平、石川直宏、羽生直剛、梶山陽平、森重真人が、FWでは大黒将志、平山相太が代表経験者だ。ベンチ入り18選手中、10選手が代表クラスなのだ。一方、対戦相手の仙台の代表選手は、直近のアルゼンチン戦で初キャップを得た、MF関口訓充と北朝鮮代表のMF梁勇基の2人を数えるのみ。戦力的にみれば、FCが圧倒的に有利なはずなのだ。

○FCから移籍したFW赤嶺が仙台で大活躍

FCはその仙台戦、GK権田のミスで追いつかれ、タイムアップ寸前に逆転されて負けた。ミスは仕方がないが、GKがミスをすればチームは勝てない。それでも、光明も見えてきた。まず、筆者が期待しているFW平山が得点を上げたことだ。ポストに当たる惜しいシュートもあった。平山は日本代表のワントップとして活躍してほしいし、その実力はある。

平山がここまで伸び悩んできた原因は、もしかしたら、FCの指導者に問題があったからではないか。というのも、FCから仙台に移籍したFW赤嶺真吾が、この試合ではFC時代には考えられないほど、いい動きを見せていたからだ。仙台のアーリークロスの大部分が赤嶺をターゲットにしており、しかも赤嶺がFCディフェンスに競り勝って、頭でゴール前に落とし、それが仙台のチャンスにつながった。この試合における赤嶺の活躍は目をみはるものがあったのだが、FC時代の彼には、こんな動きは見られなかった。赤嶺が仙台の戦法にあっているという見方もあろうが、筆者は、赤嶺の資質を見抜き、ゴール前の動きを指示した、仙台の手倉森監督の手腕が大きいものと思っている。

平山は来季、FCを飛び出し、彼によきアドバイスを与えるであろう指導者のいるクラブに、移籍したほうがいいかもしれない。移籍先としては、来季に異動がないという前提だが、FW北島秀朗を再生させた柏(ネルシーニョ監督)、MF香川真司を育てたセレッソ大阪(クルピ監督)の2チームが最適だ。

○FC東京に望むもの

繰り返しになるが、FCには世界都市東京を代表するクラブになってもらいたい。そのためには、世界レベルの監督、世界レベルの選手が必要。FCの監督候補としては、たとえば、筆者が日本代表監督候補に挙げたドゥンガがいい。彼はW杯南アフリカ大会のブラジル代表監督としては失敗したが、彼の示した方向性に間違いはなかった、と筆者は確信している。結果はついてこなかったけれど…

しかも、ドゥンガは選手として、Jリーグ経験がある。補強する選手としては、ブラジル代表経験があって、ドゥンガを理解できる者。そんな選手はいない?かどうかわからないけれど…

いずれにしても、リーダーシップのある外国人選手を2名獲得してほしい。東京ガスは、いまこそ、円高メリットを有効に活用してもらいたいものだ。


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