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2010年10月14日(木) 韓国vs日本--まさにアジアレベルの「熱戦」--

国際親善試合・韓国−日本(12日、韓国・ソウル)は、互いに譲らず、0−0のスコアレスドロー。ザッケローニ体制になった日本代表は、初戦ホームで強豪アルゼンチンをくだしたものの、アウエーの韓国戦は引き分けに終わった。この試合をもって、日本代表は2010年の全試合を終えた。

○似たもの同士の一戦

韓国戦を端的に言い表せば、アジアレベルの熱戦だったといえよう。両軍選手とも、献身的運動量を伴った高い守備意識をもって、90分間ファイトした。最後まで厳しいプレスと執拗なマークを続けた日韓の戦い方は、賞賛に値する。

両軍のぶつかり合いは、まさに兄弟喧嘩に喩えられる。日韓が永遠のライバルであり続けるのは、両者に近親憎悪のような思いがあるからではないか。西欧人には判別しにくい日韓両国民の顔だが、東アジアの双方の国民には、僅かながらの差異が認められる。その差異とは、韓国のほうがフィジカル及び瞬発力で日本を上回っている一方、組織力、規律、試合運びにおいて、日本のほうがやや韓国より上であること。だがしかし、その差異は、当事者国民にしか峻別できないほど僅かなものであるにすぎない。

そして、互いに労を惜しまない献身的なサッカーでありながら、同時に両者とも、一撃で相手を倒す「決定力」ないし「ストライカー」を擁しないという欠点を持つ点でも似たもの同士なのである。このことは、東アジアに共通する弱点でもある。

○ともに高揚期に突入した両国

この試合に至るプロセスも、両国ともあまり差異がない。W杯南アフリカ大会では、両国ともベスト16の成績をおさめ、大会終了後、代表監督が交代した。いままさに、2014年ブラジル大会に向け、新体制を構築せんとしているところにある。

そればかりではない。ナショナルチームのレベルは時間軸に沿って、循環波形を示すといわれるが、日韓両国のサイクルはともに“山”に向かっていると見て間違いない。W杯前後、代表主力クラスが海外移籍をはたし、それを受けて、国内選手が刺激を受け、自国リーグを盛り上げている。日韓両国のプロフェッショナルサッカーは、2002年W杯日韓大会開催時に次ぐ高揚期に差し掛かっている。

敢えて両国の差異を指摘するならば、韓国のエース・朴智星が来年のアジア杯をもって代表引退を表明していることくらいか。その朴智星は、当該試合もケガのため欠場した。ホームの韓国のほうが有利だが、経験豊かな朴智星の欠場は韓国にとって、かなりのハンディキャップとなったようだ。日本のエース・本田圭佑は発展途上にあり、韓国はその交代時期にさしかかっている。

○“がちがち”のつぶしあい

試合経過は省略する。先述したとおり、マイボールとなったときには、相手から強いプレスがかかり、自由にならない。それでも、あたかも定期波のごとく交互にやってくる「自分たちの時間」をともに得点につなげることができず、タイムアップ。決定的機会の回数も双方2〜3回ずつとほぼ互角だったように思う。

ただ、後半32分、MF長谷部のスルーパスにゴールやや左でMF松井がトラップミスをして、遠いサイドに流れたボールを慌てて拾って左足でクロスを上げたとき、ペナルティーエリア内に詰めてきた相手MF崔孝鎮の右腕に当たった。だれが見ても、「ハンド」だけれど、故意でないという解釈で主審イルマトフの笛は鳴らなかった。

○日本にはセンターFWがいない

日本代表の課題はこの試合でも明らかになったように、前出の通り、ワントップをだれが務めるのかに尽きる。この試合、アルゼンチン戦でワントップに入ったFW森本に代わり、FW前田が先発したのだが、期待に反して、前田は、おそらく一本もシュートを打てなかったのではないか。韓国戦とアルゼンチン戦とでは、試合の位置づけがまったく異なるから比較はできないものの、FW前田はポストプレーすら満足にできなかったように見えた。ザッケローニがFW前田をフルタイム使ったのは、彼の最終テストだった可能性もある。ザッケローニがこの試合をもってFW前田を見切るとも思えないが、前田の評価はほぼ確定した感がある。では、だれが適任なのかといえば、平山相太(FC東京)以外には思い浮かばない。ザッケローニが彼に注目するには、彼がJリーグで奮起する以外ない。

○フィジカルが弱すぎる

次に明らかになったのは、日本選手のフィジカルの弱さだ。日本選手の中で抜群の強さをみせたのは、MF本田、MF長谷部の2人。とりわけ、本田の強さばかりが目についた。本田におさまったボールは、奪われなかった。

フィジカルについては、選手が育つ風土、所属するリーグの環境に左右されるから、選手の責任ばかりではない。この課題については、Jリーグが先頭に立って、改善に努めなければいけない。

問題は、日本のプロフェッショナルサッカーの平均レベルに比して、Jリーグのトップクラブの数が多すぎること――適正な競争が担保されていないことだ。はっきりいえば、選手層が薄すぎる。J1〜2はバブル現象にあり、試合数ばかりが多く、試合内容の密度が低すぎる。そのため、厳しさに欠ける。低いレベルに選手が安住したのでは、レベルアップが進まない。

Jリーグの審判は選手同士の厳しい「あたり」をすぐ反則と判定する傾向にあり、接触に係るイエローカードも多すぎる。日本の審判は試合が荒れることを恐れているようだが、激しいファイトが伴わないサッカーほど、おもしろくないものはない。W杯南アフリカ大会で日本の審判が評価されたというが、筆者はまったくそう思っていない。サポーターも激しさを求めない。ラフなプレーは許されないが、筆者は「荒い」プレーより、「甘い」プレーのほうが嫌いだ。プロフェッショナルな審判に望みたいのは、試合を何事もなく管理することよりも、ルールに則った激しいプレーを選手から引き出すことだ。

改善策としては、海外の優秀な選手を日本でプレーさせることしかない。そのためには、アジア以外の外国人枠を緩和させることだ。優秀な選手が来日するためには、彼らに適正なギャラを保証するほかない。日本に育成型クラブがあっていいのは当然だが、投資型クラブもあっていい。レアルマドリード(スペイン)、チェルシー(ロンドン/イングランド)は、どちらかといえば、投資型クラブだろう。首都東京をホームとするビッグ・クラブ(※FC東京に期待はできない)が出現すれば、日本のリーグの状況が急変する可能性が高い。このことは何度も繰り返し書いているが、メガシティ首都東京に世界が注目するような、ビッグクラブを早急に創設することが重要だ。

プロ野球の横浜を買収するより、首都東京をホームとするサッカークラブ創設に投資したほうが格好いいと思うのだが。グローバルなフィーリングをもった「投資家」はいませんか?


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