Sports Enthusiast_1

2010年10月10日(日) 2−0勝利が妥当――日本vsアルゼンチン

ザッケローニ新監督率いる日本代表がアルゼンチン代表に勝利した。試合内容としては、日本の完勝とまではいかないものの、日本の全選手の守備がうまく機能し、切れのみられないアルゼンチン攻撃陣をほぼ完璧に抑えた、といえる。日本の攻撃陣に決定力があれば、スコアは3−0くらい広がってもおかしくなかった。

サッカージャーナリストの評価としては、親善試合であり、アルゼンチン代表選手のコンディション(時差、疲労等)の悪さを考慮しても、ベストメンバーの強豪に対して、日本が勝ちきったことに意義があるというものと、真剣勝負ではないから、日本の実力がアルゼンチンを上回ったとはいえない、という見方が並立している。

この試合についての筆者の総括は以下の通りである。まずもって、日本代表が先のW杯においてベスト16を果たし、自信をつけたことがうかがえた。このことは、成長の証だといえる。

しかしながら、あの試合のアルゼンチン相手ならば、日本は2−0の勝利が妥当だと考えたい、もちろん、結果論ではあるが・・・

日本の決定的チャンスは3度あった。1度目は前半9分、右サイドで本田圭のボールを受けた内田がゴール前へ右足クロス。詰めたFW岡崎が直接右足を合わせるが、GKロメロが正面でブロック、ゴールはならなかった。

2度目はこの試合唯一の得点シーンで、前半19分、MF長谷部のミドルシュートをGKロメロがはじいたところを、FW岡崎が飛び込んで決めた。

3度目は後半43分、アルゼンチンの右CKをGK西川が前線へパンチング。こぼれ球を拾ったFW前田が中央をドリブル突破。MFディマリアを振り切り、エリア中央でMFマスケラーノを左にかわして左足シュートを放つが、GKロメロが左に跳んでパンチング。得点できなかった。

日本の唯一の得点(決勝点)は、GKロメロのミスとはいわないが、ロメロのパンチングのボールをFW岡崎が献身的に詰めた結果であって、受動的な得点である。こぼれ球を狙って詰めたFW岡崎を評価すべきだが、能動的な、すなわち、崩しから生じた得点ではない。

一方、1度目はサイドからゴール前に狙ったクロスをFWがしとめるという、まさに攻撃の形を描いたとおりの決定機であり、同様に、3度目もカウンターからFWが相手GKと一対一をつくりだしたという決定機であり、両方とも創造的かつ能動的な決定機会である。受動的得点シーンとは意味が異なる。

さらに重要なのは、時間帯である。1度目の決定機が前半9分であったということ――この時間帯(開始15分以内)は、お互いが相手の動きを見極められない混沌とした時間帯であり、ここで先取点があげられれば、サッカーでは勝てる確率は高くなる。同様に、後半40分過ぎという時間帯は、疲労で選手のスピードがなくなり、カウンターが有効となる。そのような時間帯で得点をあげられれば、勝利を決定づける確率はより高くなる。そういう時間帯に日本が自ら得点機会を創造し、そこで着実に得点を上げられるようになれば、日本のW杯ベスト4も夢でなくなる。

後半43分、FW前田がGKロメロにシュートを阻まれた瞬間、TV映像のザッケローニ監督の渋面が印象的だった。おそらく、ザッケローニは、「自分で打つなら、必ず決めろ、決められないのならば、近くの選手を使え」と叫びたかったのではなかろうか。

真剣勝負の世界レベルのプロフェッショナルサッカーの試合において、2度も決定機を外すようであれば、勝ちきることは難しい。ザッケローニ新監督の初陣で日本が強豪アルゼンチンに勝利したことは、結果として悪かろうはずはないものの、筆者は、そのことを手放しで喜ぶほど、楽観主義者ではない。


 < 過去  INDEX  未来 >


tram