Sports Enthusiast_1

2010年08月29日(日) FC東京には失望している

J1リーグのFC東京が第21節終了時点で(暫定)13位。降格圏内とはいえないものの、戦力からみて、妥当な順位ではない。

(1)首都東京のサッカー事情

以前、当コラムで書いたとおり、FC東京は日本の首都東京をホームとする。首都東京は、人口1,000万人余を擁する超大都市。FC東京が超大都市東京都民を熱狂させるようなクラブにならなければ、日本のサッカー人気、とりわけ、リーグは盛り上がらない。応援のしがいのない首都東京のサッカーフリークが日本代表サポーターに流出する傾向は健全ではない。

東京に隣接する埼玉には浦和(さいたま市)、大宮(同)と2チームあり、浦和は世界的ビッグクラブへ成長している。同じく神奈川には、横浜にマリノス、湘南にベルマーレがある。千葉にも柏、千葉があり、今季は2クラブともJ2だけれど、来季には同時昇格の可能性も高い。東京と並ぶ大阪には、C大阪、G大阪があり、それなりに、J1で健闘している。

東京には、FC東京以外に現在J2に低迷している、ヴェルディという名門チームがある。しかし、ヴェルディはJリーグ発足当時から大きな問題を抱えていた。当時、ヴェルディのオーナーは読売グループ。読売グループは、読売新聞の拡販と系列のテレビ局の視聴率稼ぎを狙って、ヴェルディをサッカーの「巨人軍」に仕立て上げようとしていた。そのため、チーム名に都市名ではなく「読売」を掲げようとして、Jリーグの設立理念である都市(ホーム)尊重と対立を強めた。読売グループはJリーグと確執を繰りかえしつつも、結局妥協し、当時練習場のあった川崎をホームに定め、等々力競技場をホームスタジアムとしてJリーグに加盟した。

しかし、読売グループは、ヴェルディの「巨人軍」構想をJリーグ側に拒まれたことに起因して、クラブ運営の情熱を失っていく。東京サッカー競技場(現「味の素スタジアム」)の完成とともに、ヴェルディは川崎から東京へファランチャイズを移し、さらに、読売グループから、系列の日本テレビグループに経営権が委譲されたものの、クラブの凋落傾向に歯止めが駆らず、2009年シーズン終了後、経営権が某企業に委譲されたものの、その経営が不安定なまま、現在に至っている。

Jリーグ発足当時、ヴェルディは日本リーグ時代の読売クラブからチームに在籍していたラモス、カズ、武田らに加えて、柱谷、北沢らのスター選手を呼び寄せ、Jリーグの強豪チームとして人気があった。しかし、彼らの加齢による衰えとともにチームも低落傾向を強め、ついにはJ2降格にあいなった。

そもそも、読売新聞の拡販=宣伝媒体という位置づけから出発したヴェルディは、Jリーグ事務局との理念的対立が象徴するように、健全なクラブ運営を行う意思はなかったものと推測できる。Jリーグが、読売・日テレという巨大メディア企業のマーケティング戦略を退けた時点で、ヴェルディ凋落の運命は決していた。首都東京のサッカーの不運の始まりだ。

であるから、首都東京を本拠地とするJリーグクラブは、実質的にはFC東京1チームしかない(もちろん、心あるオーナーが今後、ヴェルディを取得し再建する可能性がないとはいえないが…)。そのFC東京がこのような低落傾向にあるということは、Jリーグの活性化の最大の阻害要因の1つとなっている。

世界の国々の首都=大都市のサッカー事情を概観してみよう。スペインの首都マドリードには、レアル・マドリード、アトレティコ・マドリードの2クラブがある。イングランドの首都ロンドンには、アーセナル、チェルシー、フラムFCの3クラブがある。イタリアの首都ローマには、FCローマ、ラッツィオの2クラブがある。トルコのイスタンブル(首都はアンカラ)には、フネルバフチェ、ガラタサライ、イスタンブルBB、ベスクタシェ、カシムパサの5クラブがある。しかも、それぞれが優勝戦線にからむ強豪クラブとして安定した力を誇っている。もちろん、各都市内のダービー戦は異常な盛り上がりを見せる。しかし、Jリーグでは残念ながら、FC東京が優勝戦線に絡むこともないし、ACLの出場権を得る気配すらない。しかも、東京ダービーも期待できない。FC東京が、首都東京のサポーターの期待を裏切り続けることは許されないばかりか、日本のサッカー活性化にもマイナスだ。

(2)FC東京再生は城福監督更迭から

FC東京の問題点は何か。戦力的には、それなりのものを有している、と筆者には思える。問題は、監督だろう。昨日(第21節)の神戸戦をみてみよう。結果は0−0のスコアレスドロー。アウエーなのだから、まあまあという見方もあろうが、内容がおかしい。

この試合は先発FWがリカルジーニョと大黒の2トップ。TV中継の解説者M宮沢氏から再三指摘があったように、リカルジーニョには、アタッカーの資質がない。ペナルティーエリア近くでドリブルする技術(ボールをキープする力)はそれなりに認めるけれど、シュートが打てない。もう1人のFW大黒将志は裏をとる動きばかりで、ゴール前で体をはれない。ヘッディングの力もない。相手DFに脅威を与えない2トップの人選が間違っている。

FWの控えは平山相太と重松健太郎。FC東京はなんと、FWの赤嶺真吾を仙台にレンタル移籍で放出しているのだ。アタッカーとして資質のないリカルジーニョをFWとして起用し、控えに平山と重松というのでは、あまりにも脆弱すぎる。このチームは、だれが、どういうプロセスで、点を取ろうとしているのか、まったく見えない。

そればかりではない。先発したMF大竹洋平が攻撃にフィットせず、大竹の代わりに交代出場した鈴木達也がピッチに入るや、彼が攻撃の突破口を切り開く活躍を見せた。監督が先発の人選を誤っていることは明らか。チームの方向性を見失い、しかも、先発起用選手の判断を誤るなど、敗因を監督に帰する材料が揃いすぎている。

FC東京がJ1に昇格した2000年シーズン以降の成績を見てみよう。昇格した最初の2000年シーズン年間7位(大熊清監督)、2001年シーズン年間8位(同)、2002年シーズン年間9位(原博実監督)、2003年シーズン年間4位(同)、2004年シーズン年間8位(同)、2005年シーズン10位(同)、2006年シーズン13位(ガーロ〜倉又)、2007年シーズン12位(原博実監督)、2008年シーズン6位(城福浩監督)、2009年シーズン5位(同)となっている。(※2000年から2004年までは、2シーズン制度であった。また、2004年と2009年にナビスコ杯で優勝している。)

こうしてみると、原博実監督が采配を振るった2007年に12位まで下降した成績を、2008年6位、2009年5位に引き上げた城福浩監督の手腕に今シーズンも期待して当然だけれど、ここのところの城福監督の采配に翳りが見えている。ということは、FC東京上昇のために打つべき最初の一手は、城福監督の更迭だ。

(3)アタッカーの強化を

次に、手薄となったアタッカー陣の強化だ。FW平山の調子が安定しないのならば、外国人FWの獲得しかない。かつて、FC東京にはアマラオというブラジル人FWが在籍し、彼がJ1昇格を牽引した。アマラオは、12年間チームの中心として活躍を続け、「キング・オブ・トーキョー」とまで言われた。彼のようなチームの範となる優秀な外国人選手を招聘することが、チーム浮上の絶対条件となる。換言すれば、このチームには、リーダーとなる選手がいない。

W杯終了後、主力選手(長友)が抜けたことは戦力的にはマイナスだろうけれど、13位(21節暫定)とは情けない。先述のとおり、FC東京は、事実上、首都東京唯一のJリーグクラブ。ACL出場はもちろんのこと、人口1,000万人を常に熱狂させるようなクラブに成長してほしい。


 < 過去  INDEX  未来 >


tram