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2010年08月24日(火) W杯シンドローム、日本サッカー界は思考停止状態

W杯が終わり、日本のサッカー界は虚脱状態にあるかのようだ。日本代表がW杯でそれなりの成績をおさめたにもかかわらず、まるで不可解なサッカー協会会長の交代劇があった。事情を知らない外部者には、協会内権力闘争としかうつらない。唯一・絶対の権力の亡者と仮したK氏、そして、W大の学閥で固まる協会の官僚体質――日本サッカー協会にいま必要なのは「文化大革命」のような、激烈な改革ではないか。

(1)選手は消耗品ではない

Jリーグが、W杯開催の中断もあって、猛暑さの中、異常な日程で進行している。30度を越える日々が続く夏場に、中2〜3日で試合を組むことが信じられない。Jリーグ関係者は、夏休みが稼ぎ時という意識があるのかもしれないが、選手は消耗品ではない。悪いコンディションの下で試合をしてもいいパフォーマンスは期待できない。Jリーグ主催者には、そういう試合を観客に見せることがいいことなのか悪いことなのかを考えてほしい。顧客、社員を大切にしない経営者でいいのか。

(2)混迷する次期代表監督えらび

岡田に代わる次期代表監督の人選も難航しているように見える。次期代表監督招聘の責任者であるH氏は、スペインサッカーに思い入れが強く、しかも、スペインがW杯で優勝したこともあって、“まずはスペイン人の指導者”という固定概念から交渉に入ったように報道されている。しかし、もしそうだとしたら、あまりにも観念的すぎる。

スペインリーグにおける最強チームの1つ、バルセロナの監督ジョゼップ・グアルディオラは、国籍はスペインだが、カタルーニャ人である。カタルーニャはスペインにあってスペインでない。カタルーニャはスペイン(マドリード)と対立する圏域なのである。スペイン代表がW杯で優勝したことは紛れもない事実であるが、代表チームを構成した主なメンバーはバルセロナに所属し、しかも、カタルーニャ出身者が過半を占めていた。

それだけではない。今季からレアル・マドリードの指揮を取るジョゼ・モウリーニョは、ポルトガル・セトゥーバル出身のポルトガル人。彼は監督として唯一UEFAチーム・オブ・ザ・イヤーに3度選ばれている超逸材であり、その才能について、ここで説明する必要もなかろう。

すなわち、スペインリーグの超ビッグクラブの2人の監督は正確には、スペイン人ではない。ほかにも、昨シーズン3年ぶりに一部昇格を果たしたレアル・ソシエダードのマルティン・ラサルテ監督はウルグアイ人だし、エスパニヨールのマウリシオ・ポチェッティーノ監督はアルゼンチン人、マラガのジェズアウド・フェレイラ監督はポルトガル人だ。ビルバオのルイス・デラフェンテ監督も国籍はスペインだが、おそらく、バスク人(バスクもスペインの中にあって、スペインでない圏域)ではないか。

W杯南アフリカ大会で優勝したスペイン代表チームのあり方、当該コラムで何度も書いたので繰り返さないが、グローバルスタンダードとはかけ離れた仕様だった。バルセロナというクラブの存在なくして、スペインの優勝はなかった。繰り返すが、W杯優勝国=スペイン国籍の指導者という理由だけで、スペイン人を日本代表監督に招聘することはリスクが高すぎる。代表監督選びにおいて重要なのは、言うまでもなく、指導理論及び実績である。協会から委任されたH氏が、次期代表監督をどういう尺度で選んでいるかは定かでないが、公表された候補者リストや報道からうかがう限り、「国籍優先」のように思えてならない。

(3)海外移籍した選手の今後に期待

W杯終了後、大会の活躍が認められて、長友(東京)、川島(川崎)の2選手が海外クラブと契約した。大会前に香川(C大阪)、内田(鹿島)が契約を決めており、さらに、巻(千葉)に続き阿部(浦和)の海外移籍も決まりそうだ。W杯終了後、Jリーガー6選手が日本を離れ、欧州各リーグの10〜11シーズンでプレーする(既にプレーしている選手もいる)。

移籍先は、香川のドルトムント、内田のシャルケのドイツリーグはまあまあだが、川島(ベルギー)、巻(ロシア)、阿部(イングランド2部相当/プレミアの下)の場合はどちらかというと、二流、三流リーグであり、長友が契約したチェゼーナもイタリア・セリエAであるが、ビッグクラブとはいえない。それでも、海外でプレーすることはいいことである。今後、活躍し、ステップアップすることを願っている。


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