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2010年07月14日(水) オランダの伝説・クライフ氏、自国代表を痛烈批判

7月13日のGoal.comによると、オランダサッカーの英雄・ヨハン・クライフが、ワールドカップ決勝戦におけるオランダの戦いについて痛烈に批判をし、併せて、この試合を裁いたウェブ主審のジャッジにも苦言を呈したという。

ヨハン・クライフといえば、オランダサッカー界における伝説的存在。筆者もまた、オランダチームのファウル作戦に不快感を抱いていただけに、クライフが自国の代表チームを批判したこと――筆者がクライフと同じ視点を得ていたこと――を知って、己の批評眼に自信を深めた次第。

クライフの批判の詳細については、http://goal.comを参照してほしい。要は、オランダが醜く、ハードなタックルを行い、見ていられないようなスタイルのサッカーで、スペインのリズムを乱し、ダーティーな手段で勝利を得ようとしたにもかかわらず、勝てなかったと指摘したのだ。まさに、そのとおり。オランダはワールドカップ・ファイナルにおいて、クライフの言葉を借りるならば、「アンチフットボール」をした。

一方で、クライフは主審を務めたハワード・ウェブ氏について、「彼(主審)は2人のオランダ選手を退場とすべきだった。2枚目のイエローカードにふさわしかった(アリエン・)ロッベンも含めてね…(略)…レフェリングが悪いのはあることだ。だが、独自の判断をつくってはいけない。さらに悪いのは、個人的なルールの適用をでっちあげることだ…(略)…W杯のファイナルは優れた主審が笛を吹くべきものだ。なによりも、それこそジャッジというものにすべて、全力を尽くそうとする主審でなければいけない」と、極めて手厳しい。

クライフのオランダチーム批判及びウェブ主審に対する苦言について、付け加えるものは何もない。2010年南アフリカワールドカップ・ファイナルは、汚いオランダチームと冷静なスペインが、拙いジャッジの下に闘った挙句、ファンは120分間、アンチフットボールを見せられた。そして、スペインが結果として、辛勝した。

日本のサッカー・ジャーナリズムには、この事実を報道するように望む。また、日本のサッカーファンには、ワールドカップ・ファイナルだからといって、必ずしも、最高の試合が行われるとは限らないことを知ってほしい。

“ファイナルだから最高の試合”というのは、超観念論なのだ。日本のサッカージャーナリストは、ファイナルを見る前に、“これが最高の試合になるに違いない”という先入観にとらわれ、そのような美辞麗句で試合結果を飾って報じたいという願望があるに違いない。最高の試合だったと記事にし、そのように絶賛して自己陶酔したいのだろう。オランダはダーティーでアンチフットボールであったことは、試合を見ればわかることなのだから、そのとおり、書けばいい。オランダのサッカーから学ぶべきことは何もないと。

だがしかし、筆者はクライフのように、オランダを非難しようとは思わない、というよりも、その資格がないといったほうが自然だろうか。クライフほどの伝説的フットボーラーならば、オランダのファウル戦術をダーティーだと非難できようが、筆者のような素人には、オランダのアンチフットボールも戦術の1つだと認めてしまう。それもまた、サッカーの1つだと。

オランダは非難・批判覚悟で、勝ちにこだわった。しかし、それでも勝てなかった。結果としては最悪の選択をしたことになる。しかし、90分間はこの戦術がうまくいった。まともにフットボールをすれば、もしかしたら、前半で勝負の行方は決していたかもしれない。ところが、オランダはファイナルを取るチャンスを少なくとも2度、得ることができた。結果はロッベンが2度とも、ものにできなかったけれど。

アンチフットボールもまた、フットボールの作戦の1つであるのか、そうでないのか。ファイナルのオランダの戦い方には、議論百出が当たり前だった。日本のサッカージャーナリズムが、それについて議論しなければ、日本のサッカー風土はいつまでたっても、ナイーブ(うぶ)なままだ。

オランダでは、英雄クライフが自国の代表チーム=後輩たちの戦い方に対して、厳しい発言をした。日本はオランダに負けているのだから、オランダの戦いぶりをもっとも冷静に見られる立場にある存在の1つのはずだ。にもかかわらず、日本のスポーツマスコミ、プロサッカー経験者からは、たったの1行のオランダ批判もでてこなかった。あいもかわらず、ラウンド16のパラグアイ戦のPKを外した選手や親族に、センチな物語をかぶせているか、ゴールシーンで絶叫するばかりだ。

日本のサッカー報道・サッカー解説は、サッカーを借りた「物語」の報道・解説にすぎない。サッカーの本質に迫ることがない。このままなら、日本は永遠に、オランダのような「ダーティー」な試合はできないし、戦術の多様化、進化もなされない。


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