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2010年07月13日(火) ワールドカップよ、永遠に

“世界で一番サッカーが強い国はどこなんだい”という問いに対する回答が出だ、スペインだと。およそ1月間にわたり、ほぼ連日、世界のサッカーが見られるワールドカップは、サッカーファンにとって、最上のエンターテインメントにほかならない。

(1)ブブゼラ、ジャブラニ、予言タコ、美人サポーター

今大会は南アフリカでの開催だった。アフリカでワールドカップが開けるのか、という心配はまったのく杞憂だった。報道によれば、ほぼ完璧な運営だったようだ。また、開催前には、南アフリカの治安の悪さが懸念されたが、幸いにして、凶悪犯罪に巻き込まれたサポーターはいなかったようだ。南半球のこの時期は冬、寒さ、しかも高地での開催という厳しい自然環境も心配されたが、影響は少なかったように思われる。

話題満載だった。まず、なんといっても、「ブブゼラ」だろう。サッカーの試合中、ずっとこの楽器のようなものを吹き続けるのが南アフリカ風なのだ。

魔球「ジャブラニ」(公式球)も話題となった。グループリーグ(以下「GL」と略記)では、GKがキャッチミスを繰り返すシーンが続出した。公式球が話題になったワールドカップは今回が初めてではないか。

パラグアイ・サポーターの露出美女が結局、最後はウエブでヌードを披露した。ドイツの水族館に飼われているタコのパウルも話題をさらった。彼は決勝トーナメント(以下「決勝T」と略記)の8試合の結果を占い、すべて的中させた。

「ハンド」「誤審」も話題になった。シュートがバー、ポストに当たる回数も多かったように思う。

(2)イタリア、フランスの凋落

サッカーに戻れば、調子の上がらないフランスがGLの最中に崩壊した。エース・アネルカが監督批判で強制送還をくらい、それを受けてチームは練習を拒否。もちろん、GLで敗退した。昨年の優勝国イタリアも世代交代に失敗し、GLで敗退した。前回大会の優勝・準優勝チームがそろって、GLで消えた。

反対に、GLにて敗退濃厚と予想された日本及び韓国のアジア勢2チームが「ベスト16」入りを果たした。その一方で、地元アフリカ大陸勢のカメルーン、コートジボワール、ナイジェリア、アルジェリア、そして、開催国の南アフリカの5チームがGLで消え、ガーナだけが「ベスト8」まで進んだ。開催国が「ベスト16」入りを果たせなかったのは、今回の南アが初めてだという。エトーを擁するカメルーン、ドログバを擁するコートジボワールの敗退は、アフリカ勢の欠点であるチームづくり・組織づくりの脆弱性を象徴する。

(3)グループリーグでは、北中南米勢が健闘

GLでは北中南米勢が健闘、参加8チーム(南米5・北中米3)のうち、ホンジュラスを除く7チーム(南米勢=ブラジル、アルゼンチン、チリ、パラグアイ、ウルグアイの5チーム、北中米勢=アメリカ、メキシコの2チーム)が勝ちあがった。

(4)欧州−南米の対決は、欧州に軍配

ところが、「ベスト8」に残ったウルグアイ、ブラジル、パラグアイ、アルゼンチンのうち、ウルグアイ以外が欧州勢に負け、残ったウルグアイも準決勝で敗退(ベスト4)した。

終わってみれば、優勝:スペイン、2位:オランダ、3位:ドイツ、4位:ウルグアイである。ウルグアイを除けば、自国リーグが世界上位の水準にあり、加えて、チームとして結束力の高いところが好成績をあげたようだ。前出のイタリア、フランスは、自国リーグが高い水準にありながら、ナショナルチームとして問題を抱えていた。そんなチームは、ワールドカップでは勝てない。ワールドカップでは、寄せ集めの選手をいかに束ねるかがポイントになる。

優勝したスペインは、バルセロナに属する7選手を中心にして代表チームを編成した。世界最高水準にあるクラブチームの選手を骨組みとして、それ以外の自国クラブの選手を補強材に使ったわけだ。自国リーグの水準が高ければ、今回のスペイン式(クラブチーム依存)の代表チームづくりが可能なのかもしれない。

(5)オランダの「ファウル戦術」を批判する

ワールドカップのファイナルが必ずしも上質の試合になるとは限らない。今大会のファイナルはその好例の1つだ。好試合どころか、薄汚い試合だった。その主因は、ただただ、オランダにある。

オランダがファウルを意図的・戦術的に使用したのは決勝が最初ではない。最初は、準々決勝のブラジル戦において、意図的ファウルで試合を撹乱状態に陥れた。ちょうど、その試合の主審は日本人が務めたのだが、主審がオランダの撹乱戦法にのっかり、神経質な笛で試合を寸断した。ブラジルはリズムを乱され、スピードを封じられた。そうなると、オランダのペースである。未熟なブラジルのある選手がオランダの挑発にのり、退場させられてしまった。一方、決勝の相手スペインは、オランダの挑発にのらず、逆に、オランダが自軍から退場者を出して負けてしまった。

オランダの「ファウル作戦」をどう考えるかだが、少なくとも、サッカージャーナリズムならば、オランダの撹乱戦法を批判すべきだ。ワールドカップのファイナルだから、最高の試合だというのは観念論である。本大会のファイナルは、イエローカードが乱舞する、最低の試合の1つだった。そうなった理由は、繰り返すが、ファウルを戦術化するオランダの側にある。オランダは、せいぜい「ベスト8」までのチームにすぎない。

(6)ワールドカップで勝つための条件

サーカーに限らず、スポーツでは、実力があるからといって、いい結果を残せるとは限らない。大会(ワールドカップ)は4年に1度、世界のどこかで開かれる。自国の試合とは、気候、言語、習慣、時差等の差異があり、選手はそれらに適応して、コンディションを維持しなければならない。選手には、技術以上に環境適応能力が問われる。強い[メンタリティー]が強い[フィジカル]を維持し、良い結果をもたらす。

運も必要だろう。決勝Tに入れば、主審・副審のジャッジ次第で、次に進めるか、消えるかが決まることもある。誤審が味方をする場合も、また、その反対も大いにあり得る。

たとえば、決勝まで進んだオランダの場合、準々決勝のブラジル戦では、ブラジルのリズムを崩すような神経質な主審の笛に救われ、準決勝のウルグアイ戦では、オフサイドが見逃されて、勝ち越し点をあげた。いわば、2つの誤審に助けられた。

ところが、決勝では、コーナーキックをゴールキックと誤審され、その直後に決勝点を奪われた。オランダにあったツキが、最後に逃げていった。オランダのツキも決勝までは続かなかったのだ。


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