2010年02月26日(金) |
日本代表は、アジアのクラブの喧嘩ファイトを見習え |
(1)災い転じて
W杯開催年の本年、スタートの東アジア選手権で、まったくぴりっとしなかったサッカー日本代表。岡田代表監督ついに解任かと噂されたが、協会の優柔不断でどうにか踏みとどまっている。そんな岡田に、朗報が入った。
1つは、スペインリーグではまったく通用しない中村俊輔が、横浜Fマリノスに復帰することが確実となったこと。エスパニヨ―ルで戦力外となり、リーグ戦に出場できないとなれば、中村俊を代表選手に選ぶことは難しい。試合に出ていない選手は代表に呼ばない、という既定方針があるからだ。スペインで不調でもJリーグならば十分、レギュラーでやっていける。だれはばかることなく、中村俊を選考できる。
2つ目は、大久保(神戸)の故障。故障した大久保には気の毒だと思うけれど、大久保が代表選考から外れることによって、岡田監督が描いている、間違ったFW構想に修正が及ぶかもしれない。
岡田監督は、岡崎(清水)、玉田(名古屋)、大久保の3人の中から2人をトップに入れて、スピードでゴールをゲットしようという戦法を基本としてきた。だが、この3人、全員がセカンド・トップタイプ。センターFWタイプではない。
そのため、日本代表の試合展開としては、ボールが前線におさまらず、後方の選手が攻撃に上がる時間が稼げない。その結果、人数をかけた攻撃ができにくく、攻撃に厚みと迫力が感じられない。代表の試合は、毎試合、毎試合、あたかも同じビデオが流れているかのよう。相手にボールを奪われないように、と、無意味な横パス、バックパスばかり。相手のバイタルエリアをかき回すことがない。相手DF陣が慌てない分、ゴールは遠い。いってみれば、アウトボクシング。腰が引けた軽いジャブばかり。攻守の切り替えが早いといえば聞こえはいいが、ちょこっとパンチを出して、さっと逃げ帰ってくる、そんな弱気なサッカーなのだ。
大久保が故障となると、FW候補として、昨年のJリーグ得点王・前田(磐田)の起用が浮上してくる。前田は高さがあり、ボールキープができて、右足でも左足でもシュートが打てる。大久保、玉田よりはスピードは落ちるけれど、代表チームの得点機会は増えるかもしれない。問題は、フィジカルがそう強くないこと。代表とJリーグのかけもちは無理という指摘もあり、前田を選ぶのもリスクが高い。
筆者がかねがね、指摘していたように、玉田、大久保はセカンドトップで機能するタイプ。大久保の故障を佐藤(広島)で埋めるという策もなくはないが、大久保が呼べなくなることで、森本(カタ―ニャ)、平山、前田の起用がしやすくなる。
難点は、岡田監督がこれまでのW杯予選、テストマッチ等において、森本・平山・前田を先発で使っていないこと。岡田監督が代表チームとして熟成、練成する期間に、攻撃の基本形を修正するというのもおかしな話だ。しかも、森本の場合、イタリアでの成績はぱっとしない。平山もJリーグでそれほどの実績があるわけではない。実績では巻(J2千葉)、高原(浦和)なのだけれど、昨シーズンは2人とも調子を落としていたし、2010年に完全復帰できる理由がない。矢野(新潟)も可能性があるが、リーグでは右サイドをやっている。日本のセンターFWは、まさに、“帯に短し、襷に長し”。
(2)ACL参戦のアジアのクラブチームに学べ
さて、W杯開催年であってもクラブはリーグ戦を戦わなければいけない。アジアではアジアクラブ選手権(ACL)が始まり、欧州では欧州チャンピオンズリーグ(CL)の熱戦が続いている。
ACLでは川崎(アウエー=A)、広島(ホーム=H)が負け、鹿島(H)が勝ち、G大阪(A)が引き分けた。筆者は、これら4試合の中継・ビデオを見ていないので、試合内容を評価することはできない。報道によると、Jリーグ勢がからんだ4試合はいずれも激しい試合だったようだ。川崎の主力中村憲があごの骨を骨折したというし、G大阪の選手も3、4人負傷したという。
試合を見ていないので、故障が相手選手の故意のファウルによるものなのか判断できないが、偶発的、故意を問わず、アジアのクラブチームは、日本のクラブに勝つため(日本のクラブは過去3回優勝)、かなり厳しくくる傾向にあることは間違いない。もちろん、汚いファウルはスポーツマン・シップに外れるが、激しく、厳しくいくことは悪いことであるはずがない。そうしなければ、日本勢の高い技術に負けてしまうのだから。厳しさ、激しさは正当な戦術の1つである。勝つための重要な手段なのだ。ファイトこそが、サッカーに限らず、プロフェッショナル・スポーツの世界において、勝利を手繰り寄せる鍵といえる。
日本代表は、アジアのクラブチームの旺盛なファイティング・スピリットにこそ、学ぶべきなのだ。日本がW杯グループリーグにて対戦するカメルーン、オランダ、デンマークは、日本より格上。日本はそれこそ、アジアのクラブチームがACLでJリーグのクラブと対戦する以上の、ファイティング・スピリットを持つべきなのだ。
システムがどうの、クロスがどうの、サイド攻撃が・・・という屁理屈はこの期に及んで意味がない。筆者が代表監督ならば、日本代表選手全員に向け、グループリーグ初戦のカメルーンに対して、喧嘩ファイトを指令する。1対1の競り合いに絶対に負けない精神力、気迫を要請する。正当な肉体的ぶつかりあい、タックル、チャージで相手をねじ伏せるよう指示を出す。
日本のサッカー・ジャーナリズムは、カメルーンのみならず、アフリカ勢というと、「強い身体能力」と馬鹿の一つ覚えのようにくりかえすが、筆者の見立てでは、日本が属するグループ内で最も1対1(競り合い)に弱いのはカメルーンである。前々回、前回と、当コラムで繰り返し強調しているように、日本が自国開催以外のW杯で勝ち点3を上げられる可能性が一番高い相手はカメルーンであり、カメルーン戦に日本が集中すれば、ベスト16の可能性が開ける。カメルーン戦意外は考える必要がない、というのが筆者の考えであり、それを可能にする条件は、日本代表選手が、ぶつかり合いで、カメルーン選手を粉砕すること以外にない。
カメルーン戦の先発候補は、森本、中村俊、本田、松井、稲本、長谷部、小笠原を優先したい。彼らは、欧州で強い当たりを経験しているからだ。サイドも強さを基準に、駒野、長友を優先、CBは闘莉王、中澤で仕方がない。だれが先発しても、カメルーン選手と喧嘩ファイトを繰り広げてほしい。
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