2009年11月10日(火) |
落日の千葉−オシムの遺産を食い尽くす |
サッカーJリーグ1部(J1)の千葉が8日のリーグ戦で川崎に2―3で敗れて16位以下が確定し、来季のJ2降格が決まった。思えば昨シーズンの「奇跡の残留」がまさに奇跡であって、指導者の選定、補強を筆頭としたチームづくりといった、クラブ運営に問題があった。07年、イビチャ・オシム(以下「オシム父」と略記。)が千葉を去り日本代表監督に就任。その後任として、息子のアマル・オシム(以下「アマル」と略記。)が千葉を引き継いだあたりから、軋みが始まったような気がする。07年、オシム父→アマル、08年、クゼ→ミラー、09年、ミラー→江尻、と3年連続でシーズン途中にして監督が交代するくらいだから、好成績を望むべくもない。
アマルの首を切ってクゼを迎えたのが昨シーズン。クゼも成績が上がらず、こんどは英国プレミア(リバプール)のコーチ経験者・アレックス・ミラーを監督に迎え、前出の「奇跡の残留」を成し遂げたものの、奇跡が2シーズン続けて起こることはなかった。今シーズンはミラーのサッカーのコンセプトがJリーグにフィットせず、慌ててオシム父のコーチであった江尻を監督に据えたものの、こうまでダッチロールが続けば、まともな選手なら混乱して当たり前だ。結局のところ、オシム父の退任以降千葉の監督に就任したへぼ監督どもは、オシム父の遺産を食い尽くすばかりで、遺産を増やすことがなかった。降格は必然である。
今シーズン、千葉は場当たり的な選手補強に終始した。移籍してきた選手は、J1の他クラブのレギュラーと控えのボーダーライン上にいる選手ばかり。“枯れ木に山の賑わい”といった感じで、チームの骨格が見えないままだった。外国人選手も中途半端で、チームの軸にならなかった。
そればかりではない。生え抜きの日本人選手で、攻撃陣の主力・巻誠一郎が生彩を欠き、復調の兆しが見えなかった。結局、シーズンインから降格決定までのあいだ、チームリーダーすら定まらない状況が続いた。なかで重症なのがDF陣。オシム時代、リベロで大活躍したストヤノフが07年シーズン途中、アマル監督を批判して退団(現・広島)してからは、極端に安定感を欠いたチームとなってしまった。
オシム父、そして、アマル退団の後、“オシムチルドレン”と呼ばれた阿部(浦和)、山岸(川崎)、佐藤(京都)、水野(セルティック)、水本(京都)、羽生(東京)らがチームを出て、戦力がガタ落ちしたことはだれがみても明らかだった。
さて、再建策である。昨シーズンJ2に降格しながら、今シーズン昇格した広島の場合、降格しても、主力選手のすべてがチームに留まり、J2を戦いながら実力を上げた。こういうやり方が最も望ましいのだが、千葉の場合、オシム父、アマルがチームを離れただけで、主力のほとんどがチームを出たくらいだから、J2降格と同時に多くの選手が移籍を選択することが予想される。外国人選手を除くと、巻誠一郎(FW)、工藤浩平、坂本將貴(大宮から復帰 以上MF)、斎藤大輔(C大阪から復帰。DF)、岡本昌弘(GK)と少なくなった生え抜き組も、J1の他クラブから声がかかれば移籍するものと予想できるが、筆者の見方では、巻誠一郎(FW)を除いてはあまり魅力がない。
移籍組では、深井正樹、新居辰基(以上FW)、下村東美、中後雅喜、谷澤達也、太田圭輔(以上MF)、和田拓三、池田昇平、福元洋平、青木良太(以上DF)、 櫛野亮(GK)らが、J1では控えと先発のボーダーライン上に位置するものの、J1クラブから声がかかれば、移籍は確実だと思われる。とりわけ、レフティーの深井正樹は前線のかき回し役として、J1でも十分活躍できるし、運動量の多い谷澤達也もモダンサッカーに適しているので、J1クラブから声がかかるものと思う。
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