2009年11月06日(金) |
イチローよ、松井に続いてほしい |
松井選手の米国大リーグワールドシリーズ(以下、「MLB・Wシリーズ」と略記。)における活躍は、本当に素晴らしい。日本人選手がMLB・WシリーズでMVPを受賞するなんて、夢のような出来事だ。
筆者は今年の9月、当コラムにおいて、「イチロー、“Wシリーズで活躍”は夢か」(2009年09月17日)を書いた。その趣旨は、イチロー以外、MLB・Wシリーズで活躍できる日本人選手は、とりわけ野手ではいない、というに近いものだった。つまり、筆者は誠に失礼ながら、今年の秋の時点、松井がMLB・Wシリーズで活躍することを想定していなかったのである。
ところが、11月4日、ニューヨークのヤンキースタジアムで行われた第6戦では、松井が6打点の活躍で2連覇を狙ったフィリーズ(ナ・リーグ優勝)を7―3で下し、ヤンキースは、4勝2敗で9年ぶり27度目のワールドチャンピオンに輝いた。
松井秀は入団1年目だった2003年以来、6年ぶり2度目の同シリーズ出場で自身初の“世界一”をつかみ、同シリーズで日本選手初の最優秀選手(MVP)に選ばれた。日本選手所属球団のシリーズ制覇は5年連続。イチローは一度も出場していない。
松井のWシリーズMVPとイチローの数々の新記録達成を比較することに意味はない。どちらも立派だけれど、筆者は松井のMVPのほうに価値を見出す。なぜならば、そのプレッシャーの違いである。地区優勝を果たし、ポスト・シーズンに勝ち抜き、Wシリーズ7戦を戦い抜くのは並大抵のことではないと想像するからである。
前出の筆者のコラム(2009年09月17日)において、筆者は次のように書いた。 ■筆者にはイチローの環境について、ある面どうしても気になって仕方がないことがある。イチローは9年間、シアトル・マリナーズに属していて変化がない。その間、シアトルはアメリカン・リーグにおいて、イチロー入団の年(2001)の西地区優勝を最後に、ワールドシリーズはもちろん、ポスト・シーズンにも出場していない。イチローの記録を貶める気はないが、彼がチーム優勝を争う過酷な環境の中でプレーしないことが不満で仕方がない。イチローのヒットを無駄打ちとは言わないけれど、チームの勝利、なかんずく、チーム優勝に結びつかない現実に、筆者は大いにいらだっている。イチローが全米レベルで脚光を浴びる場面といえば、オールスターの1試合のみ。そのオールスターも、インターリーグ制度の導入により、年々、色褪せていく。■ 野球がチームプレーである以上、最終目標はチームの優勝である。そのためには、選手ががんばることはもちろんだけれど、チームづくり――選手の補強、良き指導者の招聘、練習・鍛錬をする環境づくり、ファンの後押しと批判、メディアの批評・・・といった、総合的なものが求められる。ニューヨークというところは、おそらく米国の中で、選手にもチームにも、最も厳しい環境の都市なのではないか。厳しい環境が、いい選手を育てるのではないか。
そんな中、松井がヤンキースタジアムを埋め尽くしたファンから「MVP」コールを浴びたシーンは感動的だった。もちろん、ニューヨークでもボストンでもロスでもかまわないのだけれど、松井に続いてMLB・WシリーズMVPに輝くことができる日本人選手は、イチローの可能性が最も高いような気がする。イチローがシアトルを出る決意をするのはいつのことなのか。
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