2009年06月18日(木) |
南アフリカへの道(その2) |
6月17日、W杯アジア地区予選グループ1(以下「G1」という。)最終試合、日本VSオーストラリアがメルボルンで行われ、日本が1−2で負けた。これで日本は、アジア地区G1の指定席=2位におさまった。筆者の予想どおりである。
試合展開としては、前半、闘莉王がコーナーキックを頭で合わせて日本が先制したものの、後半、逆にセットプレーからキューエルに2本決められ、そのまま押し切られた。前半の得点シーンは、オーストラリアが集中力を切らした瞬間に生じたもの。日本代表のなかで一人元気な闘莉王がオーストラリアのマーカーに競り勝った。真剣勝負のW杯本戦では、おそらく、こういうシーンが起きる確率は低い。
得点差は1点、アウエー、崩された得点ではない・・・と、諸々の言い訳があるかもしれないが、TV映像でこの試合を観戦した人ならだれもが、両国の自力の差を実感したに違いない。互いに主力を外した消化試合、両国代表の一軍に相関して、双方の二軍もしくは一軍半においても、力の差が現れ出でたと考えるべきである。
W杯出場を決めた後の消化試合とはいえ、「南アフリカへの道」に時間の浪費があってはならない。これから先の1年、代表試合は思うほど開催されない現実を踏まえるならば、現在、日本より力のあるオーストラリアと敵地で試合をする意味は、けして、なくはないのである。
オーストラリアに負けたことで明らかになったことがある。繰り返しになるが、まとめておこう。
第一に、「W杯ベスト4」という岡田代表監督の妄想が、まさに妄想であることを実証したことである。筆者は、無責任な妄想を公言する人を信頼しない。指導者には、ときに大風呂敷も必要だが、そこに戦略が欠如している場合、スポーツに限らず、進歩を阻む場合が多い。
第二に、これも繰り返しになるが、日本がアジアの「ベスト4」とは言えても、それ以上ではないということである。日本の立ち居地は、2008年のアジア杯の成績から変わっていない。(同大会の順位:優勝:イラク、2位:サウジアラビア、3位:韓国、4位:日本)。同大会では、オーストラリアは日本にPK戦で負け、ベスト4に残れなかったが、同大会に臨んだオーストラリアは、代表の体制構築に手間取り、力を出し切れていなかった。2010年南アフリカ大会の予選を通じたアジア諸国の力を総合的に見定めると、オーストラリア、韓国、日本、サウジアラビア(W杯予選は敗退)、そして、同じく予選敗退のイラン、予選通過を決めた北朝鮮の6カ国が上位にあり、日本は間違いなく、アジアの6強の一角ではある。
第三は、最終予選のグループ分けにおける、日本の幸運を特記しておきたい。最終予選の組合せにおいて、日本がG1でオーストラリアのみと同組であって、サウジアラビア、イラン、北朝鮮、韓国のいずれの国とも同組にならなかったことは幸いだった。G1において、日本がオーストラリアに次ぐ2位となる可能性は極めて高かったが、1位になる確率は低かった。かりにG1に上記のどこか1カ国が入っていたとしたら、日本の予選通過はもっと厳しいものになっただろう。
第四は、バーレーン、オマーン、カタール、UAE等のアラブ産油国の停滞である。オイルマネーを使った強化策が功を奏していない。人口の多寡とサッカーの実力が相関するとはいえないものの、アラブの国々の人口を日本(1億3千万)と比較すると、同組のカタールは140万人、バーレーンにいたっては79万人にすぎない。G2のUAEも460万人と、いずれも小国である。中東勢のなかでは、イラン(7千4百万)、イラク(3千万)、サウジアラビア(2千5百万)が人口と共にサッカーにおいても潜在的パワーを秘めているように思える。また、日本を苦しめた中央アジアのウズベキスタン(人口2千7百万)に筆者は注目しており、この国のサッカーの伸び白は、日本を上回っていると確信している。もっとも、世界で人口の多い国を見ると、1位中国、2位インド、(3位米国)、4位インドネシアと続いており、アジアの3大国が入っている。これら3大国が将来において、サッカーの強国に成長する可能性がないとは言えないものの、先の長い話ではある。
第五は、結論となるが、日本代表の退歩である。メルボルンのオーストラリア戦における日本の敗北を、2006年のW杯ドイツ大会の日本の敗戦に重ね合わせて語るサッカージャーナリストが多い。そのようなサッカージャーナリストは良識をもった、日本の成長を望む一派であって、日本代表が勝つたびに度派手な見出しを連発するスポーツ新聞記者とは一線を画している。先のキリン杯の大勝にも浮かれることがなく、日本代表が持っている構造的脆弱性に警鐘を鳴らし、岡田代表監督の力量に疑問符を投げかけてきた。そして、ウズベキスタン、カタール、オーストラリアの3つの公式試合でおそらく、同じ結論を引き出しているはずだ。その結論とは、岡田監督のままならば、日本は南アフリカで一勝も上げられないで、早々に帰国するであろうということである。
日本の財力、国民的支援、サポーターの大応援、Jリーグ等々と、恵まれたインフラを有しながら、日本の実力はアジアの6強にとどまり、2006年から何も変わっていない。2010年予選は籤運に恵まれ、グループ2位で予選通過し得た。ところが、世界との差は広がるばかり。縮まる気配がない。
岡田代表監督は、思い切った選手起用もしないし、作戦においても冒険をしない。相手国(たとえばオーストラリア)は、日本を攻略する手口を学習済みで、先制されても慌てる様子がない。グローバルな経験をもつ監督(たとえば、カタールのメツ監督クラス)ならば、日本戦は苦ではないはずだ。
日本が先に進むためには、もう一段レベルを上げなければならない。選手のレベルを上げるためには、指導者のレベルを上げることしかない。予選突破を花道にして、岡田監督自らが決断してほしい。
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