Sports Enthusiast_1

2009年06月11日(木) 2009年 暗い旅(encore)

サッカーW杯アジア地区予選、日本対カタール戦は、日本が先のウズベキスタン戦に勝って予選突破を決めてしまったため、完全な消化試合となった。ホームとはいえ、この試合に勝っても負けても、日本代表の評価には関わりない。

しかし相手カタールにとってはプレーオフ(PO)狙いの目がまだ残っている。相手が勝ち点3を狙ってくるわけだから、こういう試合は貴重である。常識では、キリン杯を含めたテストマッチ(親善試合、強化試合)を試行の場であると位置づけるのだが、日本代表の意図とは裏腹に、先のチリ、ベルギーの2戦で明確になったとおり、相手が真剣にならないかぎり、刺激の強い試行にはなりにくい。

カタール戦のコンセプトこそ、試行以外のなにものでもない。筆者の関心は、日本代表首脳陣がこの試合をいかに有効に使うか――の一点に絞られた。W杯出場決定凱旋試合として観戦にきた代表サポーターの期待はもちろん、日本の大勝だろう。それにこたえる義務があるのかないのか――

筆者にとってこの試合は、繰り返すが、W杯本戦勝利に目標が切り替わったスタートの試合、すなわち、強化のための第一歩である。日本代表がこの消化試合を有意義に使ったうえでの敗戦ならば、代表サポーターとて、有意義な敗戦を受入れてくれるだろう。というのが筆者の期待であり、この試合に見出した価値である。それが受入れられないような、日本のサッカー風土ならば、それはそれでしかたがない。

試合の入り方を見た瞬間、ウズベスタン戦の影響による日本代表の疲労は明らかだった。疲労というよりも、消耗といったほうがいい。その後の経過と日本代表の不調ぶりについては、ここでは割愛する。

日本代表首脳陣は、この試合を無駄にした。内容においても結果においても、そういえる。筆者が代表監督ならば、前出のとおり、この試合を壮大な試行の場と規定した。もちろん、いかなる試合においても、勝利に向かって努力をすることはプロにとって当たり前である。敗戦を予定した試行は試行とはいえない。そのような愚行がプロに許されるはずもない。

しかし、結果を問わないことにより、大きな財産を手に入れられるものならば、それを試みることもプロの仕事である。筆者が代表監督ならば、そのようなメッセージを先発メンバーの選択において、発信したであろう。

さて、筆者がこの試合によって感じた危機が、それ以外にもあった。それは、代表における、サイドバック(SB)の選手層の薄さである。この日の登録選手のうち、左右を問わずにSBができる選手は、橋本、内田、駒野、今野、阿部であった。そのうち、阿部と橋本がボランチに駆り出されたので、内田、駒野、今野の3人の選択となってしまった。右SBのレギュラーが内田で控えが駒野、左SBのレギュラーが長友で控えが今野でいいのだろうか。筆者は今野をいい選手だと思うものの、SBの選手だとは思っていない。日本代表にSBが不足していることは明白なのである。

たまたま、カタール戦前にケガ人が多数出て人材不足に陥ったというわけではない。この試合の登録選手18人を見ると、中村俊、中村憲、松井、本田、阿部、橋本、今野と、中盤の同タイプの選手のだぶつきが目立つ。さらに、登録を外れた遠藤、長谷部を加えた中盤のボリュームは相当なもの。このボリュームに比べて、本職のSBはというと、駒野、内田の2人だけと手薄を通り越している。しかも、レフティーのSBが不在である。

橋本、阿部がSBもできるから、本職は不要という抗弁では納得できない。というのも、代表における左SBの不在は、実は、ジーコジャパン以来のもので、代表首脳陣は、なんと、7年間も手を打ってこなかったのである。いまさら手遅れすぎて、Jリーグに人材を求めよ、と、いっても実効は上がるまい。

「W杯ベスト4」を夢想するよりも、足元の左SBを早いところ育てないと・・・


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tram