2009年06月07日(日) |
日本代表は適正な目標を掲げよ |
サッカーW杯、日本が南アフリカ行きのチケットを手に入れた。「岡田ジャパン」に対しまずは、おめでとうと申し上げたい。アウエーという条件下、とにかく、勝利という結果を手に入れたのだから、選手の頑張りを評価したい。
だが、日本代表が「これで良い」、という結果を手に入れたとはとても思えない。試合は日本の1−0だが、試合を支配し、かつ、「一対一」に勝っていたのはウズベキスタンであった。使い古された表現だが、日本は、試合には勝ったが、サッカーでは負けていた。
日本の勝因は、▽ウズベキスタンの決定力不足、▽ウズベキスタンのエース・シャツキフの不在、▽日本守備陣の健闘、▽日本選手の豊富な経験――だった。総体的に言って、ウズベキスタン代表選手は日本代表選手に比べて、パワー、走力、闘志で勝っていた。2010年予選時点において、ウズベキスタンのほうが潜在力で日本より上であり、2010年予選時点で日本がウズベキスタンに勝ったストロングポイントである「経験」という財産は、2014年大会予選においては、ストロングポイントであり続けることはない。
前回の当コラムで予言的に書いたとおり、キリン杯2試合の「圧勝」は何ら踏み台になっていなかった。闘う集団でない「代表」とホームで何百試合を消化しようとも、「強化」には至らない。
キリン杯2試合の「圧勝」の主因として、スポーツジャーナリズムが賞賛した「中村憲トップ下」の布陣、いわゆる「憲剛システム」が機能したのかといえば、これも「ノー」であった。決勝点となった前半の岡崎のゴールを演出したのは中村憲であったが、そのシーン以外はまったく機能しなかった。試合を制御できていないシステムであることが明確であったがゆえに、岡田監督は中村憲を本田と代えたのだ。
主審の笛の不公正さが話題になっているようだが、試合終了直前、長谷部の退場、岡田監督の退席という、TV観戦では判断がつかない場面は除き、選手同士の接触における主審の笛は、概ね間違っていない。日本代表選手が倒れるのは、ファウルをもらおうとして倒れるからだ。試合を通じて相手と競り合っていれば、日本も、もっとファウルがもらえたはずだ。
日本は引いた相手を崩せない、と言われてきた。ところが、プレスのきつい相手にも弱いことが露呈した。ウズベキスタンがW杯プレーオフ進出の望みをかけて、死に物狂いできたから日本が苦戦したのではない。サッカーの公式戦というのは、こういう展開になるのがあたりまえなのだ。日本ホームで、相手が引いて、日本がボールを支配する国際試合ばかりを見せられている日本のサッカーファンには、この試合は異様に見えたかもしれないが、こういう試合内容が代表公式戦の一般的展開だと考えたほうがいい。W杯本戦になれば、もっと決定力があり、日本から勝ち点3を奪おうと(勝ちにくる)格上の相手と戦うことになる。日本の代表選手が、個々の局面において、ウズベキスタン戦のように相手選手のパワーに転がされているようであれば、日本は大敗を屈することになる。
ウズベキスタン戦を指標にした日本代表の実力に鑑みれば、日本の目標は断じて「ベスト4」ではない。アジア代表として、自国開催(2002年)以外のW杯において、グループリーグ初勝利(勝ち点3)をあげること、そして、さらにグループリーグを突破(ベスト16)することだ。
ウズベキスタン(FIFAランキング・78位)に辛勝した日本(同31位)が「W杯ベスト4」を目標として掲げること自体、常軌を逸している。代表の中心選手の中に、「ベスト4」を公言する者がいるが、目の前の階段を、一歩一歩、確実に上がることを心がけてほしい。
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