2009年02月11日(水) |
2009年 暗い旅(第3章) |
オーストラリアは余裕のドロー。日本はホームで負けなくてよかった。ここで負ければ、岡田監督の進退問題に発展することも考えられたし、W杯予選敗退の心配をする必要もあった。しかし、最悪の状況を回避できたというだけだ。この引分は、日本代表が抱える問題の解決を猶予しただけにすぎない。病気発見後、手術をためらったため、病状を悪化させたケースというのはよくあることだ。前の当コラムで書いたとおり、この試合のドローによって、日本は予選A組において、不動の2位を確保したという「成果」を得たものの、オーストラリアというリトマス試験紙を使って得られたのは、“日本と世界の距離はより遠くなった”という反応だった。
日本ホームのきょうのオーストラリア戦、相手はリスクをおかさない作戦であることは明確だった。深いバックライン、固いブロックで日本の攻撃を跳ね返す作戦だ。日本がとった作戦は、後方の選手が前線の選手を追い越して裏を取る作戦と、サイド攻撃だった。悪くない作戦だし、間違ってもいない。相手を崩すシーンもあった。
問題はここから、ゴールに結びつける動きだ。得点に近づいたシーンも3度くらいあった。前半開始直後の玉田、後半の遠藤のミドルシュート、長谷部のヘディング失敗・・・しかし、そこまで。繰り返すが、相手のオーストラリアはリスクを犯さない作戦。日本がボールを支配し、ボールをまわす余裕があった。プレスもそれほどではない。明らかにアウエーの戦い方だ。そんな相手を慌てさせるシーンが3度くらいでは、勝ち点3は得られないのが、日本の攻撃の精度なのだろう。
断言できるのは、日本はW杯ドイツ大会から進歩していない、ということ。いまの攻撃レベルでは、世界レベルの守備を崩せない。対処方法は、さらなるスピードアップと運動量だ。後半、オーストラリアの守備のスピードが落ちた、そういうときに、相手を上回るスピードで攻撃を続ければ得点シーンは増える。その積み重ねしかない。いまの日本サッカー界には、世界的ストライカーは不在のままであり、W杯南アフリカ大会開催までに出現する予兆はない。別言すれば、いまの材料をつかって、いい作品をつくるしかない。
いまの日本選手で構成された代表の監督は、「W杯ベスト4」などという、現実と乖離した目標を掲げてはいけない。ホームでオーストラリアに確実に勝てるチームをつくる、という目標でよい。高速で組織化され、運動量をもった作品で世界と勝負することだ。
2009年、日本代表の旅立ちを、筆者は「暗い旅」と喩えた。ホームのオーストラリア戦で勝ち点3を上げられなかった事実は、日本サッカーの退歩、弱体化を大衆レベルで明らかにした。日本のサッカー業界には、W杯アジア予選2位通過で満足する者もいるだろうし、世界レベルのサッカーを目指す方策を考える者もいる。きょうの勝ち点1は、後者には、重い結果だと思うがどうだろうか。
|