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2009年02月09日(月) 「暗い旅」は終わるのか

天下分け目の決戦――11日に日本ホームで行われるW杯アジア最終予選オーストラリア戦は、日本サッカーの命運を決める日となる。

日本がこの試合を落としたとしても、W杯にいけなくなるわけではない。残り試合を順当に勝ち進めば、おそらく、グループ2位で南アフリカ行きの切符が手に入る。2010年まで、日本のサッカー人気は衰えることはない。

問題はそのようなことではない。日本代表の進歩・退歩、もしくは、その実力を測る絶好の機会という観点なのだ。ご承知の通り、2006年ドイツ大会グループ予選の初戦、日本はカイザースラウテルンでオーストラリアに(1−3)負けた。同大会、オーストラリアはベスト16に進出し、決勝トーナメントでイタリアに0−1で惜敗した。

ドイツ大会予選無勝利(勝ち点1)の後を受けたオシム・ジャパンは、アジア杯決勝リーグ(ハノイ)でオーストラリアに辛勝(PK戦決着)し、カイザースラウテルンの借りを返した。近年、日本がオーストラリアと公式戦で対戦するのは今回が3戦目、しかもホームであるから、負けるわけにはいかない。

オーストラリアのサッカーは短期間で急成長した。実態として、来日するオーストラリア代表は、英国プレミア、スコットランドプレミア、トルコ等の欧州リーグで活躍する選手(国内リーグは1名のみ)で占められている。日本はドイツブンデスリーガ3名(長谷部・大久保・稲本)、スコットランド1名(中村俊)、フランスリーグ1名(松井)であり、しかも、日本代表の場合、レギュラーで中心選手となっているのは中村俊のみにとどまる。

そればかりではない。相手はリーグ戦終盤に臨んでいる選手たちばかり。コンディションが一番上がっている時期にあたる。その反対に日本はオフシーズンで、公式戦2試合、練習(親善)試合1試合の計3試合を消化したにすぎない。客観的条件としては、日本が絶対不利にある。

予選リーグA組の動向という観点では、日本の勝ち点は現在のところ7(2位)。日本の予定は、オーストラリア戦後、アウエーのウズベキスタン(アウエー)と戦い、ここで敗戦もしくは引分けとなると、勝ち点7〜8でバーレーン(ホーム)、カタール(ホーム)の2試合に臨むことになる。ホームの2試合で勝ち点4(1勝1分け)に終わると、最終戦(オーストラリア・アウエー)に勝利しないと最終勝ち点11程度にとどまることになる。グループAでは、現在3位(勝ち点4)のカタールが順調に勝ち点を積み上げたと仮定しても、2位争いは混沌とする程度にとどまる。すなわち、現実問題としては、オーストラリアが日本に勝った場合は、オーストラリア独走によるリーグ突破で幕を閉じ、日本はカタールと低レベルの2位争いを演じた末、結果として南アフリカ行きを決めることになる可能性のほうが高い。

このことは何を意味するのかといえば、日本は、このたびの最終予選におけるグループリーグ抽選において幸運に恵まれ、アジア予選をめでたく突破したということだ。かりに、Bグループに振り分けられたイラン、韓国、サウジアラビアのW杯出場経験国の1国が日本と同組になったとすると、日本は予選リーグ敗退の危機に見舞われた可能性のほうが高い。

日本がオーストラリアに勝つか負けるかは、予選リーグを突破するか否かという問題を離れている。オーストラリアにホームで負ければ、日本のレベルは世界レベルから遠いことの証明となる。よしんば、アジア地区最終予選を突破できたとて、抽選の妙で低レベルの2位争いを抜け出しに過ぎない。そうなれば、現代表監督(岡田)が掲げた「W杯3位以内」というスローガンは、お話にならない夢物語であって、彼の超現実主義的大風呂敷であることの証明となる。

オーストラリア戦に負けて岡田の超現実主義が証明されてもいまさら、仕方がない。敗北の総括は、ジーコ→オシム→岡田へとバトンタッチされた代表監督選考の責任問題へと発展すべきなのだ。

以前にも書いたとおり、筆者のささやかな夢は、筆者存命中に日本代表がホーム以外のW杯で勝利を上げること(決勝トーナメント進出=ベスト16入り)だ。それは、2002年、トルシエ・ジャパンが、雨中の仙台で行われた決勝T――対トルコ戦になすすべもなく完封された試合の虚しさを埋めるものとなる。あの虚しさを抱いたまま、彼岸へと旅たちたくはない。

あのとき、世界(トルコ)との壁(隔たり)は無限にも等しく感じられた。しかるに、W杯そのものの開催に酔う日本のマスコミ、サッカーファン等は、日本の善戦という総括にとどまった。また、協会は、「組織よりも個人」という謬見に規定され、ジーコ代表監督就任へと雪崩れ込んでしまった。2002年以降今日までの間の日本サッカーの退歩ぶりについては、当コラムでしつこいほど繰り返した。

さて、そのオーストラリア戦――サッカーなのだから、勝つこともあれば負けることもある。ホームだから必ず勝てると決まったわけでもない。筆者を含めた、すべてのサッカーファンがさまざまな思いを抱きながら、オーストラリア戦を心待ちにしている。サッカーとはそういうものだ。その思いがかなえられるかどうかは、神のみぞ知る。オーストラリア、日本の両代表選手たちの気力の入った試合が見たい。そうなれば、噛み合った好試合となるはずだ。


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