2009年01月29日(木) |
2009年 暗い旅 (第2章) |
アジア杯予選イエメン戦(ホーム)を2−1で辛勝した日本代表だが、続くアウエーのバーレーン戦は1−0の敗戦。中継がなかったので試合内容はつかめない。報道では、FKを頭であわされた失点というから、前の試合と似た形のようだ。
Jリーグ開始前の公式戦は、代表選手にとって厳しい。同情すべき点は多い。日本代表がアジアで全勝を続けられわけもない。関係者、サポーターは、いくつかの敗戦を受け入れなければならない。ブラジル代表でも、南米予選で格下に負けることはある。重要なのは、敗戦が意味するものを分析し、負けの常態化を回避することだ。
アジアのサッカーは、地勢的要素に規定されて、いくつかにグルーピングできる。1つは、日本、韓国、北朝鮮、中国が属する東アジア。2つ目は、台頭著しいタイ、ベトナムを中心とする東南アジア、3つ目は、サウジアラビア、イラン、イラクと強豪がそろう中東、4つ目はインド、ネパール等の南西アジア、5つ目がウズベキスタン等の中央アジア、そして、最後の6番目が、オセアニアから移動してきたオーストラリアである。6分類されるが、オーストラリアのように1カ国のところもあるし、中東のように多くの国が集まるグループもある。
実力Aランク国は、オーストラリア、日本、韓国、イラン、イラク、サウジアラビアの6カ国。その下のBクラスに、ウズベキスタン、中国、バーレーン、UAE、シリア、オマーン、クウェート等が続く。Cクラスに、香港、タイ、ベトナム、シンガポール、マレーシア、インドネシア、イエメン等、Dクラスに、インド、ネパール、スリランカ、カンボジア、タジクスタン・・・と、大雑把に括れる。
日本が負ける可能性が少ないのがC、Dクラスで、このたび日本が負けたバーレーンはBクラスの実力を持っているから、敗戦を受入れる必要がある。もちろん、このクラスに負け越していては、「W杯ベスト3」は夢のまた夢であるし、日本はアジアの強国ではなくなる。
そこで、対バーレーン戦の戦績が重要となる。FIFAランキングは、日本が34位、バーレーンが89位。このたびの日本の敗戦で、対戦成績は日本の6勝2敗と大きくリードをしているものの、岡田監督就任後は2勝2敗で五分となった。つまり、岡田監督就任前は日本が4戦4勝と圧倒していたのだが、岡田監督になって4回試合をして日本はアウエーで2敗を屈したことになる。このことは、日本代表に異変が起こったと考えられるし、バーレーンの実力が上昇したとも考えられるし、その両方が起きた可能性もある。もっとも、ジーコジャパンの時代、負けなかったものの辛勝であったから、来るべきときが来た、という見方もあろう。
世界のサッカー界、とりわけ発展途上地域であるアジアは、全体にレベルアップをしており、日本が進歩しなければキャッチ・アップされる。岡田監督就任後、アジアBクラスのバーレーンという特定の相手にこの戦績だから、日本代表の実力の向上の速度は、アジア全体の底上げの速度から比べれば鈍いという結論が得られる。
とはいえ、この戦績をもって日本がW杯アジア最終予選を突破できない、と断言できるわけではない。重要なのは2月のオーストラリア戦(日本ホーム)で、この勝負に勝てば、2010年W杯南アフリカ大会まで、日本はアジアBクラスの国にキャッチ・アップされなかったことの傍証となる(もちろん、サッカーに「絶対」はないので、日本がオーストラリアに勝ったからといって、南アフリカ大会に日本が絶対に行けると断言できない。最終予選が終わるまでは、何もわからない)。
そんなわけで、この敗戦を深刻に受け止めない態度と、日本代表の実力低下として深刻に受け止める態度の両方がある。筆者は、岡田ジャパン(日本代表)の実力向上の速度は鈍いと思うものの、2010年W杯アジア最終予選までは、アジアのAクラスから転がり落ちるほどではないと思っている。つまり、2010年に南アフリカに行くのは、日本とオーストラリア、そして、韓国とサウジアラビアの4カ国となると予想する。
しかし、2010年以降も現状が維持されるとはとても思えない。日本は、アジアの強国の座から転がり落ちる可能性の最も高い国の1つである。中東勢のうち湾岸諸国は、アフリカとの強い結びつきにより選手を輸入し続けるだろうから、代表のレベルは今後も向上する。その一方、日本は、若年層から才能のある人間を鍛え上げなければならないわけで、代表強化に時間がかかる。
いずれにしても、日本の代表強化の基盤は、Jリーグにある。Jリーグのレベルアップが代表強化の鍵を握る。そして、代表の方向性を高次元で定めることのできる代表監督の人選が重要である。2002年日韓大会開催で築いた日本サッカーの遺産は、2010年以降までは残らない。
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